地 域 通 貨 研 究 会

地域通貨とは何でしょうか?

そのご質問にお答えす前に、一つこちらからお尋ねしたいことがあります。

それは、「皆さんは、お金とは何かをご存知ですか?」という質問です。

これに答えることができれば、「地域通貨」とは何かがわかると思います。

「お金」と一口に言っても、「お金」とは何か、という質問にすぐに答えることができる人は少ないでしょう。それは、海の中を自由に泳いでいる魚に、「海とは何か」と尋ねるようなものです。

具体的に考えてみましょう。今、机の上にポケットやお財布の中に入っている現金を置いてみてください。

千円札、百円玉、五十円玉、十円玉、五円玉、一円玉があるとしましょう。

千円札には千円の価値がある。千円札を持っていれば、千円の価格の商品を買うことができます。

千円札はみつまたとマニラ麻その他の素材でできています。製造原価は約15円と言われています。

一万円札は約22円(製造原価率0.22%、以下同じ)

五千円札は約21円(0.42%)

千円札は先ほども書いたように約15円(1.5%)

五百円玉は約30円(6%、ニッケル黄銅)

百円玉は約25円(25%、白銅)

五十円玉は約20円(40%、白銅)

十円玉は約10円(100%、銅)

五円玉は約7円(140%、銅と亜鉛の合金、原価割れ)

一円玉は2〜3円(250%、素材はアルミで大きく原価割れ)

そして、紙幣と硬貨では発行者が違います。

紙幣の金額が書いてある上に「日本銀行券」と印刷されています。つまり、紙幣はすべて日本銀行が発行しているのです。それにひきかえ硬貨には「日本国」と打刻してあります。つまり硬貨は日本政府が発行しているという違いがあります。日本で流通している「お金」は、二つの発行者がいるということにまず注目してください。

日本で流通しているお金はどれくらいあるのでしょうか?日銀の調査統計局というところで公表されているマネーストック速報によれば、2017年10月現在で、現金通貨が96.5兆円、預金通貨が624.9兆円、合わせて721.5兆円です。これをマネーストックと言います。

日銀の当座預金残高は369兆円です。現金通貨と日銀の当座預金残高を合わせてマネタリーベースといい、96.5兆円と370.3兆円で465.5兆円となります。整理しておきましょう。

日銀調査統計局の資料によれば、2017年10月現在のマネタリーベースは以下のようになります。

日本政府発行硬貨=4.75兆円——①

日本銀行発行紙幣=101.5兆円——②

日銀当座預金=370.3兆円——③

合計:476.6兆円

そしてマネーストック721.5兆円のうち預金通貨と言われているものは

預金通貨=624.9兆円——④ です。

さて、これでほとんど、お金と言われているものの役者4人が出揃いました。

私たちが普段目にするお金といえば、普通は①の硬貨と、②の紙幣、それから銀行や郵便局に貯金している人は③の預金通帳の数字で表されているお金④でしょう。③の日銀当座預金というのは、私たちは手に触れることも、目で見ることもありません。

それでは、①と②、③のいわゆるマネーストックと言われているものの構成比率を見てみましょう。

① 硬貨=4.75兆円——0.6%

② 紙幣=101.5兆円——13.9%

④ 預金通貨=624.9兆円——85.5%

合計=731.15兆円——100%

つまり、私たちが現金と言っているもの(①と②)は、世の中のお金の14.5%に過ぎないのです。85.5%を占める④の預金通貨と呼ばれているものがほとんどなのです。

さて、これは銀行に支払い請求をすれば、現金になるとはいえ、そもそも数字にすぎません。この数字としてのお金はどうやって生まれるのでしょうか。

なぜそんなことを言うかといえば、現金を貯金しただけでは、106兆円の預金しかないことになるのに、現実には約625兆円もの預金があるのですから、不思議ではありませんか?現金106兆円を世の中の人が全て銀行に貯金してしまっては、現実の生活が成り立ちませんから、預金625兆円のうちに占める現金の割合はもっと減ってもおかしくないのに、実際はその6倍もの預金があるのです。

実は、ここに民間銀行の仕事があるのです。どんな仕事かといえば、それは人にお金を融資すると言う仕事です。人にお金を貸すためには、貸したお金を現金で請求された場合に備えて、銀行はお金を準備しておかなくてはなりません。その準備金が③の日銀当座預金といわれるものなのです。銀行は自分の銀行の預金残高に応じて、一定の割合で準備金を持つことと定められています。それを法廷準備率と言うのですが、預金の種類によってその比率は変わりますが、0.05%〜1.3%です。仮に1%ととしても、1億円を日銀の当座預金に預けてあれば銀行はその100倍のお金を融資をすることができるので、100億円を人に融資することができることになります。つまり100億円から準備金1億円を差し引いた残りの99億円は、無から生み出されることになります。これを銀行の「信用創造」と言います。

つまり、世の中のお金の85.5%は融資という経済行動によって、無から生み出された「信用創造」のお金なのです。もちろん、借金をしている人すべてが借金を返済すれば、この「信用創造」されたお金は消えてしまいます。無から生み出されたのですから、無に帰するのは当然といえば当然ですね。それを「信用収縮」と言います。バブル崩壊の時に金融機関が不良債権と悪戦苦闘したときに行われた「貸し剝がし」と言われた現象です。

そして、ここからが肝心なことなのですが、融資には担保と利息がつきます。担保は金融機関のリスク保証ですが、返済されなければ担保はもちろん金融機関の手に移ります。まぁ、人質みたいなものでしょうか。

そして、利息、これが実はとても恐ろしいものなのです。例えば、年率5%の利率とすれば、1年後には元本の1.05%、2年後には1.05%の1.05%というように複利で計算されます。ですから、返済額は指数級数的に増加していきます。その簡単な計算方法は以下の通りです。

69=経験的な係数

利率を5%とすると

69÷5=13.8≒14年で倍になります。

1億円を5%で借りると14年後には返済額は2億円になるのです。もちろん、返済をしていきますから、単純に倍になることはありませんが、それでも1.6倍にはなるでしょう。

金融資本はこの方法で、人々を支配していきます。これは、一国内の中だけの話ではなく、先進国と発展途上国との間でも見られることです。先進国は融資・借款という方法で発展途上国を支配していくのです(『エコノミック・ヒットマン』ジョン・パーキンス、東洋経済新報社、2007年参照)

このようにして、世界の取引の80%を金融資本が握っているのです。これはスイスのチューリッヒ工科大学の研究者が明らかにしたことなのです。

さて、こうした貨幣の現状についての理解が深まったところで、本題である「地域通貨」とは何か、という質問に答えることができることになります。

これまで述べてきた貨幣の仕組みを「債務貨幣制度」と呼ぶことにすると、「地域通貨」というのは、こうした現行の「債務貨幣制度」に対する新たな答えを探求する活動だということが言えます。

第一に言えることは、日本銀行による通貨発行権と、預金準備率という制度が債務貨幣制度の核心であるということが言えるのです。そして、この制度こそが、競争、略奪、富の蓄積、人権無視、自然破壊、貧困の拡大維持、戦争という、現在世界が直面している多くの問題を生み出す元凶となっており、世界を救う根本的解決は貨幣制度の改革しかないのです。

通貨発行権を国民に取り戻し、利息もインフレも招来しない貨幣制度を作り出さなくてはなりません。「地域通貨」という活動は、自分たちで利息のない通貨を発行し、開かれた安心した社会を築くためのトレーニングのようなものです。

この根本さえ押さえておけば、地域通貨は様々なスタイルがあるので、現実に沿った通貨を発行し、楽しく心の筋力を鍛えて、来るべき貨幣制度に備えていくことが大切なことです。

この図書館には、現実の問題点を探求し、あるべき貨幣制度を創造していく上で参考になる図書を集めました。学習の参考にしてください。


● 『公共貨幣』山口 薫

● 『自治体財政の経済分析』衣笠 達夫

● 地域内イベントにおける共助行動を促進する地域通貨-能美の SACHI あんやと券を事例として-小林 重人(北陸先端科学技術大学院大学)

●  土地・労働・資本(JAK)銀行