美浦村の債務完済は可能か?

美浦村の債務返済は可能なのだろうか?

何のことを言っているのだ、と思われる方がいらっしゃるかもしれない。

反対に、昔の美浦村は、交付金ももらわずに運営できたお金持ちの村だったけど、今はどうも貧乏村らしい、というふうに事態を把握していらっしゃる方もおいでだろう。

実際のところ、どうなのだろうか?

平成27年度決算報告(広報みほ「むらの家計簿」平成28年11月号)によれば、平成28年3月31日現在、美浦村が抱えている債務は、一般会計で68.3億円、特別会計で50.3億円、企業会計で17.6億円、合わせて136.2億円、おおよそ136億円の累積債務を抱えている。

美浦村運営当局の考え

この問題を、村としては、どう捉えているのだろうか?

そこで、資料として『平成29年度 当初予算(案) 説明書』の内容から、村が財政についてどのような見方をしているのかを見てみよう。

まず、日本政府の景気判断に触れて、日本政府は景気は回復していると言っているが、世界情勢には不安定リスクがあり、村の重要な財政指標の一つである「経常収支比率」も88.5%と高止まりしており、「楽観はできない状況である」との認識を示している。また、将来の財政負担についても「地域交流館建設事業による村債残高の増加、財源不足による基金等の取り崩しも経常化しており、数値の悪化は避けられない状況である」と悲観的である。

そして、財政運営の自由度についても、「この2つの収入(普通交付税と臨時財政対策債のこと)の依存度が高くなり、国の地方財政措置の影響を受けやすく、 自立性の低下が進み、不安定な財政構造となっている」と、厳しい評価を下している。そして、歳出についても、「財政状況は一段と厳しいものとな ることが推測される」と、要するに、全体的に極めて厳しい状況であることを訴えている。

最後に、村の財政運営について、次のようにまとめている。

「最後に、景気は緩やかな回復基調が続いているといわれておりますが、その恩恵は一部のもので、本村では評価替え等による固定資産税の減少、労働人口流出等により個人村民税も毎年減少しており税収は減少傾向にあります。また、 昨年行われた国勢調査においても平成 22 年比で 8.4%減の 15,851 人と大きく人口が減少しており、税収の回復は非常に厳しい状況にある。この税収減等の影響により、近年は慢性的な財源不足となっており基金からの繰入も毎年行っている。このような基金からの繰入が続くと数年後には基金が枯渇し、財政破綻へと向かう危機的な状況となってしまう。」

そして、財政運営の方針として、「歳入の確保、 歳出の縮減を図るとともに、将来の財政状況を見極め、これまで以上に慎重な財政運営を心掛け、財政調整基金の確保等の目標値の達成に努めていく」と締めくくっている。

これはもちろん、平成29年度の予算案についての説明書であり、累積債務の問題には直接触れてはいない。しかし、136億円の累積債務の問題に関して、気になる文言がいくつかある。それをいくつか拾ってみると、

「将来負担比率は、公共下水道事業特別会計への繰出金の減少及び退職手当の支給率の変更等により退職手当負担見込額が減少したこと等により、前年度比 13.9 ポイント減の 41.5%と大幅に改善されております。実質公債費比率においても前年度比 1.2 ポイント減の 4.5%と改善は見られております 」

将来負担比率は大幅に改善している?

実質公債費比率も改善している?

将来負担比率」とは、ざっくり言って、標準財政規模に対する全債務の割合ということですが、現在136億円ある債務の割合が標準財政規模の41.5%ということは、標準財政規模が327億円超ということになってしまいますから、これはそういうことではないはずです。

分母が100に対して、分子が41.5ということは、分子に含まれる136億円から相当な額が差し引かれていることになります。分子から、村が貯めている基金や特定の歳入見込額が差し引かれることは納得できますが、ただ差し引かれる額はそんなものではありません。

実は分子を小さくする秘密は、「地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額」というところにあります。これはどうやって計算するのか?それは総務大臣が最終的に定める、ということになっています。わたしは専門ではないので、正確にはわかりませんが、この地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額」は、おそらく金額的に言って110億円から120億円(連結ベース)は下らない額になるはずです。つまり、これは今まで国が本来ならば、現金で村に交付しなければならない普通交付税の不足分ではないかと思います。「国には、いま、お金がないから、後で返すので、村が代わりに借金しておいてくれない?」といって借金させられた分を、分子から差し引いているので、分子が極端に小さくなっているのです。

これは、現実から目をそらさせるためのトリックです。借金の名義人はあくまで「美浦村」です。いわゆる「暗黙の政府保証」があると言ったところで、実際には美浦村の名義で借金しているのです。金を貸すほうににとってみれば、債務者の名義は非常に重要です。債務には、担保がつきます。美浦村が担保しているのです。その担保が、何か、わたしにはわかりません。しかし、償還期間が到来すれば、確実に返済しなければなりません。返済しなければ、担保を取られます。それが、債務貨幣システムの現実なのですから。

わかりやすい担保は、美浦村の「将来の税収」です。ですから「将来負担比率は、・・・大幅に改善されております」という判断は額面通り受け取るわけにはいかないのです。

それでは、それに対して、村はどのような財政運営を行おうとしているのかを見てみましょう。

もう一度、『平成29年度 当初予算(案) 説明書』に戻って、このことを検討してみましょう。

村の運営当局は「歳入の確保、 歳出の縮減を図るとともに、将来の財政状況を見極め、これまで以上に慎重な 財政運営を心掛け、財政調整基金の確保等の目標値の達成に努めていく」と記しています。箇条書きにすると、以下のようになります。

1 歳入を確保する

2 歳出の縮減を図る

3 将来の財政状況を見極める

4 慎重な財政運営を心掛ける

5 財政調整基金確保に努める

いずれも至極まっとうな財政運営方針であると思います。

1の歳入の確保の具体策として、

① 歳入見込額の適正な見積もり

② 課税客体の把握及び収納率の向上

③ 住民負担の適正化

などが挙げられています。その一方では、当該文書の27ページには、美浦村の財政状況の図表が掲載されていますが、村税、固定資産税の税収の推移のグラフを見ると、過去の平成21年から平成29年の税収(見込み)をみると、財政状況(税収)は村税で29億円から23億円に、固定資産税は15億円から12億円へと合わせて44億円から35億円へ実に9億円の減収になっています。ですから、これからは税収は黙っていては落ち込んでいく一方なので、対策として、緊縮財政策、手数料の値上げをしていくことを考慮せざるを得ないというふうに考えていることになります。

厳しい言い方かもしれませんが、これは「税収を確保する」対策とは言えないものだと思います。税収の減少に対して、あたかも債権者のごとき態度で、金が足りないから、住民も負担せよ、と要求する前に、国に地方交付税法第6条の三第2項に基づいて普通交付税総額を「第六条第一項に定める率の変更」によって増額要求することを最初になすべきです。普通交付税総額を増やさずに、特例的に安易に臨時財政対策債の振替を続けることは、地方交付税法の根幹を揺るがすことになります。同じことは、特例国債の発行にも言えることです。

まず第一に、運営当局の給与・報酬等のバランスを考える。そして、そのあとであれば、住民も負担増を覚悟することができます。なすべきことをしないで、負担増を住民に割り当てるだけでは、住民は逃げ出します。実際に、村から出ていかないとしても、気持ちは村から離れてしまいます。そうなったら、本当の地方自治は崩壊してしまうことになります。村の運営を指導する立場の人たちには、それだけの覚悟が必要であり、また責任があるのではないでしょうか。

次に、2番目の「歳出の縮減を図る」ということについて考えてみましょう。

村の財政再建案によれば、人件費は、現行給料表は変えず、時間外勤務を減らす、非常勤職員を減らす、特別職報酬の額は変更せず、招集回数等を減らす。物件費を減らす。需要費を減らす。普通建設事業費を減らす。

もし、本当にこんなに減らせるのならば、それでは、今まで、そんなに無駄があったのか、なぜもっと早くそれをしなかったのか、ということになりませんか?

もちろん、無駄は無くさなくてはなりませんが、「歳出の縮減」というのは、今までは百円払って百円のものを得ていたが、金がないからこれからは支払いを80円にして80円のものを得る、というのではなんにもなりません。本当に縮減を図ろうと思うのであれば、支払いを80円にして、100円のものを得る、あるいは今まで通り百円の支払いで120円の効果を得たというのでなくては、縮減したとは言えず、ただ支払いを減らしたとしか言えないのです。ですから、縮減効果を図るというのであれば、歳出は減らしても、効果は今まで以上でなければ意味がありません。そのための方策については、ほとんど言及されていないのは残念です。

具体的に考えてみましょう。

歳出を減らすということは、お金を使わないということです。そして、縮減するということは、お金を使わずに、お金を使ったと同じ効果を生み出すことができればいいのですから、今までお金を払っていたのに、効果が得られなかった部分から効果を引き出すことができれば、お金を使わずに、効果を得たことと同じになります。つまり、遊びを見つけ出すことが歳出の縮減だということになります。例えば、第一に考慮されるべきは、資本財です。資本財にとって最大のコストは遊休時間です。何もしないで遊んでいる時間にも、確実に毎秒毎秒、金利を払っているのです。

 例えば、3億円の借財をして獲得した資本財があるとします。償還期間は20年、金利5%としましょう。すると14年で元利償還金総額は3億円の2倍の6億円になってしまいます。(69÷5=13.8年)。毎年幾らかずつ返済して行くので、この計算はそのまま成り立ちませんが、それでも、20年間では元金の1.6倍にはなるでしょう。すると、この資本財のコストは、4億8千万円を20年×365日/年=7300日で割るので、1日当たり6万6千円(このうち2万5千円は金利)、さらに維持管理費を足せば、1日当たり、少なくとも10万円を超えるでしょう。

この資本財に対して、歳出(この事例の場合は10万円/日×365日=3千6百50万円)を縮減するとはどういうことなのか?それは、ひとえに資本財の有効利用、遊休時間の削減ということにならざるを得ないのです。遊んでいる資本財は徹底的に有効利用する、それができない資本財は廃棄、処分するということが「歳出の縮減」の意味なのです。

あらゆる部門にわたって、資本財の遊休時間を見つけること、そしてその有効利用を図ること、これが第一の眼目です。しかし、実は、この問題を解決することは容易ではありません。何故ならば、今まで通りの発想では、この問題を解決することは困難なことが多いからです。

一つの例をあげましょう。それは海運業界で起こった実際の事例です。海運業にとっての最大の資本財は船舶です。港に船が停泊しているという状態は、海運業にとってあってはならなことなのですが、しかし、船に荷物を積み込む、燃料・資材を補給する等々、船が港に停泊することはやむを得ない部分もあるわけです。それでも、この船舶の停泊時間は、資本財の遊休時間であることには違いないわけですから、この問題を海運業界は解決しなければなりませんでした。その解決策は、「コンテナ」の発明でした。船が港に到着するまでに、船への荷物の積み込みのほとんどを終えておく、という発想でした。このコンテナの発明によって、船の港での停泊時間(遊休時間)は大幅に削減されました。

こうした種類の発想の転換を、実際の村の財政運営に展開することは、今の私にはできませんが、一つ言えることがあるとすれば、それは公共下水道の接続率をあげる、ということは言えるかもしれません。接続率50%以下という数字はあまりにも低すぎます。資本財の半分以上が遊んでいる、ということはある意味では、異常と言ってもいい事態です。下水道の接続率の全国平均は78%です。茨城県内だけ見ても、農業集落排水、合併浄化槽、コミュニティープラントを除く、公共下水道への接続率は60.8%(180万人)です(平成27年度末)。こうした意味で、ただのスローガン・努力目標ではなく、具体的な方策を発明して、数字を上げていくことこそ「歳出の削減」であると同時に、「歳入の増加」につながる一石二鳥の財政施策なのです。

次に、3 の将来の財政状況を見極める、ということについて。

将来の財政状況を見極める」ということは、普通に理解すれば、将来の動向を把握して、財政運営の方向性を決定する、ということになるのでしょうが、これを積極的、主体的に考えれば、現在の財政運営=借金で借金を返済しているという状態から脱して、本来の意味での「建設債」に集約していく、ということになります。そもそも、自治組織が借金をしていいのは、それが将来の住民にも福利を与え続ける資本財に対してのみのはずです。借金を返済するために、新たに起債する(赤字債務)などという状況から脱することこそ、将来を見据えた財政運営であり、将来の財政状況であるべきです。

これは、現在の債務貨幣システムと大いに関係があります。現行の「無から生み出された債務に対して、実質的な財産を以って利息を支払う」という債務貨幣システムの中では、借金の返済は非常な困難が伴います。利息とは、そもそもこの世に存在しない通貨を債権者に支払うというシステムですから、それはどこからか収奪してこなければならないのです。そんなことは、利潤追求組織ではない地方公共団体には不可能なことです。それでも、現行制度上、これをやり遂げなければならないのですから、よほどの発想の転換が必要となります。そうでなければ、生産しない組織(中央・地方政府)は、必ず収奪を始めます。

ただ単に、緊縮財政策を採用して、プライマリーバランス(PB)を健全化し、それによって債務を減らすという発想では、「財政の崖」すなわち潜在成長率の落ち込み、失業急増、賃金の大幅下落、デフレ、財政悪化の責任転嫁といった負のスパイラルに落ち込むだけです。

借金は返さなければいけないのか?

ならば、どうすればいいのか?

まず第一に、美浦村の債務は美浦村が返済しなければいけないのだろうか?ということを考えましょう。そんなことを言うと、えっ!と驚かれる方がいらっしゃるかもしれません。何を言いたいのかというと、「政府の暗黙の保証」と言われる、臨時財政対策債、これは本来、国が地方に現金で配分すべき法律で制度化されている普通交付税の不足額です。現金で交付されれば、もちろん利息はつきません。それを借金して手に入れろと言うのです。しかもこの臨時財政対策債は、「あなたの自主的な判断で、発行してもいいし、しなくてもいいのですよ」と言う意味で「臨時財政対策債発行可能額」と呼んでいる。なんか本来の意味からどんどん乖離してしまっています。「そうじゃないでしょ、あなたが現金で払うべきお金なんですよ」と強調したくなります。私は東京都と関係して仕事をしていました。その時、東京都の職員自身が私に「東京都は詐欺師集団だから、気をつけたほうがいいよ」と言っていたのですが、その意味が、この国の態度を見てようやくわかってきました。まさに詐欺師の口調そのままですね。

その法的根拠も、特例に次ぐ特例のオンパレードです。地方交付税法第六条の三第2項と地方財政法第五条の一第3項の特例によって、地方財源の不足分は借金をして補充し、その借金の返済には新たな借金をしても良いと、まるでサラ金のコマーシャルのように地方に借金を押し付けているのです。

わかりやすい例え話をしましょう。例えば、児童手当です。ある組織が素晴らしい制度を建ててくれました。子どもの成長のために、手当を支給すると言うのです。例えば、3万円支給してくれるといいました。あなたは喜びます。生計の足しになると思ったからです。ところが、その組織はこういいます。制度上3万円支給するのだが、原資が足りないので、1万5千円だけ現金で支給します。残りの1万5千円はカードを作っておきましたので、そのカードでキャッシングして手に入れてください。その1万5千円分は、来月また現金で支給します。ただし、キャッシングの限度は1万5千円で、別にキャッシングしなくてもいいのですよ、と。そのカードをみると、名義は自分になっています。こうしてキャッシングを繰り返していくと、あなたのカードローンの残高はみるみるうちに増えていきます。でも、ちゃんと1万5千円現金もらっていることだし、しょうがないか、などとあなたは考えてしまう。ある時、あなたにある疑問が浮かぶ。ひょっとして、あの組織は、カードローン会社と結託しているのではないか?

私にはわかりませんが、ありえないことではないかもしれません。

ならば、これまでの累積債務の国負担分は利息を含めて国に支払ってもらうべきものではないでしょうか。具体的には、債務証書の名義を国に書き換えてもらえばいいのです。そんなことできるわけがない、何しろ法律で制度化されているのだから、とおっしゃるのはごもっともです。ならば、その法律を調べてみましょう。

まず、地方交付税法からです。

この法律の目的は「第一条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」とあります。ところが、現状では美浦村の財政運営者も指摘している通り「国の地方財政措置の影響を受けやすく、 自立性の低下が進み、不安定な財政構造となっている」のです。

地方交付税法はその本来の目的から次第に乖離していく状態になっています。その原因は、国が最初に税金を徴収し、その取った税源を一定の配分率のもとで地方に交付するというその仕組みにあります。あるいは、標準財政規模の算定式の現状とのミスマッチにあります。あるいは徴税権のありかに関する根本的な考え方にあります。

本来、国は徴税権を有していないのです。地方自治体が本来、住民税のみならず全ての徴税権を持つべきなのです。その上で、それぞれが独自に負担割合に応じて、国の活動に必要な財源を出し合うというのが、本来あるべき地方自治の姿です。身の丈にあった財政運営は、ここから始まると思います。全ての地方が、皆同じである必要など、一つもないのです。

原子力発電所でその地域のあり方を決定した地域は、その地域の自己決定ですから、他がとやかく言うべきではないかもしれません。しかし、原子力政策は国の政策と大きな関わりを持っていますから、その地域が国に負担すべき割合も大きなものとなってしかるべきです。そうであれば、その地域は、原子力発電という産業で地域の興隆を図ったことにもっと誇りを持てるでしょう。また、誤りあれば、その修正も自己決定できるはずです。こうした、地方の自己決定のあり方を左右するのは、結局はお金なのです。そのお金をどうやって手に入れているのか、このお金の流れが地域の自己決定権を担保しているのです。現在の原発立地地方自治体、軍事基地立地地方自治体の自己決定権は大きく毀損しています。その原因の多くは、結局お金の流れということに尽きるのではないでしょうか。

その意味で、現在の地方交付税法のあり方そのものが問題になってきます。もちろん、こうした問題を一地方自治組織で解決できるとは思いませんが、その方向性と意識は、他の自治組織と連携を保ちつつ、常に保持し続けていかなくてはならないのではないでしょうか。

残念な結論ですが、現行法制のもとでは、村の累積債務を国に名義書換えすることはできない、ということになってしまいました。

債務完済のシナリオ

問題の原点に戻りましょう。ただ単に、緊縮財政策を採用して、プライマリーバランス(PB)を健全化し、それによって債務を減らすという発想では、「財政の崖」すなわち潜在成長率の落ち込み、失業急増、賃金の大幅下落、デフレ、財政悪化の責任転嫁といった負のスパイラルに落ち込むだけだ。ならば、どうすればいいのか?

プライマリーバランス(PB)を健全化し、それによって債務を減らすという発想のどこに盲点があるのか?

なぜ、地方債務はデット・エンド(借金地獄)にはまるのか。

ここで、いくつかの解決策と思われるものを列挙してみましょう。

(1) 歳出削減——歳出を10%削減する緊縮財政策

(2) 増税——住民税率の引き上げ、手数料の適正化(値上げ)

(3) 上記(1)と(2)の併用策

この思考実験の前提として、現状ではPB(プライマリー・バランス=新たな借金と元利償還金を除いた差し引き収支)は0であると仮定する。つまり、新たな借金と全ての元利償還金を度外視した場合、財政運営は収入によって、全ての支出が賄われているという模範的な財政運営が行われている、と仮定する。だたし、その裏では、利息によって債務残高は増大しているという現実には注意を払う必要がある、そういうモデルで考えてみよう。

もちろん、地方財政の問題を考える場合は、地方と国がそれぞれ行うべき仕事の違いにも留意しなければなりません。つまり、国は外交、国全体の経済政策、学術・文化の方向性を決めていかなければならないという仕事をしているのに引きかえ、地方の仕事は、民生費、学校教育費、衛生費等々、私たち住民の生活に密着した仕事をしている。

まず、最も効果があると考えられる(1)について考える。つまり、歳出削減により今までの90%の予算で運営していくが、税収はそのままというケースである。PBが0でも債務は増大するが、さすがにPB=1.11以上になれば、債務残高は減りこそしないものの、現状を維持していくことはできる。

次は、(2)のケースで、歳出は今のままで、歳入を増税により増やした場合もPB=1.1となり、こちらの場合は債務残高は漸減していく。

(3)のケースでは、債務残高はより効果的に減っていくだろうことは、(1)、(2)の考察から容易に想像できるだろう。

問題は、こうした理屈の上での帳尻合わせが、村民の経済生活全体にどのような影響を及ぼすか、である。つまり、歳出削減は、村民の生活のあらゆる部分に影響を及ぼすだろうし、増税ともなれば、その影響はもっと大きいだろう。

(1)の歳出削減策では、村の活性度は激しく影響を受け、(2)の増税策も村民の活性度に大きな波を引き起こすことが想像できる。つまり、歳出削減は村の潜在的な成長力を阻害し、増税は村の成長力そのものに大きなダメージを与え、数年ののちには税収の落ち込みすら予想できるのである。また、歳出削減はいろいろな部門に不平、不満、分断を生み出す恐れもある。その影響が行政内部にとどまらず、村民間に生まれれば、これは悲劇を生む。債務残高は減るという結果を期待することはできても、村はそのために大きなダメージを受けるという結果になるのである。これでは、何にもならない。これらは、常識的は判断からも予想できることである。(1)と(2)を併用する(3)の施策では、以上の現象がより顕著に現れることだろう。

それでは、一体どうすればいいのか?

金がないなら、作っちゃえ!

一番簡単な答えは、美浦村が日銀のように通貨発行権を持ち、自ら発行した通貨によって債務を返済する、というシナリオである。そうすれば、新たに借金をする必要がなく、元利償還費は自前で生み出すことができる。問題は、日本の法律がそれを許さないということである。通貨発行権は、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」と「日本銀行法」によって、政府と日銀に独占されている。なので、美浦村が日本から独立しないかぎりは、貨幣および銀行券を勝手に発行するわけにはいかない。

さて、どうすればいいのでしょうか?

資金収支計算書と貸借対照表からわかること

ここで、一度わが美浦村のバランスシートと資金収支計算書を研究してみましょう。問題は美浦村にキャッシュが不足しているということです。その観点から、BS(貸借対照表)とキャッシュフローを見ていきましょう。

平成27年度の美浦村の財務書類4表のうちから、資金収支計算書を見てみます。56ページに連結ベースでの資金収支計算書が掲載されています。それを見ると、カテゴリー別の収支が細かく計算されており、トータルで歳入歳出の差し引きで2億3千4百万円のプラスになっています。さらに、丁寧に村民一人当たりの残高が表示されていて、村民一人当たり1万4千円のプラスになっていることがわかります。

なぁ〜んだ、なんだかんだ言っても、ちゃんと現金はある(期末資金残高14億5千7百万円)し、大丈夫じゃないか、と思ってしまいます。

それでは、先ほどの資金収支計算書(連結ベース)をもとに、その内実をわかりやすく、左の表のようにまとめてみました。

「債務関連の収支」と「村の運営のための収支(キャッシュフロー)」とを分けて、お金の流れを、改めて見ることができるようにしてあります。

左の表の「債務関連収支」は3億3千万円のプラスですが、表の一番下の「基本的な収支(基礎的財政収支=PB)」は、約1億円のマイナスになっています。その差額が「2億3千4百万円のプラス」の実体です。

左の資金収支計算書の見方ですが、

「村の基本的な収入で村の運営を行ったところ、約1億円の赤字が出た。しかし、新たに11億8千万円の借金をして、今年度の借金8億4千万円を返した残りの3億3千万円があるので、そこから基本財政の赤字分約1億円に手当てしたので、最終的には、お金は2億3千4百万円残った」

というふうに見るのです。言い換えれば、なんのことはない、新たに2億3千4百万円の借金が増えました、ということをこの報告書は述べているのです。(村民一人当たり1万4千円の借金がプラスされました、ということです)お金が残った、ではなく、借金が増えた、というのが正しいキャッシュフローに基づく資金収支計算書の正しい見方なのです。(上記の計算では、基金取崩・積立額をキャッシュフローに入れて計算していますので、それを債務返済の原資にしたという考え方をすれば基金減少分を含めて2億4千7百万円の借金増大ということも言えます。実際に、村の普通会計でのPB計算においては、そのような計算方法を採用しています)

そこで、私たちが当面目標とすべきことは、

借金を返済するために、新たに起債する(赤字債務)などという状況から脱すること」

です。「将来の財政状況を見極め」るという財政運営方針は、

現状を厳しく見つめ、もうこれ以上赤字解消のための借金はしない。ただし、適正な普通建設債は認める。何が何でも、借金はだめ、ということではありません。それは、子供の隠された才能を引き出すのに、教育費を使うのと同じことです。潜在的成長力が見込める分野に投資しなければ、適正な発展など望めるはずもないのですから・・・。

そして、借金を返済するために、新たに起債する(赤字債務)などという状況から脱すること」は、最低限の目標です。そう心がけたとしても、累積債務が減るわけではありません。借金をしないだけではなく、その状態で余裕のお金を生み出し、債務残高に地獄のように積み増される利息を返済していくことを研究しなければならないのです。

先に掲げた表の中で、支払利息の債務償還総額に対する割合に焦点を絞って、計算してみてください。利息2億円は、元利償還総額8億4千万円の実に23%です。利率5%という設定の債務であっても、複利計算をすれば、償還額に占める利息の割合は指数関数的に増えてゆきます。だから、将来世代が適正に負担できる建設起債を除く債務の積み増しは、借金を返そうと思ったら決してしてはいけないことなのです。

次にバランスシート(BS)から、この債務の増加について、見ていきましょう。特に、「臨時財政対策債」(政府の暗黙の保証)について注意して検討していきましょう。

平成26年度の連結ベースのバランスシートの負債の部の固定負債額は引当金を除いて121億円3千6百万円(関係団体分を含む)でした。それが、平成27年度の同じ項目を見ると、125億円7千9百万円と1年間で4億4千3百万円増加しています。先ほど資金収支計算書で見た、債務の増加額は3億3千万円(=財政で利用できる借金=現金)でした。差額の1億1千3百万円の債務は、どこに潜んでいるのでしょうか?

貸借対照表(バランスシート=BS)の基本的な見方を確認しておきましょう。まず大雑把に言って、BSの右側(貸方)の負債合計と純資産合計の金額の意味について確認しておきます。

負債合計とは、資産の部(左側=借方)のうちの、さらに有形固定資産のうちで将来世代が負担すべき債務を言います。そして、純資産とは、同じく資産の部のうちの有形固定資産のうちで、過去および現在の世代が負担している財源を表しています。つまり、負債及び純資産合計額における負債合計額が減少すれば将来世代の負担は減っていくという意味です。その逆で、純資産額が負債及び純資産合計額に占める割合が減少していくということは、将来の世代の負担を重くしていく、ということも言えます。

これを前提として平成26年度と平成27年度のそれぞれの項目がどう変化しているかを見てみることにしましょう。(全て連結ベースのBS)

平成26年度の負債及び純資産合計額は、415億4千3百万円、負債合計は153億3千7百万円、純資産は262億5百万円でした。構成比で見ると、負債36.92%、純資産63.08%でした。

次に平成27年度の負債及び純資産合計額は、417億7千5百万円、負債合計は155億9千9百万円、純資産は261億7千6百万円でした。構成比で見ると、負債37.34%、純資産62.66%です。

26年度から27年度の推移を比較すると、総資産は2億3千万円増加しています。負債の増加額は2億6千2百万円、純資産は2千9百万円の減少です。つまり、総資産2億3千万円の増加の内訳は、2億6千2百万円(負債の増加)–2千9百万円(純資産の減少分)=2億3千3百万円ということです。これはちょうど先ほど検討した資金収支計算書の増額分と一緒です。ただし、先ほど指摘した負債総額のうちの固定負債増額分4億4千3百万円と資金収支計算書で見た、債務増大分3億3千万円とは1億1千3百万円の差が出ていますが、この差額がなぜ発生するのかは不明です。

「その他一般財源等」ってなんだぁ〜?

そこで、今度は貸方(右側)項目のうちで、純資産の部に注目して見ましょう。

と思いましたが、連結貸借対照表で純資産の部の内訳項目が一切表示されていません。そこで、仕方がないので、普通会計(連結のうち水道・電気事業会計を除く)の同項目に注目して見ます。すると気になるのは、純資産の部の「その他一般財源等」という項目が2億2千8百万円減少しているということです。純資産が減少するということは、当然総資産と同時に負債も押し上げます。この2億2千8百万円の減少(総資産額を押し上げる、逆に言うと負債額を押し上げる)と総資産2億3千万円の増加を合わせると、4億5千8百万円となります。これが負債総額のうちの固定負債増額分4億4千3百万円とほぼ一致していることが見て取れます。(連結決算の「純資産の部」の内訳がわからないので、正確に一致しません)。

「その他一般財源等」が減少するという項目の意味については、「その他一般財源等は、将来自由に財源として使用できる純資産という事ですが、△37億2 千4百万円が計上されています。つまり、将来の財源のうち37億2千4百万円については使途が既に拘束されてしまっていると言えます。具体的には、臨時財政対策債や減税補てん債のような赤字地方債や退職手当引当金などの資産形成につながらない負債に対して、それらに対応するための資産が蓄えられておらず、将来の収入から充当しなければならないという事です。」と説明されています。つまり、自由に使える財源(自主財源)が昨年度に比して2億2千8百万円減少し、将来の収入から充当しなければならない、つまり、将来世代の負担が増えました、ということなのです。

そもそも「臨時財政対策債」は地方交付税の不足分を補うものと説明されています。それでは、不足分を国が補ったにも関わらず、なぜ自由に使える財源が減るのでしょうか。これは、詐欺的矛盾ではないでしょうか。

「その他一般財源等」というものがどういうものなのかについて、「総務省方式改訂モデル 財務書類の記載要要領(改訂版)」 にしたがって、読み解いてみましょう。「記載要領」(69ページ)によると「 3 .その他一般財源等 定 義 その他一般財源等とは、 純資産のうち 、 公共資産等整備国県補助金等及び公共資産等整備一般財源等 、資産評価差額以外のものをいいます。計上額の算定 その他一般財源等は、純資産合計からその他一般財源等以外の純資産項目を控除して算定します。」と説明されています。なので、「その他一般財源等」を知るためには、「純資産のうち、公共資産等整備国県補助金等及び公共資産等整備一般財源等 、資産評価差額」を知る必要がありそうです。そこで、「公共資産等整備国県補助金」、「公共資産等整備一般財源等」と、「資産評価差額」とは何かを「記載要領」を調べてみましょう。

「公共資産等整備国県補助金」定 義:公共資産等整備国県補助金等とは、公共資産等の資産形成に充てられた国庫支出金及び都道府県支出金などの財源をいいます。

 「公共資産等整備一般財源等」定 義:公共資産等整備一般財源等とは、資産の部に計上されている公共資産等の財源のうち、国庫支出金、都道府県支出金、地方債、未払金以外のものをいいます。計上額の算定 公共資産等整備一般財源等は、公共資産等に充てられた地方債や未払金などの負債項目、国庫支出金や都道府県支出金及び資産評価差額を控除した額を計上します。なお、控除する地方債には、災害復旧事業債、退職手当債、他団体等に対する補助金に充てられた地方債など、 公共資産等の財源にならないものは含めません。また、減税補てん債、臨時財政対策債は公共資産等に充てられた金額が明らかではないため、その全額を含めないものとします。

「資産評価差額」定 義:資産評価差額とは、資産の貸借対照表計上額と取得価額との差額をいいます。

以上の定義を総合して考えると、

「その他一般財源等」とは、公共資産等の資産形成に充てられた財源、すなわち国庫支出金、都道府県支出金、公共資産等整備一般財源を除いた、地方債、未払金

だということになります。言い換えれば

「その他一般財源等」とは、公共資産等に充てられた地方債、未払金、減税補てん債、臨時財政対策債(災害復旧事業債、退職手当債、対する補助金に充てられた地方債はそもそも含めず)である

ということです。

純資産の中のマイナス項目といったら、企業でいう「自己株式」のようなもので、「公共資産等整備一般財源等」のうちで、将来「財源となる可能性のある財源」=「国の地方に対する借金」(「暗黙の政府保証」)をマイナス計上したものだと見ることもできます。

しかし、年々純資産が減少していることを考えれば、これらの地方債、未払金、減税補填債、臨時財政対策債という債務がマイナス計上されるということは、負債に上乗せされることなので(そうでなければ、借方と貸方は一致しません)、結局、負債の部にカウントされることになります。年々、資産が増加し、純資産が減少している(「その他一般財源等」が増加している)、つまり負債が増加している、ということになるのです。つまり、裏口を通って負債の部に計上されていることになるのです。

債務超過へ至る道を覆い隠す粉飾決算以外の何物でもありません。「暗黙の政府保証」などという、根も葉も無い「空気」で、頭を隠して尻隠さずの姿で続けているのです。普通は、どんな融資機関も、債務超過している組織に新たに融資などしません。それだけに、純資産の内容を注意深く観察するのです。

もちろん、債務超過に陥ったら、すぐに企業倒産するのかといえば、必ずしも、そうでないことは、世間一般の経営者ならご存知のことでしょう。要は、どんな手段であれ、債務返済期日までにキャッシュを用意できれば、企業がすぐに倒産することはありません。例えば、債務返済のためのキャッシュを社長が自宅を売り払ってでも、用意すれば、企業は存続するでしょう。しかし、そのような状態が長続きするはずがないのは、誰が見ても明らかです。純資産の項目のマイナスは非常に危険なシグナルです。村の財源のうちの「他人依存分の財源」が「その他一般財源等」の本当の意味です。

25年度から26年度にかけて純資産は8億4千6百万円減少しました。26年度から27年度にかけては先ほども書いたように2千9百万円の減少です。この数字に一喜一憂する必要はないかもしれませんが、注意深く観察をしていく必要があります。

なんという手の込んだ詐欺でしょうか。ちゃっかり、「暗黙の政府保証」という「空気」によって現世代の負担を軽くし、将来世代の負担へと債務をすり替えているのです。「政府が保証する」といっても、日本政府に本当にそんな力があるのか、ちょっと考えてみただけで、その「空気」の本質が見えてくるのではないでしょうか。地方の債務総額は200兆円です。その全てではないにしても、政府がそれを保証してくれるなどと、呑気に考えることなどできない状況ではないでしょうか。

そんな「空気」を日本は、以前に体験したことはありませんか。そうです。「敗走」を「転進」と言い換え、「全滅」を「玉砕」と言葉を飾っていた時代です。まさにデジャヴ(既視感)!こんな空気の中で、債務完済、などと唱えている私は「非国民」と呼ばれてしまうのでしょうか?

子や孫に合わせる顔がない?

いずれにしても、こんなやり方を続けていたら、将来世代の負担は増すばかりです。私たちは、恥ずかしくて子供の顔をまともに見ることはできなくなるでしょう。だから、「累積債務の完済」=「財源の自立」が問題となるのです。この問題を、本当に解決すべき問題として認識を共有していただければ、もう問題は解決したようなものです。問題を解決する第一歩は、問題が問題であることに気づくことだからです。問題を問題として認識できなければ、問題を解決する入り口にすら到達していないことを意味するのですから、問題を解決しようにも、解決することなどできるはずがないのです。

私たちは問題の入り口に到達することができるでしょうか。問題の入り口に到達できれば、あとはこの問題の解決を考えることだけです。

もう一度原点に戻って、自立した地方自治を確立し、日本に地域主権、真の民主主義、立憲主義を根付かせ、「経済成長・発展」という幻想にとらわれず、村民自治、村民の幸福のために、債務完済の方法について考えましょう。

架空の記者会見

そのための方法論として、架空の「未来の記者会見発表」のためのプレスリリース作成から始めてみよう。(未来小説の一場面として笑い飛ばしてください。)

「本日はお忙しい中、国及び県の関係者をはじめ多数の報道機関の皆様にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

この度、① 本村は美浦村財政改革の確実な実行を保証するため、美浦村貨幣を発行し、その権能を議会に委ねました。そして、その権限は独立の『美浦村貨幣委員会』に移譲いたします。そして、新たに新設する『美浦村貨幣局』を通じて、美浦村貨幣の製造、発行、管理、運営の実務にあたることとなりました。

そして、② 美浦村が100%出資する『美浦銀行』を創立し、これを『美浦村貨幣局』の管理下に置くことといたします。『美浦銀行』は「円」の準備率を100%とすることを特徴としており、常に「円」との兌換を可能といたします。従いまして、美浦村が発行する美浦村貨幣は100%「円」に裏付けられております。

③ 美浦村の潜在成長力を引き出し、社会福祉、また新たな施設の建設等に必要な美浦村貨幣は『美浦村貨幣委員会』が決定する財政政策を通じて流通に投入いたします。また過剰に流通している貨幣はインフレ抑制のために同様に引き上げるものといたします。

①の施策に関しましては、東京一極集中を是正し、人口減少に歯止めをかけ、地方を活性化させるという国の方針に従いました措置の一環として取り組まれる施策の一つとして位置付けております。美浦村が自ら行う「地方版総合戦略」として、国との情報共有、美浦村の自立性、将来性、地域性を踏まえ、具体的な結果を引き出すという方針を堅持し、その上で新たな雇用の創出、美浦村への移住の促進、そして本村で暮らす若い世代が希望を持って生活し、結婚し、出産し、子育てを行えるよう、時代にマッチした美浦村を創造し、老後の安心な暮らしを守り、近隣市町村とも連携して住民の福利厚生を高めることを目的として流通される美浦村貨幣の発行と管理を行おうとするものです。

そのために、『美浦村貨幣条例』を制定し、『美浦銀行』を通じ、公共の目的を果たすために、「金利ともインフレとも無縁な貨幣」の創造を通じて、美浦村民に安定した経済生活を提供しようというものです。『美浦村貨幣委員会』は行政、議会から独立した権限を持ち、あくまで、美浦村の豊かで安定した経済生活の確立を目的とした組織として機能させるべく設計されております。しかし、その所属はあくまで美浦村議会にありまして、その前提で議会から権限の移譲を受ける形で機能するような組織形態を持つものです。具体的に申しまして、その役割は、美浦村貨幣の製造、その流通量と新規発行量を決定することです。それはあくまで行政から独立した権能を持っており、総務部企画財政課からも独立した、独自の組織となります。『美浦村貨幣委員会』は供給サイドの調整を果たす役割に徹し、需要サイドの役割は総務部企画財政課が予算立案によって定めることはこれまでと変更はございません。したがいまして、企画財政課が予算の作成を通じて需要サイドを管理し、それと協調する形で『美浦村貨幣委員会』が供給サイドを管理することで、安定的でバランスのとれた美浦村貨幣の流通を確保することによって美浦村の財政基盤を堅固なものにしようとするものでございます。『美浦村貨幣委員会』の委員は、4年毎の住民投票による選挙で選ばれ、職務の内容と情報は全て公開され、物価安定等『美浦村貨幣条例』の定めにより職務を遂行し、議会によって、万が一失敗したと判断されれば、委員長はその責任をとって即時に辞任されることとなります。その最終的議決権は議会に所属いたします。

次に、② の「美浦村が100%出資する『美浦銀行』を創立し、これを『美浦村貨幣局』の管理下に置くこととする」という施策につきましてご説明いたします。『美浦銀行』が目的といたしますのは、「預金準備率」制度というものを廃止し、貨幣の100%準備率を実現して、物価の安定を図るという『美浦村貨幣委員会』の経済政策を実行するものであり、これまで行われておりました銀行による信用創造を通じてこれを実現しようとするのではなく、いわば「貯蓄–貸付協同組合』のような機能を果たすものであるとご想像いただければ良いかと思います。『美浦銀行』には、要求払預金口座と蓄財預金口座の二種類があり、要求払預金口座からの引き出し実績に応じて年5%の手数料が発生するかわりに、その分の住民税は免除されます。すなわち、100%『美浦銀行』を利用する村民は、住民税が100%免除となります。

また、『美浦銀行』は「利息」を廃止するという大きな目的を持っております。「人々の貯蓄」を、「人々が必要とする資金」に回して、通常の利息を支払ったのではとても達成できないようなプロジェクト(その多くは自然環境改善のためのもの)の資金にして、「利息」によって破壊された自然を回復させるという目的を持っております。また、それだけではなく、美浦村に新しく家を建て、移住しようとする住民に対する住宅建設のための融資も優先的に行おうとしております。

「利息を取らない銀行」という概念は、なかなかすぐには理解されないだろうと考えられることから、『美浦銀行』の取り組みを多くの人々に宣伝し、理解を得ていくことも、『美浦銀行』が、不当な障害を克服し、健全に成長していくためには非常に重要なことであろうと考えています。いかなる制度であれ、制度の形は制度の運用結果を決定する非常に大切なものですので、今回美浦村が策定した金融制度は多くの方々の知恵の結集・精華と言えるほど検討に検討を重ね、設計されたものでございます。

次に、③ の『美浦村貨幣委員会』についてさらにご説明いたします。

美浦村の潜在的成長力を引き出し、社会関係資本の整備等に要する予算は企画財政課主導で決定しますが、最終決定権はあくまで『貨幣委員会』の決定を優先させます。なぜなら、村内の貨幣量および流通速度を度外視した経済政策は、かえって村内経済のバランスを崩し、村民の生活に悪影響を及ぼす可能性があるからですが、それだけの権限を持つ『貨幣委員会』は、常にその政策を公開し、村民のチェックを受けつつ納得と理解の上で施策を遂行する必要があります。そこで、委員長が最終決定した政策目標の達成状況につきましては、一年ごとに議会の審議を受け、万が一、経済政策に失敗すれば、委員長は即時に辞任することになります。

美浦村貨幣は従来のように、価値の裏づけなく信用創造されたり、したがってその逆に信用破壊されたりしない100%準備の貨幣です。貨幣発行の主体は議会の委譲を受けた『貨幣委員会』が行い、その所有者は美浦村であり、準備率は100%でございます。

制度設計の目的を次に6項目あげさせていただきます。

① 不足している貨幣の安定供給を実現する

② 国の政策に左右されない安定した金融環境を創造する

③ 美浦村からはじまる活力ある地方のあり方を発信する

④ 美浦村の債務を完済する

⑤ 互恵的協働社会を実現する

⑥ 持続可能な美浦村を建設する

① の「不足している貨幣の安定供給を実現する」ということにつきましては、美浦村が発行する貨幣は消滅することがありませんので、村内に流通しつづけ、経済を安定的に支えることができます。

そして②にあげた安定した金融環境がもたらされ、常に、必要量が流通するため、すべての人々に貨幣が循環しはじめ、貨幣不足という状態に陥ることがありません。それゆえ、国の経済政策如何によって村内の金融状況が不安定化することなく、独自の施策を余裕をもって実施していくことが可能となります。

さらに、③ にあげました目標に関しては、① および②の施策が実施されることで、村は自由な施策を行えるようになり、たとえば、村内に移住しようという人に対しても、一定の支援を資金面で支えることも可能となります。また。住民サービスの向上と相俟って、美浦村の魅力を全国に発信することができ、地域主権、地域連携の起爆剤となることでしょう。

④ の債務の完済についてですが、これ以降、美浦村は独自の財源を手に入れることになるので、これ以上の債務を負う必要がなくなります。そして、償還期日の到来した債務から順次償還していくので、美浦村の債務はやがて完済することができます。(累積債務は翌年から減少を始め、繰上げ返済をしないものとすれば、約50年後には完済することができます)

普段は美浦村貨幣を使用し、域外との取引についてのみ、美浦村貨幣を「円」と兌換することで、何の障害もなく、これまで通り生活はもちろん、企業活動も行うことが可能です。政策の優先順位は、(1)村の活性化、(2)経済基盤への活力注入に傾注して実施されます。

(1)の村の活性化につきましては、現役世代に100%の正規雇用実現、老後世代につきましては豊かに暮らせる福祉の実現、子供世代には、教育の無償化、そして奨学金を条件付きで無償にする、利息のつかない奨学金融資等々、奨学金制度の充実を図り、未来を担う世代に対する投資を充実させます。

そして、(2)の経済基盤への活力注入につきましては、国の政策に左右されない、地域に密着した自然エネルギーの開発、充実、そしてその恩恵を村民が享受することにより、クリーンで新たなエネルギー循環のサイクルを確立してまいります。さらには、自然エネルギー開発、電気自動車等の製造開発、ロボット技術開発等に特化した企業を優先的に誘致し、新時代に即した自然との共生を目指した村づくりを行ってまいります。

⑤ で掲げました「互恵的協働社会」の実現は、利息を生まない「美浦村貨幣」でのみ実現することができます。互恵的協働社会に対立する概念は不安社会です。

ビジネスや産業、政治や宗教、教育、社会問題、経済目標、戦争、平和、攻撃、防御、団結や分裂、これらは全て、互恵的協働社会を目指すのか、不安社会に生きるのか、この二つの選択肢によって規定されてきました。

不安社会では、人々は縮こまり、閉ざし、引きこもり、走り、隠れ、蓄え、傷つけあって生きるようになります。それとは逆に、互恵的協働社会では、人々は広がり、解放し、止まり、明るみに出し、分け合い、癒しあって生きることを目指します。私たちはこの二つの社会の対立軸の中で揺れ動いてきました。他に選択肢がないからです。そして、このどちらを選ぶかは、自由に決めることができるのです。不安の中で縮こまり、競争し、攻撃しあって生きるのか、それとも互いに他と繋がりあって、癒しあいながら生きるのか。

利息がつく貨幣を使用している限り、人は奪い合いをしなければ生きることができません。それも、弱いものを狙って、弱いものから順番に奪っていくのです。その中でお金はがん細胞が増殖していくように不自然な状態で増えていきます。

「美浦村貨幣」は社会の自然な成長を促します。それは人間の成長の手助けをするにすぎないからです。利息とそれに基づく現行の債務貨幣制度のもとでは貨幣が、人間の道具としての己の存在を超えて、貨幣そのものが人間を使うようになってしまうのです。したがって、金利と無縁な「美浦村貨幣」だけが互恵的協働社会を実現することができるのです。

それと同時に ⑥ の持続可能な美浦村の建設への道筋が見えてきます。環境汚染や自然破壊は先ほども述べさせていただきましたように、弱いものから収奪した結果です。利息という、そもそもこの世に存在しない貨幣を手に入れるには、貨幣以外の何かを奪う以外には手に入れる方法がないからです。それは、自然を犠牲にし、環境を破壊し、子供から遊ぶ権利を奪い、女性の労働力、弱い男性の労働力を奪うことを通じて手に入れようとするのです。ですから、この利息から社会が解放されることによって、自然とともに生き、環境を大切に守り、子供は遊びから学び、人々は労働を楽しむことができるようになるのです。さらに、自然の恵みを人々が公平に享受できるような仕組みを、積極的に作っていくことによって、社会は多くの豊かさを実感することができるでしょう。

以上で、美浦村からの共同記者会見を終わりにさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

それでは、皆様からのご質問を受けさせていただきます。ご質問のある方は、挙手のうえ、所属とお名前をおっしゃってから、順次お願いします。」

・・・・・・・・・・

いかがでしょうか。これはあくまで、空想の記者会見のプレスリリースです。

これを叩き台として、議論が深まることを期待しています。

こんなこと、実現するはずがない、というご意見は、ごもっともです。それでは、どうして実現しないのか?

どうすれば実現するようになるのか?

これらの疑問に答えることによって、さらに深化した問題解決方法へと導かれていくことでしょう。

私は美浦村を愛しています。どこに暮らそうとも、自分が暮らしているところが故郷です。自分が今いるところを愛さないで、一体どこを愛することができるというのでしょうか。皆さんも、同じように故郷を愛していると思います。豊かで生き生きとした故郷を建設するために、大いに意見を深めていきたいと思います。

ご精読ありがとうございました。

                              文責:地域通貨研究会代表 樋口 明

(ご意見・お問い合わせはコンタクトフォームからお願いします)