『実践 自治体財政の経済分析』(連載8)

今回はテキストの「第8章 実際に予算書、決算書を読む」を学びます。

学習のポイント:現実の都市の予算書、決算書を読みながら、実際の書類からの読み取り方を学びます。予算書は、首長の各部局の長に対する「予算編成方針」の伝達から始まります。各部局の長は、この予算編成方針に基づいて数ヶ月をかけて、各部局ごとに予算編成に取り掛かり、これを取りまとめて予算書とします。次に首長は議会に対して予算を組んだ姿勢についての趣旨説明をします。

ここでは、わが美浦村の資料をもとに学んでまいりましょう。

1 現実の予算編成方針、予算書の趣旨説明の例

美浦村の「平成29年度当初予算(案)説明書」(ダウンロードに多少時間がかかるかもしれません。3.3MB)に基づいて、学んでいきましょう。「説明書」の構成は

 Ⅰ 予算編成について

 Ⅱ 予算編成基本事項

 Ⅲ 平成29年度予算概要

 Ⅳ 平成29年度重点事業

 Ⅴ 一般会計概要説明

 Ⅵ 特別会計、企業会計概要説明

 「及び付属資料」から構成されています。

それでは、「Ⅰ 予算編成について」から見ていくことにしましょう。

 Ⅰ 予算編成について

ここでは、最初に中央政府(日本政府)によって閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2016について」に沿って国及び国際的な財政状況について概観しています。同文書によれば、政府方針の大要は、

1 我が国経済は経済再生・デフレ脱却に向けて大きく前進している。

2 しかしながら、中国の成長鈍化、石油など資源価格の下落等を背景に、年初来の金融資本市場におけるリスクオフ(投資リスクを回避するため)の動きなど国際金融情勢が変動する中で、世界経済の不透明感が増している。

3 個人消費や設備投資といった民需に力強さを欠いた状況となっている。

4 人口減少・高齢化社会の下での期待成長率の低下、IT化などの技術革新を活かしきれていない生産性の低い働き方の継続、未だ実感に乏しい子育て環境の改善や現役世代の先行き不安等が根強く存在している。

5 地方の中小・小規模事業者等、未だアベノミクスの恩恵を十分に実感できていない地域の隅々までアベノミクスの効果を波及させ、地域経済に好循環をもたらす 「ローカル・アベノミクス」に取り組む必要がある。

1、2、3、4の現状認識と、5で示された今後の取り組み課題を実現させるために「成長と分配の好循環」を目指すとしています。

そのためアベノミクス「新・三本の矢」を一体的に放つと構想されています。「新・三本の矢」を具体的に言えば以下の通りです。

第一の矢の 600 兆円経済の実現

第二の矢の希望出生率 1.8

第三の矢の介護離職ゼロの実現 

のための施策を重点的に施すとしています。

もう一つの「成長と分配の好循環」のための施策として

「東京一極集中の是正」、「若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現」、「地域の特性に即した課題解決」を基本的視点として、地域が持つ魅力(「知恵」「人材」「資源」)を最大限引き出し、国及び地方において官民の総力を挙げて地方創生を本格展開する」

と謳っています。上記文書の中から特に美浦村などの「地方」に関係すると思われる施策を拾ってみる。

「一億総活躍社会を実現する上で最も緊急度の高い取組の一つである地方創生の本格展開に向けて、東京一極集中を是正し人口減少に歯止めをかけることを目指す「まち・ひと・しごと創生基本方針 2016」 に基づき、

①地方創生の深化を実現する政策の推進、

②地方における地域特性に応じた 戦略の推進、

③多様な地方支援の推進、に取り組む。 

人口減少等からみた地域特性に応じ、進捗の遅れている課題について、戦略・ 事業の強化を図るために地方公共団体が行う取組推進や効果検証に対して支援を行う。 国は、こうした事業に取り組む地方公共団体に対して、情報面・人材面・財政面から支援する。情報面では地域経済分析システム(RESAS)、人材面では地方創生を担う人材を育成する「地方創生カレッジ事業」等、財政面では中長期的な地方創生の取組を支援する地方創生推進交付金や地方創生応援税制等の措置を活用する。」 

 また地域の活性化のためとして 

「経済環境の変動等にも強い地域経済への転換と地域雇用の創出等による地域経済好循環の拡大を図るため、産学金官の連携により、地域資源を活かした先進的で持続可能な事業を行う企業の創出、分散型エネルギーシステムの構築等のエネルギーの地産地消、 自治体インフラの民間開放等を進める。また、マイナンバーカードを活用した自治体と商店街等とのサービス連携等による地域活性化を検討する。」

とされています。

「 自治体による自主的な住民生活の基盤整備についても、着実な実施を図る。 成果志向の事業遂行を促進する社会的成果(インパクト)評価の推進や民間資金の活用により、複雑化・多様化する社会的課題解決の取組に民間の人材や資金を呼び込み、 民間の公益活動の活性化を図ることで、活力あふれる共助社会づくりを推進する。」

いろいろな施策が謳われてはいますが、総花的で、なかなか実感が掴めないものばかりです。

地方にとって一番気になるのは、地方交付税の行方ではないでしょうか。そこで、「平成29年度の普通交付税の決定」についてという文書を見ますと、平成29年度 普通交付税の決定額は15兆3千5百億円となっていますが、参考までに平成28年度の普通交付税の本来額を「地方交付税等総額(当初)の推移(H12~H28)」という文書によりますと、16.7兆円となっており、本来額の20.5兆円に対する財源不足を補うために起債する臨時財政対策債の総額は3.8兆円とされています。そして平成25年度から平均で、毎年1%程度ずつ、総額の規模は減少傾向にありますが、臨時財政対策債の発行額は平均5.7兆円の高い水準が続いています。

つまり、このような国全体の財政構造の動きがそのまま地方へと影響を及ぼす、その財政構造に注目する必要があるということになるのだと思います。平成22年度から年々、臨時財政対策債の発行(可能?)額が減少傾向にありますが、地方自治体の基準財政需要額がそんなに変化することは考えられませんので、国は地方財政の負担を追いきれなくなっているという、そんな姿が見えてきます。そして、それはそのまま地方公共団体の財政に直接的な影響を与えます。

臨時財政対策債の発行(可能?)額は、本来国の税収が増加すれば、地方交付税も増加し、臨時財政対策債の発行額は減少するはずですが、先ほどの「地方交付税等総額の推移」のグラフを見ると、全く相関関係がないことがわかります。リーマンショックで税収が落ち込んだ平成21年度(2009)以降、国の税収は一貫して上がり続けています。平成21年度に39兆円と落ち込んだ後、平成27年度(2015)には56兆円とリーマンショック以前よりも好調な税収の伸びをあげています。それにもかかわらず、地方交付税の政府分担分はほぼ変化ばなく、一方で、平成22年度(2010)に7.7兆円の臨時財政対策債を発行して以来、平均5.7兆円の臨時財政対策債を発行し続けているのです。ここ2年くらい(平成27・28年度)は4兆円規模に減少していますが、今後の動きに注意する必要があります。国の財政政策の影響を地方が直接受けるという構造は地方の財政自立の動きと相反するものです。地方公共団体はあくまで地方の事情に基づいて財政運営を自立させる覚悟が必要でしょう。

「国にお金がなく、地方へお金を回せないから、計算に基づいて地方に借金をさせる。その借金を返済するために、また計算に基づいて借金をさせる。」このような構造から地方はいい加減、自立しなければならないと思います。親の仕送りが減ったのなら、アルバイトをするなり、贅沢な食事を控えるなり、自分で自立する方策を考える。仕送りできない親が、仕送りの代わりにカードを子供に与え、子供にキャッシングさせる、そんな親がどこにいるでしょうか。そんな親に対しては、子供の方から自立宣言を出さなければ、親も子も共倒れになってしまいます。

何れにしても、このような国の財政構造の数字をしっかり押さえておく必要があるでしょう。もちろん、本村の財政当局者も、そうした国の財政状況を勘案して、地方交付税(8億2千万円)、臨時財政対策債(4億円)の予算を計上しているのですが。

その後、本村の予算編成を取り巻く概況へと移っていきます。 

まず前年度の決算に関して、

1 平成27年度決算の経常収支比率は、前年度より9.1ポイント改善して88.5%(75%以下が好ましい。80%以上は財政の弾力性が失われつつあるという評価が下される)となった。楽観できない状況であること

2 実質公債費比率は4.5%と前年より1.2ポイント改善している。〈地方債同意基準〉によれば、18%未満であれば、事前協議のうえ、自由に起債できる水準であり、悪くはないが、地域交流館建設事業による村債残高の増加や財源不足による基金の取り崩し等、数値悪化の要因に注意が必要であること。

(参考)

それでは、この「実質公債費比率」はどのような動きによって変動するのか分子の構造から考えると、

  a. (公債費に充当される一般財源及び一般会計から特別会計への繰出金)の額が小さければ小さいほど

  b. 公債費に充当できる普通交付税が大きければ大きいほど

→小さくなる という関係にあります。わかりやすくいえば「借金が少ないほど。標準財政規模が大きいほど。国が面倒を見てくれる借金が大きいほど」実質公債費比率は小さくなる=財政の弾力性が高まる、ということになります。(当たり前と言えば当たり前のことですが。)

次に歳入に関して、

3 法人税の増収、固定資産税の減収、個人村民税の毎年の減収により、トータルで前年比1.5%減の24億2千7百万円となったこと。

4 平成29年度見込みの普通交付税は約8億7千万円程度であろうこと。

次に歳出に関しては、

5 具体的な金額には触れていませんが、地方創生事業関連の歳出、社会保障費の増大、義務的経費の増加、老朽化した施設の維持補修費の増加等、財政状況の厳しさに言及しています。

6 特別会計への繰出し金の増加等により、受益者負担の適正化

等に注意を向けております。景気は緩やかな回復基調であるという政府の認識とは裏腹に、美浦村では税収の減少傾向が続いており、人口減少が続いている現状では、税収の回復は難しいだろうことに触れています。こうした税源不足の現状から、基金の取り崩しが続いており、このまま基金からの繰入はすでに基金が枯渇していることもあり、財政破綻の恐れが現実のものとなる恐れもあり、危機的状況にあるという深刻な認識が示されています。

以上の認識から、29年度の予算編成の方針が打ち出されています。

  Ⅱ 予算編成基本事項

以下に記述するのは村長から各部局長宛てに出された、当初予算の編成方針です。予算編成の第一次責任者である各部局長は、この村長の意思を受けて予算編成に取り組みます。この方針は、村長が全てを作成したものではなく、企画財政部長やその部下が資料を持ち寄って作成、書き直し、最終的に村長の手を入れて作成されたものだと思います。

その構成を以下に示します。

〈予算編成の方針〉

 ○予算編成の基本方針

〈全般事項〉

 ○予算編成の全般事項

〈個別事項〉

 ○歳入に関する事項

  ⑴ 村税

  ⑵ 分担金及び負担金、使用料及び手数料

  ⑶ 国・県支出金

  ⑷ 寄付金

  ⑸ 諸収入

  ⑹ 村債

 ○歳出に関する事項

  ⑴ 人件費

  ⑵ 物件費

  ⑶ 維持補修費

  ⑷ 補助費等

  ⑸ 普通建設事業費

 ○ 特別会計及び企業会計

  ⑴ 特別会計

  ⑵ 企業会計

それでは、各項目について見てみましょう。

〈予算編成の方針〉

 ○予算編成の基本方針

まず、財源不足により平成29年度の予算編成は厳しいものになるということが通告されています。そうした厳しい財政状況の中においても、村長は、村民サービスの安定的な提供と、地方創生事業の推進に対応できるよう職員全員が、その認識を共有して、行財政運営の合理化、効率化に努めるよ求めています。

〈全般事項〉

 ○予算編成の全般事項

1 優先順位を明確にして、施策の重点化を図ること

2 歳入歳出予算額を関係各課が共有し、年度途中における補正は、原則として行わない。

3 平成27年度の予算と実績とをよく研究して、両者の乖離を防ぐ手立てを講じること

4 地方負担分については現行の制度に基づき予算編成すること

5 事業策定にあたっては、前年度予算の踏襲をやめ、新しい視点から施策立案すること

6 新規施策については、第一に財源の有無を検討し、受益者負担の原則を考慮すること

7 税収の適正な確保のため、税の収納率の向上に一層努めること。「住民が負担しなくて済むサービスが良いサービス」という固定観念を捨て、適正な負担のあり方を検討すること

〈個別事項〉

 ○歳入に関する事項

歳入見込み額の査定にあたっては、平成27年度の実績のみならず、国の概算要求及び社会経済の動向等も踏まえて、あらゆる資料に基づき適正な財源の補足に努め、過大もしくは過小見積りとならないよう十分留意すること

  ⑴ 村税

負担公正の観点から債権確保に努め、収納率の向上に努めること

  ⑵ 分担金及び負担金、使用料及び手数料

分担金、負担金は現行制度に基づき、使用料、手数料については、受益者負担の原則に基づくこと。また、減免制度や料金体系の見直し等も検討し、歳入の確保に努めること

  ⑶ 国・県支出金

国・県の予算内容、交付基準を熟知し、国庫(県)支出金の減少には事業の見直しも視野に入れて対応すること

  ⑷ 寄付金

歳入が確実なもののみを計上すること

  ⑸ 諸収入

前年度実績に基づき、確実な収入見込みを立てること

  ⑹ 村債

事業の適債性、充当率、交付税措置等を十分検討するとともに、将来の財政負担を考慮すること

 ○歳出に関する事項

財源不足の状況を考慮し、既定事業であっても聖域なき再検討も視野に入れること。経常経費のシーリング設定は行わないが、自発的に経費削減に努めること。

  ⑴ 人件費

時間外勤務は縮減すること。非常勤一般職員、特別職についても十分精査して、過大な計上がないよう留意すること

  ⑵ 物件費

従来以上に見直しを行い、経費の節減・合理化に努めること

  ⑶ 維持補修費

各施設の維持修繕については、優先順位を明確にして、危険であるというような、真にやむを得ないものに限ること

  ⑷ 補助費等

補助金については、実態を把握した上で、公益性の観点により妥当性、有効性及び公平性の再検証を行い、ゼロベースからの見直しを図ること

  ⑸ 普通建設事業費

事業の必要性、緊急性及び事業効果について十分整理して、実施計画に位置づけされた事業を策定すること。なお、前年度当初予算で10%の削減をすること

 ○ 特別会計及び企業会計

事業内容を精査し、一般会計からの基準外の繰入金を安易に計上しないこと

  ⑴ 特別会計

住民負担の適正化を念頭に置いて、一般会計からの基準外の繰出金に過度に依存しないこと

国保会計については、国保税(国保料)見直しの検討を進めること

  ⑵ 企業会計

企業経営感覚を持って、施設の有効活用を図り、遊休資産が出ないよう、公共下水道事業会計においては地区内の加入促進を図り、使用料の増収を企図すること。また、一般会計からの過度の繰出金依存から脱却すること

かなり厳しい通達となっています。村長がいかに財政状態に危機意識を抱いているか、よくわかる内容となっています。

 Ⅲ 平成29年度予算概要

次に、平成29年度の予算概要を見てみましょう。

美浦村全体の予算規模は104億8千万円です。

○一般会計

予算総額は54億5千3百万円。

ただし、総予算のうち財源不足を補うため財政調整基金を取り崩し2億3千9百万円、減債基金より1億円の合計3億3千9百万円の繰入を行なっている。下に財政調整基金等の残高推移の図を掲げます。

平成23年(2011年)をピークとして、残高が年々減少している様子がわかります。減債基金は1百60万円、財政調整基金は残高1億2千3百万円程度です。次年度以降は、これに頼ることはできないと考えておいたほうが良いでしょう。

○特別会計

国民健康保険特別会計:21億4千8百万円(一般会計等からの繰入金2億円)

農業集落排水事業特別会計:1億6千万円(一般会計等からの繰入金8千万円)

公共下水道事業特別会計:8億2千7百万円(一般会計等からの繰入金1億1千万円)

介護保険特別会計:10億4千5百万円(一般会計等からの繰入金1億7千万円)

後期高齢者医療特別会計:1億2千8百万円(一般会計等からの繰入金3千3百万円)

○企業会計

水道事業会計:6億6千3百万円

資本的支出:8千万円(うち企業債償還金1千8百万円を含む)

電気事業会計:5千5百万円

資本的支出:2百万円(企業債償還金)

以上、それぞれの予算を見てきましたが、歳入に関して、一般会計の歳入に財政調整基金、減債基金等からの繰入を行なっているのが気になります。資料29ページの「財政調整基金等残高の推移」の図(このページの上)を見るとここ五、六年の間で、残高は14億円から1億2千3百万円にまで落ち込んでいる。つまり「へそくり」はもうなくなってきているのです。この「へそくり」からの繰入を除外すると基礎的財政収支は以下のようになります。

54億5千3百万円−3億8千万円(繰入金)−4億6千2百万円(村債)=46億1千1百万円(基礎歳入)

54億5千3百万円−5億6千万円(公債費)=48億9千3百万円(基礎歳出)

基礎的財政収支=46億1千1百万円−48億9千3百万円=▲2億8千2百万円

つまりPB(プライマリーバランス=基礎的財政収支)は2億8千2百万円の赤字となります。ただし、繰入金を歳入からマイナスするのはおかしい、という意見は当然あると思います。もちろん通常の計算方法ではないかもしれないが、財政調整基金等の残高は1億2千3百万円を切っているのだから、次年度以降もこうした財政措置を続けていくことはできないということを、冷酷に認識する上では、上記のような計算も、あながち意味のないこととは言えないではないでしょうか。

公債費を除いた基礎的財政支出を前年度と比較すると、平成28年度が54億3千3百万円であったのに対して、平成29年度は48億9千2百万円なので、差し引き5億4千1百万の削減で、平成28年度の歳出の10%減の超緊縮予算となっているのがわかります。それでは、何がこのような超緊縮予算に貢献したのかについて考察して見ましょう。

下の図は、各項目別に見た削減貢献率を表した表である。

平成29年度予算の削減に貢献度の高いのは、右欄の緑色のセルの数字順に1番目が「農林水産業費」が全削減額の67%を占める、3億6千3百万円、2位が「土木費」で16%を占め、金額的には8千7百万円、3位は教育費で11%の6千万円、この3項目を合わせて実に5億1千万円にのぼる。一方、予算増額になっているのは、1位「衛生費」3千1百万円でマイナス5.7%、2位は消防費の1千5百万円でマイナス2.7%となっている。

つまり、予算削減における貢献率からみると、この「農林水産業費」の3億6千万円が大きい割合を占めており、それではの中身は何かということが問題となる。つまり、削減努力の結果であるのか、あるいは事業年度更新等の別の理由であるのか。

説明書によると、「事業完成により美浦村地域交流館建築工事3億2千万円がなくなり」とあるが、これはどういう意味であろうか。字面からは、削減努力とはあまり関係がなさそうだが・・・。

山口薫先生の『公共貨幣』で検討してきた通り、財政赤字の削減は、現行の「債務貨幣制度」のもとにおいては無理だということを学んできました。「公共貨幣制度」に移行しない限り、「借金地獄」から抜け出すことはできません。

次善の策としては、借金の利子率を下げ、プライマリーバランスをなんとか好転させて、生まれた余裕の資金を返済に当てるしか方法は考えられないのです。すなわち、緊縮財政のみでは、税収増を期待できない。下世話な表現をすれば、お母さんがいくらお財布の紐を締めて家計費を切り詰めてもそれだけでは、お父さんが頑張って収入を増やしてくれない限り、借金を返す余裕は生まれてこないのです。さらに、それに加えて、借金取り立て人との「リスケ」交渉をうまくやれれば上等、ということです。

特に「地方経済」の問題の焦点は、地域内の貨幣の地域外への流出であることに目を向ける必要があります。貨幣が地域の中で何度もなんども流通するように、地域内の貨幣の流通速度をあげる方策が取られなければなりません。地産地消のような「美浦村ファースト」の施策が必要とされているのです。美浦村という一個の経済体の中を流れる血液である貨幣の出血ともいうべき「経済というバケツの底にあいた穴」をいかに塞ぐのか、ここに焦点を当てた施策が求められていると思います。そして、どこに穴が空いているのかを発見し、手を打つという具体的な方策は、実際の実務に当たっている役場の職員が一番有効に考えることができる。つまり、村の職員こそ、この問題のいちばんの当事者である可能性が高いのです。予算編成において、重要なことは、歳出の削減だけではなく、歳入の増加を図ること、すなわち地域から流出する貨幣をいかに地域内に還流させるのか、その方策を発見することにかかっているのだと思います。つまり予算編成とは、アイデアの見せ所、そこにこそ予算編成の醍醐味がかかっているのだと思います。

 Ⅳ 平成29年度重点事業

重点事業として、もっとも力を入れている(金額的に多い)事業に公共下水道事業があります。公共下水道事業の歳入のうち、民間企業でいう売上に相当するものは「分担金及び負担金・使用料及び手数料」になるのでしょうが、合わせて281,103千円(2億8千万円)であるのに対して、基礎的歳出は615,458千円(6億1千5百万円)なので、PB=▲334,355千円(3億3千4百万円)の赤字。一般社会では、どんな金融機関もそっぽを向く、「経営不振の状態」にある企業、いや即倒産企業となってしまいます。

下水道接続率44.6%での「売上」が2億8千万円なので、接続率100%となれば売上は計算上では、6億3千万円となり、差引3億5千万円の増収となる。3億8千8百万円の一般会計繰入・基金繰入・村債はほぼ不要となります。現実にはそんなに簡単にうまくいくはずはないのでしょうが、施策の目標は一にも二にも、遊休施設の有効活用、すなわち接続率の向上、有収水量の施設使用率100%を見込むことにあることは間違い無いと思われます。

下水道の接続率の拡大を目指すには、上水道の普及率拡大と密接なつながりがあることは当然であり、上水道の普及率拡大のためには、美味しい水を提供すること、村民の健康維持のために井戸水の水質検査の助成事業など、いろいろ考えられると思いますので、大いに取り組んでもらいたいところです。安全で美味しい水を提供すること。これは社会経済上の要請です。霞ヶ浦の水は臭い、汚い、危険だというのが、これまでの一般的認識でした。こうしたイメージを払拭して、日本一綺麗な湖・霞ヶ浦を目指した施策も必要です。それには、当然国費を充てるべきことは主張していかなければならないでしょう。立派な施設を整備しても、それが効率的に利用されなければ、料金の値下げもままならないでしょうし、住民サービスの向上にもつながらないと思います。組織内の人的資源も「上下水道の普及」にもっとフォーカスを絞って、引き当てる必要があるのではないでしょうか。

さらに、道路の排水施設もU字形側溝や「明かり掘り」ではなく、L形溝等により管理すれば、道路幅員も広がり、通行上の危険除去にもなり、蚊やハエの発生も抑えられ、住民の衛生向上にもつながります。当然、工事の発注は村内に営業所を持つ事業者を優先させます(美浦村ファースト)。道路の排水(雨水)は極力地下に浸透させることを構造的に確保することも前提となります。そのまま処理施設へ垂れ流すのではなく、地下を通じて霞ヶ浦へ戻すことは水質浄化の基本です。また、公共下水道の接続率の高い地域から、順次道路構造整備を進めるという方針をあげれば、住民の意識にも下水道及び上水道の接続切り替えがインセンティブとして働くのではないでしょうか。村民のためにならない、公営施設の維持管理の民間委託などは、もってのほかです。

次の重点施策として大きいのは「子育て支援対策事業」のうちでも「児童手当」に係るもので、2億4千8百万円を充てています。

児童手当の支給目的は「次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを社会全体で応援するという趣旨」で行われています。応援するのが目的ですから、それは必ずしもお金(円=政府硬貨・日銀券)でなくてもよいはずです。お金(円=政府硬貨・日銀券)であれば、児童手当支給の目的に使用されているのかどうかは、受給者(親等)以外、誰にも判断できません。そうであるならば、支給の目的を真に達成するためには、何にでも使用できるお金(円=政府硬貨・日銀券)よりも、使用目的、使用範囲を限ったポイントあるいは地域通貨といったものの方が、施策の目的を確実に達成できるのではないでしょうか。

たとえば、村が発行するポイントあるいは地域通貨を、おむつ、粉ミルク、あるいはみほふれ愛プラザでの子供預かり料、保育園、幼稚園の通園料、あるいは学習塾の費用等に限定して使用できるようにすれば、児童手当支給の目的は必ず達成されます。

さらに、お金(円=政府硬貨・日銀券)で支給すれば、貨幣が美浦村から村外に漏出する恐れがありますが、ポイントあるいは地域通貨であれば、それを最小限に防ぐことができるでしょう。さらに多少でも歳出の削減につながれば、他の財源として活用することもできるでしょう。当然発行分のポイント・地域通貨相当の円(円=政府硬貨・日銀券)は準備金として、村の金庫に準備金として確保しておくことは前提条件となりますが、ポイント・地域通貨を受け取った事業者が、村内で使用できるようさらに工夫すれば、この準備金の漏出を防ぐことができ、それを減債基金に回すことも可能となります。この仕組みは、見方を変えると、児童手当支給対象者が利用する施設・事業者限定の銀行に、村の財政当局がなるということができます。「村の金庫」が、施設・事業者からの要求払いに100%応える100%準備銀行に変貌するということです。ポイント・地域通貨の有効期限を1年間程度に区切ればさらに効果が上がるものと思われます。

美浦村の児童手当受給者の実態は本説明書からはわかりませんが、常住人口15,238人(平成29年7月1日現在)に対して、15歳未満の構成率が11.1%であることから、15歳未満の人口は1,700人弱であることがわかります。さらに、扶助費児童手当予算が243,040千円なので、平均受給額を二万円とすると1,000人弱程度が受給しているものと思われます。これらの方々にその本来の支給目的が果たせるように、使用できる村内の店舗、施設と村とが協定を結び、受給者の利便性を損なわないように配慮することを前提として、住基カードをICカード代わりにしたポイント制あるいは地域限定の通貨である地域通貨等で支給すれば、双方にとって非常によい結果をうむのではないでしょうか。さらにこのポイント・地域通貨の利用範囲を広げる工夫をすれば、この施策の有効性が高まることでしょう。例えば、そのポイントを、児童手当関係の事業者の村民税の納税に限って使えるようにするなどは、その簡単な工夫の一つです。村の金庫から出たお金が、村民税として還流してくる、その流れをポイント・地域通貨に代替することで、村はそのお金(円=政府硬貨・日銀券)を他の財源に使用して、貨幣の流通速度を一つ上げることができます。村内の店舗、教育施設、保育施設との協定を結ぶために工夫は必要でしょうが、出来ない理由を探すよりも、どうすれば出来るかを考え、制度設計を考えることこそ、公僕たる役人の仕事の醍醐味であり、村会議員諸氏がそれを積極的に応援するようにすれば、優秀な官僚は最大限の力を発揮してくれるのではないでしょうか。

様々な創意工夫が期待されるところです。

 Ⅴ 一般会計概要説明

次に、一般会計の概要説明を見てみましょう。最初は【歳入】です。

構成比の高い順からいうと、

1 村税——42.7%(構成比、以下同じ)

2 地方交付税——15.0%

3 村債——8.5%

となりますので、1の村税から見ていきましょう。

【村税】は前年度と比較すると、約7千3百万円増加しています。その理由は、法人税の増加にあると説明されています。具体的にいうと、法人村民税は6千万円の増加、個人村民税も8百万円増加しています。固定資産税で1千4百万円の増。

法人村民税が増加したことは、端的に企業の内部留保の増加を示しています。企業の利益が上がることは、景気の回復に悪いことではありませんが、それが賃金に反映されない限り、社会全体の経済の成長にはつながらないのです。真の景気回復とは国民所得が増加するということです。本当に景気が良い時には企業はあまり内部留保にこだわりません。なぜなら、投資をすればするほど利潤が上がるので、利益を留保する必要がないからです。内部留保の増大は企業の不安心理の表れです。または投資需要が少ないことを示しています。それは国の借金の増大でわかります。国が借金をして、その一部を企業にバラまき、税収としてまた国に還流するという、虚の景気回復にすぎないのです。

【地方交付税】額は予算編成の段階では確定できませんので、あくまで見込み額です。地方交付税は「基準財政需要額」と「基準財政収入額」の差で決定されます。この差がマイナスであれば「不交付」となります。つまり「地方譲与税」と村民税収の75%だけで、村を維持していくのに必要な歳出を賄えるということです。美浦村も昔は「不交付団体」でした。地方交付税額が決定されるのは、7〜8月頃なので、予算編成の段階では、控え目に前年比1億円減の8億2千万円を計上しています。大まかにいえば、32億円(基準財政需要額)−24億円(基準財政収入額)=8億円(地方交付税)という計算になるのでしょうか。平成29年度の美浦村予算案では8億2千万円を見込んでいます。

【村債】は前年度比3億3千万円減の4億6千2百万円を計上しました。前年度が8億円であったことを考えると大変良いことです。村債が4億円台の水準であった年度はここ10年間を見ると平成18年、21年、26年の3回だけで、あとは6億円から8億円の水準で推移しており、連結決算で見ると、債務残高は平成27年度時点で136億2千6百万円弱となっており、予断を許せる状態ではありません。

しかし、これは現行の「債務貨幣制度」の下にあっては必然的なことであり、不思議なことではありません。また、中央、地方を含めた日本全体の財務状況の中で、地方債の総額は200兆円前後でほぼ横ばい状態で推移しているということは、国の財政政策全体の中で地方債がコントロールされていると言えます。根本的な減債対策は、現行貨幣制度のもとでは無理ですが、次善の策として

● 利率を下げること

● PB(プライマリーバランス=基礎的財政収支)をプラスに転じ、債務の返済にあてる

この二つしか見いだすことができません。したがって、この「借金地獄」から抜け出す根本的な施策は、真に民主的な経済というものに国民が意識的に自らを変革していくことが大変重要であると思います。非民主的な中央銀行に金融政策を牛耳られていることを、官民が一体となって認識し、実際の行動を具体的に起こしていく必要があるのです。山口先生の『公共貨幣』を学ぶ重要性は益々高まっていると思われます。

次に【歳出】を見ていきましょう。

歳出は目的別と性質別に分けて説明されています。

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「市町村内の予算編成過程においては目的別歳出として、その内容が決定される。この目的別歳出を、事後的に人件費その他に改めて分類しなおしたものが性質別歳出である。最初から性質別歳出が決定されるわけではない。」(23ページ)

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美浦村の「説明書」では、性質別歳出が最初に「説明」されていますが、上記の理由により目的別歳出から検討したいと思います。

構成比からその項目(款)を列挙します。数字は構成比です。

1 民生費——30.2%

2 教育費——15.2%

3 総務費——13.1%

4 衛生費——10.8%

5 公債費——10.3%

6 その他——20.4%

となっています。それでは、民生費から見ていきましょう。

民生費予算総額は16億4千7百万円(30.2%)です。その中で社会福祉費(項)は10億8千万円で民生費全体の65.6%を占めています。その内訳は(数字は金額、単位は千円、構成比)

1 社会福祉総務費——337,866(31.3%)

 2 老人福祉費——211,108(19.5%)

3 障がい者福祉費——240,911(22.3%)

4 国民年金事務費——184(0%)

5 社会福祉施設費——3,126(0.3%)

6 老人医療給付費——175,238(16.2%)

7 医療福祉費——112,642(10.4%)

社会福祉総務費のさらに内訳(節)を見ると、3億3千8百万円のうちの59%約2億円弱が繰出金となっています。この繰出金の流れがよくわかりません。他は村社会福祉協議会等への負担金補助及び交付金や給料などで、歳出予算として理解できるのですが、この繰出金の流れについては、私の理解力では解決できそうもありませんので、今後問い合わせして答えが出たら、ご報告したいと思います。

(報告:総務部企画財政課から回答がありました。2億円弱の繰出金については、国民健康保険特別会計繰出金として、それぞれ保険基盤安定、職員給与費等のため1億2千万円、その他繰出金として7千万円、これは次年度以降に国民保険会計が広域処理されるさい国保税が見直しされるまでの措置として予算化されたということでした。)

何れにしても、独立採算が建前の特別会計ですが、制度の改変が現実に追いついていないということでしょうか。

教育費に関しては、問題ないのでスルーします。次に総務費を見てみましょう。

総務費の中で構成比率が高いのは36%の一般管理費2億5千7百万円で、そのうち41.7%を占めるのが、給料・職員手当・共済費となっています。総務費全体に占める割合は約3割となっています。ただし、賦課費、徴税費、戸籍住民基本台帳費等の同じ性質の全てを合わせると、総務費総額の38%2億7千万円強となりますが、私たち村民のために一生懸命働いてくれている職員皆さまに対する当然の費用ですから、このくらいは妥当であると思います。村全体で見ても、8億8百万円、ラスパイレス指数105(国家公務員を100とした場合の給与水準を表す指数)程度であり、妥当な数字だと思います。今後とも、村の発展のため大いに良い仕事をしてくれることを期待しましょう。ただし、これ以上、村の財政状況が厳しくなった場合は相当程度の覚悟は必要かと思われます。そうならないよう大いに奮起して欲しいところです。

 Ⅵ 特別会計、企業会計概要説明

次に、特別会計、企業会計の概要説明を見ていくことにしましょう。

● 国民健康保険特別会計

● 農業集落排水事業特別会計

● 公共下水道事業特別会計

● 介護保険特別会計

● 後期高齢者医療特別会計

● 水道事業会計

● 電気事業会計

順番に見ていきましょう。

● 国民健康保険特別会計

平成29年度の予算総額は21億5千万円です。前年度比1千4百万円(0.6%)減です。医療給付とともに、予防医療のために特定健診、特定保健指導及び人間ドック等の費用の助成を行います。また、医療費削減のために、医療機関の適正受診やジェネリック医薬品普及啓発活動、レセプト点検のための通知を行うとしています。

歳出内訳の金額、構成比、及びそれを円グラフで表したものは、以下の通りです。


一方で、歳入内訳の金額、対前年度比及び構成比、円グラフは以下の通りです。

歳入と歳出を比較してみると、保険給付費が57%を占めているにもかかわらず、国民健康保険税(料)で賄えているのは19%しか過ぎません。このアンバランスの原因はなんでしょうか。

市町村国保は他の制度に比べて,加入者の年齢が高く,1人 当たり医療費が高額となる一方,所得水準が低いため,保険料負担が相対的に 重い状況になっている。保険税(料)と交付金でなんとか成り立っている状況になっています。一般会計(国保目的以外の歳入)からの繰入金が9%の2億円に上っています。日本の皆保険制度における医療保険制度の体系は以下の図のようになっています。その中で、ここで問題としているのは、地域保健の中の(市町村)国民健康保険です。

加入者数の構成比率は下の図の通りですが、ただし生活保護の被保護世帯は、生活保護から医療扶助が得られることから、全ての医療保険の適用除外とされています。各制度の加入者数を下に示します。(厚生労働省のHPより)

上の図を見ると、国民の27%にあたる3,520万人が市町村国保であることがわかります。

平成28年2月の「美浦村国民健康保険データヘルス計画」によれば、平成 26 年度国保被保険者数は 4,935 人で、人口に占める国保加入者の割合は約 3 割となっています。被保険者数の推移を見ると、全体としては減少傾向で、年齢別に見ると、65 歳未満は減少傾向だが、65 歳以上は増加傾向であり、平成26年度は65歳以上の被保険者が36.2%を占めています。年齢別の構成比を表したものはが以下の図です。

 そして、この65歳以上の加入者の世帯主の職業別構成割合は全国のデータですが、以下のように年金で生活する無職の世帯が増加していることがわかります。そして農林業従事者の構成割合は2008年度で3.4%にまで落ち込んでいます。

すなわち、市町村国保制度の本来の制度設計の基本的な考え方の基礎にあった「自営業者と農業者のための制度」が、現状は「無職者と非正規労働者のための制度」へと変貌してしまったと言える状況になっています。被用者が定年退職すると被用者保険から市町村国保に移行するのが国民健康保険法の論理であるため、市町村国保の高齢者比率が高まっていくのは当然の帰結であり、また高齢化とともに医療費が増大していくのも当然であり、こうした理由から市町村国保の医療給付が増大していくのは、理の当然です。現状では、市町村国保が「皆保険体制の最後のセーフティーネット」の役割を担わされ、その負担が増大していくのは制度的宿命といえるでしょう。

先述したように、「保険給付費が57%を占めているにもかかわらず、国民健康保険税(料)で賄えているのは19%しか過ぎない」といったアンバランスの原因は制度上から生まれてきているのではないでしょうか。もちろんそうしたアンバランスを回避するために、1982年に老人保健法が制定され、さらに1984年の健康保険法の改正、2006年の医療保険改革法と様々な試みがなされてきたわけですが、市町村国保の都道府県単位への移行等、現在はそのような制度改革の途上であり、これからも現実にあった改正、改革の必要は高まっていると言えます。しかし、国民保健税(料)の減少傾向は、次年度以降もこのまま推移するものと考えておいたほうが良いでしょう。

総じて、市町村国保は、他の制度と比較して、加入者の年齢が高いこと、一人当たりの医療費が高額である一方で、所得水準が低いことなどから、保険税(料)負担が相対的に重くなる傾向にあります。

美浦村の国民健康保険税(料)の決め方は多くの自治体に採用されている4方式の「所得割」、「資産割」、「均等割」、「平等割」によって決められています。最近の傾向では、無所得世帯の割合が増加していることから、保険料軽減制度の適用を受ける世帯数が増加傾向にあり 、中間所得層の負担割合が重くなってきていることに注意を向ける必要があるでしょう。

● 農業集落排水事業特別会計

次に、「農業集落排水事業特別会計」を見てみます。

まず、歳入です。

歳出は次の通りです。

この歳入・歳出を見比べて見ると、歳入の一位は繰入金で8千5百万円(52%)、二位が使用料および手数料で7千4百万円(46%)です。

一方歳出の一位は総務費の9千4百万円(58%)、二位が公債費で6千4百万円(40%)となっています。

給与と事務費関係で歳入の52%を消費し、残りの48%のうちの大半(46%)を公債費(借金の返済)に充当している状況です。これは、事業として異常な経営状態ではないでしょうか。一般企業であれば、予算の4割を借金の返済に費やしている会社を相手にするところはないはずです。この公債費がいつ完済するのか、債務残高はどのくらいあるのか。

平成29年度現在で、債務残高は4億8千6百万円です。完済できるのは18年後の平成47年となっています。ただし、それは毎年度予算で、これ以上債務を増やさないという条件付きです。

農業集落排水事業は「農村集落の環境衛生の向上と霞ヶ浦の水質汚濁を防止し、良好な水質環境を保全」するための非常に大切に事業です。衛生環境や景観の向上もさることながら、美浦村の上水道の質(味)の向上に密接な関係がある施策です。この事業を破綻させることは許されません。持続可能な事業の運営が望まれるところです。

● 公共下水道事業特別会計

次に公共下水道事業特別会計をみましょう。歳出予算です。

公共下水道歳出対前年度比

以下は歳入予算です。

公共下水道歳入

まず歳出予算を見ます。その73%は下水道費、いわゆる事業費です。そして、4分の1を占める公債費2億1千万円。

歳入予算は3割が使用料および手数料で同じく3割が村債(借金)2億4千8百万円です。借金を2億1千万円返して、新たに2億5千万円を借金している状態です。ここにも歪んだ「債務貨幣システム」の弊害を見て取る事もできるでしょう。

美浦村では平成29年3月に「美浦村公共下水道事業経営戦略」という文書を纏めています。それによりますと、総務省は今後地方交付税措置については「経営戦略」を策定することが要件となるとしたそうです。しかしながら、「交付税」とは何かの要件に基づいて交付されるものではなく、中央と地方の偏りを調整するために交付するもののはずですから、これは制度の趣旨を取り違えていると思います。

とはいえ、地方は弱いですから、中央のご意向には逆らえないということでしょう。しかし「経営戦略」を立てること自体は悪いことではありません。自ら行う事業を客観的に眺め直してみることは必要でしょう。

「経営戦略」を策定することの目的は、「投資」と「財政」の両面から、今後の経営の方向性を明らかに、経営基盤の強化と財政マネジメントを向上させることと規定しています。

下水道事業といえば、社会の基本的なインフラの一つであり、し尿や生活雑排水を垂れ流しにしていたのでは、生活環境の悪化は避けられません。下水道事業は、住民の生活の質の向上のための基本的なインフラという位置付けは、どんな時代にあっても変わらないと思います。仮に合併浄化槽を設けたとしても、浄化された排水はいずれ処理されなくてはなりません。雨水についても同じで、的確に処理されなくては、生活に支障をきたすでしょう。

そこで、美浦村における下水道事業を取り巻く状況を考えてみると、第一に下水道が整備される以前の時期には、地盤の自然浸透力に頼った処理方法がとられていたことと思いますが、1990年代初頭のバブルの崩壊による地価の下落を受け、美浦村にも村外から流入してくる人々の流れがありました。こうした中、1995年(平成7年)に下水道等整備基本構想および公共下水道全体計画が策定されました。さらに2010年(平成22年)には、霞ヶ浦流域別下水道総合整備計画の見直しに伴って、美浦村においても公共下水道計画の見直しを行い、計画区域を612.9haとし、さらに2014年(平成26年)には、都市計画が変更され、計画区域を648haとすることになりました。

2000年(平成12年)に美浦村の人口はピークを迎え18,219人を記録し、そのあとは現在までずっと減少傾向が続いています。この人口減少は直接に料金収入の減少を招来し、下水道事業の経営環境の悪化を招いています。こうした状況は、将来も続くものと予想されます。

下水道事業を負担するのは誰かといえば、その利用者のみではありません。この事業の目的、すなわち生活環境の整備と霞ヶ浦の水質改善、地域の保健衛生の向上等を考えれば、地域住民すべてがその恩恵にあずかっていることもあり、利用者の負担はもとより、たとえ浄化槽により個別に処理を行なっている住民も、一歩表に出れば、この下水道事業の恩恵にあずかっていることは明らかです。であれば、財源として一般財源を繰入れるのではなく、浄化槽による個別浄化を行なっている住民にも一定の割合での負担を求めるのは整合性のあることだと思います。これを、一般財源に頼れば、利用料金を払っている住民は二度負担(一度は利用料として、二度目は一般財源からの拠出により)することになり、かえって負担が不公正となる恐れがあります。

下の表をみてください。整備下水道管への接続率の低さは、この事業の経営に重大な圧迫をもたらしています。水洗化率(整備区域の人口に対する下水道接続人口の割合)は44.6%で、下水道施設(下水道線路)の遊休化率は5割を超えています。喩えていえば、電信柱を建て、電線を引いて電気を通したけれども、その区域の住民の半数以上は依然としてランプで暮らしているようなものだといえます。これは、事業の効率化云々以前の問題です。つまり事業として成り立っていないといっても過言ではない状態のように思えます。

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上記文書(「美浦村公共下水道事業経営戦略」)中でも、経営課題解決の基本方針として「水洗化率向上を推進するため、未接続家庭への啓発や普及率向上を図るとともに、適切な受益者負担により経営の安定化に努める」と謳っていますが、これが本気で実行されているとは、一住民の実感としてはとても感じられません。これは、もっと切実な問題なのです。これは農業集落排水事業の項でも述べましたが、下水道接続への住民のインセンティブが働いていない状態です。何しろ、下水道整備以前に高いお金を出して合併浄化槽にして、地域の環境の向上に貢献したつもりでいたのに、今度はそれをおジャンにして、新しい下水管へ切り替えろと言っているようなもので、実は住民にとってはとても乱暴な物言いなのです。

実は、下水道普及率100%を目指すことと、周辺道路の構造の改修とは一体のものです。道路排水の方式として側溝をやめ、表面排水施設、例えばL字側溝に改良して道路幅員の拡幅化、道路往来の危険性除去等の方針変更を下水道切り替えへのインセンティブとして住民に訴えていくことは有効な施策であると思います。浄化槽をそのまま使うか(下水道使用料は低料金に設定)、下水道管への直接放流かは住民の選択に任せ、浄化槽の耐用年数(30年以上、その他機器類7〜15年)を考慮して、浄化槽の更新時に下水道への接続へ切り替えてもらうよう勧誘・誘導するのも施策の一環として考慮されるべきではないでしょうか。負担の公平化、適正化の観点からも有効な施策が期待されます。

● 介護保険特別会計

次は介護保険特別会計をみていきます。まず、歳入から。

次に歳出。

歳出の9割は保険給付金で9億5千万円、歳入の26%が支払基金交付金2億7千3百万円、ついで22%が保険料で2億3千万円、次に国庫支出金20%の2億1千7百万円となっています。

前年度に比較すると、要介護認定者は増加し、要介護度は重度化しています。そのため保険給付費は5千万円の増加となっています。一方で、保険料の総額も被保険者数の増加に伴い2千1百万円増加して、2億3千万円となっています。

● 後期高齢者医療特別会計

後期高齢者医療制度は平成20年(2008年)4月から老人保険制度を廃止して新たに開始されました。内容は、都道府県ごとに設置される「後期高齢者医療広域連合」と市町村が協力して運営されるもので、被保険者は75歳以上もしくは65歳以上75歳未満で一定の障害狩り広域連合の認定を受けたものが加入することとされました。

美浦村の後期高齢者医療被保険者数は、平成29年4月現在2,100人を見込んでいます。保険料の算定は「所得割」と「均等割」の2方式を採用しています。

予算総額は1億3千万円です。

● 水道事業会計

次に水道事業会計をみます。まず(業務の予定量)ですが、

(1) 給水戸数 6,106戸

 (2) 年間総給水量 2,188,533m³ 

(3) 一日平均給水量 5,996m³ 

となっています。美浦村の世帯数は6,689世帯(平成29年9月現在)なので、予定給水戸数6,106戸の全戸数に対する接続割合(接続率)は91.3%になります。水源については、原水は霞ヶ浦で、県南広域水道事務所阿見浄水場(稲敷郡阿見町追原2586)よりφ350mmの送水管により浄水を受けています。村内の送水管路延長は5.4kmです。

美浦村では、水道水の原水を茨城県企業局の県南広域水道用水供給事業からすべての水道水を受水しているということで、美浦村の水は美味しい、という独特の美浦ブランドを打ち出すことにはなかなかなりそうもありません。

 次に予算関係を見ていきましょう。収益的収入および支出の予定額です。

営業利益は

売上総利益 - 販売費及び一般管理費 = 営業利益

ですので、545,253(千円)−542,710(千円)=2,543(千円)

で利益率は0.47%。また経常利益は

営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益

ですので、予備費を除いて、

2,543(千円)+36,893(千円)−36,336(千円)=3,100(千円)

で0.57%を見込んでいるということになります。さらに資本的収支を見ると

資本的収入2,063(千円)−資本的支出80,484(千円)=▲78,421(千円)の赤字ですので、収益的収支のうち3,000(千円)の利益と減価償却費133,010(千円)をこれに充てると

3,000(千円)+133,010(千円)−78,421(千円)=57,589(千円)となって、なんとか資金不足は免れるようです。

企業債残高が9億円以上も残っていることは、水道事業の財政状態を圧迫するものとなっています。独立採算制を基本とする公営企業のあり方そのものが問われています。

● 電気事業会計

次に電気事業会計についてみてみます。

太陽光電気事業の最大の問題点は再エネ固定価格買取制度の終了問題です。つまり2019年以降、固定価格での買い取り義務が電力会社からなくなると、売電価格の大幅な下落が予想されます。いわゆる「太陽光発電の2019年問題」と言われるものです。

 ただし太陽光以外、そして10kw以上の「産業用」太陽光発電は買取期間が20年ないし15年なので、2019年問題の対象にはなりません。なので、美浦村が運営する電気事業に関しては、問題は2030年(13年後)あるいは2035年後にはどうするのかということになります。現在は高収益で事業が推移していますので、今から基金を積み上げてその時の対策に備えておく必要があるかもしれません。

10kw未満「住宅用」太陽光発電を行なっている一般の方でご興味のある方は以下の記事を参考にしてください。

太陽光発電の売電ができなくなる? 「太陽光発電の2019年問題」とは(西条誠、エネルギー・経済ジャーナリスト)

3 決算書

「市町村では、100ページを超える決算書を議会の決算委員会に提出して審議を受ける。」P108

美浦村では現在平成28年度の決算書が公開されています。それは462ページに及ぶ膨大な資料です。美浦村では毎年11月号の「広報みほ」に村民向けの簡略化した決算書概要版が公表されます。決算委員会は6月に開かれ原案通り承認されました。

平成22年度(平成21年度決算分)までは「財政状況等一覧表」「財政比較分析表」「歳出比較分析表」「決算状況調書(決算カード)」「健全化判断比率・資金不足比率」等の文書が作成されていましたが、平成22年3月の総務省報告書「地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会報告書」に基づいて、平成23年度(22年度決算分)からは10ページの「財政状況資料集」と名称変更されて、様々なデータを一括して公表することになりました。ただし「決算状況調書(決算カード)」は平成23年度以降も継続して公表されることとなっています。

 1 財政状況資料集とは

財政状況資料集は現在(平成29年9月28日)は平成27年度分以前のものが、美浦村においては表計算ソフトExcelで作成、村のホームページ上でダウンロード公開されている。ここでは美浦村の資料に基づいて見ていくことにしましょう。

総括表は財政状況に関する項目を集約的に表示されていて、地方公共団体の全体像を把握する上で大変便利な資料となっています。上段左には、市町村名、人口、面積、世帯数、産業構造、職員の状況等の基礎的情報が掲載され、上段右側では、当該年度と前年度の収支状況、各種財政指標等が示されており、下段では、各会計名、関係する一部事務組合、公社・第三セクター等の団体名などが記載されています。各名称の前に付された( )内の数字は、2枚目以降のタブの各ブックの示されている数字と合致しています。

普通会計の状況タブ——普通会計の歳入・歳出の状況を把握するための資料になっています。歳入については区分を、歳出については目的別・性質別の状況が一覧できるようになっています。また、他会計への繰出金や国民健康保険事業会計のあらましも把握できるようになっています。ここで注意しておくことは、普通会計という会計区分のことです。これはすでに「第2章の5.一般会計と特別会計」の項で述べたことですが、法令で特別会計の設置が義務付けられた事業以外は、どの事業を一般会計で処理し、あるいは特別会計を設置するかは、すべて公共団体の裁量の範囲であるため、公共団体間で一般会計同士を比較する意味がなくなるため、公営事業会計以外の特別会計と一般会計を合算したものを「普通会計」と呼ぶことにしているのです。よって、「普通会計」という概念が地方財政統計上、統一的に用いられているのです。一般的には「地方財政」と言った場合、この普通会計のことを指しています。

各会計、関係団体の財政状況および健全化判断比率——当該地方公共団体に属する各会計、関係団体別に、上段に財政状況一覧を、下段に実質公債費比率、将来負担比率等の健全化判断比率4指標とその構成要素を表示しています。

 2 総括表、普通会計など、財政状況の見方の説明

① 一般会計および特別会計の財政状況(主として普通会計に係るもの)

 普通会計の数値は総務省が実施している「地方財政状況調査」の数値が記入されているので、当該調査における数値の報告方法や純計処理等のため、一般会計および各特別会計の合計が「普通会計」欄の数値とは、一致しない場合があります。

② 公営企業会計等の特別会計の財政状況(公営企業を含む公営事業会計に係るもの)

公営企業に属する会計の区分および各項目の数値は、総務省が実施している「地方公営企業決算状況調査」の対象事業区分および数値が記入されています。地方公営企業法を適用している公営企業に係るものは、備考欄に「法適用企業」と記入し、法適用企業に係るもの以外のものは、「総収益」、「総費用」、「純損益」の欄に、それぞれ「歳入」、「歳出」、「実質収支」と注記され、該当する数値が記入されています。

③ 関係する一部事務組合等の財政状況

本表は、当該地方団体が加入している、すべての一部事務組合及び広域連合ごとの決算書に基づく数値が記入されています。

④ 第三セクター等の経営状況および地方公共団体の財政的支援状況

(省略)

 3 総括表、普通会計など、財政状況の用語の説明

○ 一般会計(省略)

○ 特別会計(省略)

○ 普通会計(省略)

○ 実質収支——歳入歳出差引額(形式収支)−翌年度に繰り越すべき財源

○ 標準税収入額——地方交付税法の規定に基づき算定された基準財政収入額の基準税額に、100/75を乗じて求めた数。地方公共団体の標準的な税収入額を表しています。

○ 標準財政規模——標準税収入額+普通交付税

○ 実質収支比率——(実質収支額/標準財政規模)×100=((歳入歳出差引額(形式収支)−翌年度に繰り越すべき財源)/(標準税収入額+普通交付税))×100

一般的に3~5%が適正な範囲とされています。実質収支比率が3%を下回った場合、剰余金が少なく、翌年度の財政運営において不測の事態が生じた場合に弾力的な対応ができない状況が想定されます。

一方、5%を超えるような状況は、剰余金が多額に発生したことで、収入が当初より相当上回ったか、歳出の不用額が多額に生じた状況を示しており、年度の途中でこうした実態を把握していれば補正予算を編成して、その財源を有効に活用できたにも拘わらず、その対応が十分でなかった、つまり、適切な財政運営ではなかったといえます。地方財政分析の第1歩はこの比率を見ることから始まります。

ちなみに平成27年度の美浦村の実質収支比率は「7.3」でした。

○ 経常収支比率——[経常経費充当一般財源(人件費・扶助費・公債費党に充当した一般財源)]/[経常一般財源(地方税+普通交付税等)+減税補てん債+臨時財政対策債]×100

一般に本指標が低いほど、財政の弾力性が高く、逆に高いほど財政が硬直化していることを示します。
・100%になると、完全に財政が硬直化している・100%を超えると、恒常的に必要な経費が収入で賄えていない状態になっている
※少なくとも75%程度に収まることが妥当であるが、大部分の都道府県が80%を超えて要注意の状態にあるようです。ちなみに平成27年度の美浦村の経常収支比率は「88.5」でした。

○ 実質公債費負担比率——[(公債費充当一般財源+公営企業債等の償還財源に充てた繰出金)−普通交付税措置のある公債費(事業費補正)等)]/(標準財政規模+臨時財政対策債発行可能額−普通交付税措置のある公債費(事業費補正)等)×100

普通交付税措置のある公債費(事業費補正)等の額が小さくなればなるほど、実質公債費比率は大きくなります。平成22年度からは地方分権改革推進委員会第4次勧告に基づいて「地方債の元利償還金に対する交付税措置 (いわゆる事業費補正)の見直し」が行われ、「可能な限り縮減する方向」で見直しが行われています。したがって、(公債費充当一般財源+公営企業債等の償還財源に充てた繰出金)が大きくなればなるほど、また、税収+臨時財政対策債が小さくなればなるほど、この実質公債費比率は大きくなっていきます。当たり前のことですが、借金の返済額を大きくなればなるほど、また、収入が減れば減るほど、実質公債費比率の数値は増加します。

「実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものです。起債に協議を要する団体と許可を要する団体の判定に用いられるものであり、この比率が18%以上の団体は起債に当たり許可が必要になり、25%以上の団体については、一定の地方債の起債が制限され、35%以上の団体については、さらにその度合いが高まります。また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律において、健全化判断比率の一つとして位置付けられており、早期健全化基準は25%、財政再生基準は35%とされています。」(総務省ホームページより)

美浦村の平成27年度決算状況調査表によりますと、この数値は「4.5」となっています。

○ 基準財政収入額——[法定普通税+税交付金(自動車取得税交付金等)+地方特例交付金]×(75/100)+地方譲与税+交通安全対策特別交付金

○ 基準財政需要額——単位費用×測定単位×補正係数

単位費用とは、測定単位(例:村道1メートル)当たりの費用をいい、測定単位とは、その地方公共団体における状況(例:村道総延長50キロメートル)をいう。補正係数は、寒冷・降雪の状況等に応じた係数(例:降雪地帯は道路に降雪対策が必要なので余計に経費が必要になる等)

○ 基準財政収入額——標準的な税収入額(標準税率によって算定された地方公共団体の法定普通税収見込額×75%)+特例交付金の一定割合+地方譲与税

○ 財政力指数——基準財政収入額/基準財政需要額

3年間の平均値でその団体の財政力を判断する理論上の尺度としています。この数値が1を上回り大きくなるほど一般財源に余裕がると言え、1を下回ると一般財源不足の状態と言えます。

美浦村の平成27年度の財政力指数は「0.777」となっています。ちなみに、平成17年度以前は、この財政力指数は「1」を超えていました。この時期の美浦村の財政構造を研究する必要がありそうですね。

○ 地方債現在高——借金の現在高

○ 臨時財政対策債——国の地方交付税特別会計の財源が不足し、地方交付税として交付するべき財源が不足した場合に、地方交付税の交付額を減らして、その穴埋めとして、該当する地方公共団体自らに地方債を発行させる制度。

臨財債については、

「形式的には、その自治体が地方債を発行する形式をとるが、償還に要する費用は後年度の地方交付税で措置されるため、実質的には地方交付税の代替財源とみて差し支えない」

という意見がある一方で、

確かに、臨時財政対策債の元利償還金はこれまでのところ地方交付税で実額が確保されています。その意味で言えば、当面の財政運営としては地方交付税と同じように財源確保はされていると言えるのです。しかし、いくら国が作った制度とはいえ地方の膨大な借金は基本的には地方が返済しなければなりません。基本的な財源保障は国が行うのは制度上当然のことではありますが、地方財政の枠組みにある以上、その一義的な責任は地方が取らざるを得ません。2013年に地方公務員の人件費削減を強制する地方交付税減額という卑劣な手段を平気で行うというやり方を体験すると、国に対して全面的な信用を置くことは極めて危険であると言わざるをえません。国の考え方に地方が従わなければ、交付税を減額するなどの脅しが今後100%ないとは言い切れないのです。この臨時財政対策債は、懐に爆弾を抱えていることに等しいのではないでしょうか。今後、国の財政コントロールのもとに地方が国に支配される構図が強まることを懸念します。そのためにも、地方交付税は地方固有の財源であることを再確認し、国の責任において地方交付税の財源を確保することを強く求めていく必要があります。国は国家財政の半分近くを借金で賄うという方法を平然と続けています。地方が、国と同じように多額の借金をするような財政運営を行うと、たちまち財政破たんをしてしまうことは火を見るより明らかなことです。」(「臨時財政対策債は廃止すべき」自治労広島県本部/広島市議会議員 若林 新三)

そもそも地方交付税の財源不足を補うために設けられた制度である臨時財政対策債です。本来ならば、国がキャッシュで地方に配布すべき財源であるにもかかわらず、地方債を起債させることによってそれに充てるということそのものに疑問があります。子供の教育費を賄うために、子供にクレジットカードを預ける親などいるはずがありません。また、そのような親は将来カードキャッシング地獄で苦しむのは目に見えているとは言えないでしょうか。この問題は国の財政運営に関わる問題なので、地方が簡単に解決することはできないでしょうが、税源を国から地方へ移譲することが正しいやり方のように思えます。例えば、所得税と住民税の比率を変えることで、国民の負担を増やさずに地方に財源を持ってくること等の施策は、国が余計な欲を捨てればただちに実行できる施策ではないでしょうか。

○ 公営事業会計——地方公共団体が行う公営企業、国民健康保険事業、介護保険事業、収益事業および交通災害共済事業に係る会計の総称です。

○ 公営企業会計——当該事業に係る経費を主に使用料等の収入で賄っている、住民サービスを提供するための特別会計のことです。これには、地方公営企業法の全部または一部を適用している「法適用企業」「法一部適用企業」と、それ以外の「法非適用事業」とに分かれます。

法適用企業は、企業会計方式(複式簿記)で経理が行われ、法非適用企業では官庁会計方式(単式簿記)で会計処理が行われます。

○ 一部事務組合——地方公共団体が、事務の一部を共同して処理するために設立する団体のこと。

○ 広域連合——地方公共団体が、広域にわたり処理することが適切であると認めるものに関して、広域にわたる総合的な計画を策定し、処理するために設立する団体のこと。

○ 負担金割合——(当該団体が構成団体として支出した分担金および負担金の総額)/(一部事務組合等が各種構成団体より歳入した分担金および負担金の総額)

○ 経常損益——営業収益および営業外収益から、営業費用および営業外費用を控除したもの。本業以外の損益も含めた経営活動による儲けが黒字が赤字かを示す。

 4 市町村財政比較分析表(普通会計決算)

当該地方公共団体の普通会計決算の状況について、類似団体と比較することで相対的に把握し、その要因を分析するための様式。7種の財政指標について、過去5年文を類似団体の平均値と比較する形式で折れ線グラフを表示している。グラフの右側には、その団体による要因分析等を記載する。

 5 市町村経常経費分析表(普通会計決算)

経常収支比率および経常経費を性質別に区分して類似団体と比較することで、その地方公共団体の経常経費の状況を相対的に把握し、その要因を分析するための様式。

 6 市町村経常経費分析表の見方の説明

① 経常収支比率——本表の中で特に重要なものは経常収支比率である。

② 人件費および人件費に準ずる費用——性質別分類上の人件費だけでなく、物件費に含まれる臨時職員の賃金や、補助費に含まれる公営企業(法適)等に対する繰出金のうち人件費相当分など、人件費に準ずる費用も含めて算出したもの。

③ 公債費および公債費に準ずる費用——実質公債費比率の考え方に従い、性質別分類上の公債費に加え、公債費に準ずる経費も含めて算出したもの。

④ 人口1,000人(都道府県は100,000人)当たりの職員数

⑤ ラスパイレス指数——国家公務員行政職俸給表の適用者の俸給月額を100とした場合の地方公務員一般行政職の給与水準を表したもの。

⑥ 実質公債費比率——本表の中で、経常収支比率に並んで特に重要のものである。毎年度経常的に収入される財源のうち、公債費や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額(普通交付税が措置されるものを除く)に充当されたものの占める割合の過去3か年度の平均値である。

⑦ 普通建設事業費——普通建設事業費は、公共事業費の削減や、各地方公共団体による歳出削減努力等により、全体ではここ数年減少が続いているが、歳出に占める割合が依然として大きいことから、経常収支比率に含まれる経常的経費に加え、特に分析を行うもの。なお、人口規模や財政規模が小さな地方公共団体では、例えば小中学校の建設などを行なった場合に、人口一人当たりの決算額が類似団体平均と比べて著しく高くなるようなこともあるが、それをもって直ちに財政構造上問題であることにはならないので、留意が必要である。

 7 実質収支比率等に係る経年分析

この表は実質収支比率の経年変化を見ている。この比率が3〜5%の黒字であれば財政運営は適正とされる。

実質収支=歳入総額−歳出総額−翌年度へ繰り越すべき財源(継続費、繰越明許費、債務負担行為、事故繰越)

実質収支比率=(実質収支/標準財政規模)×100

短期を見据えた財政分析において最も大事なものは実質収支比率である。

 8 健全化判断比率

平成18年(2006年)に北海道夕張市の財政が破綻したことをきっかけに、平成19年(2007年)に「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が公布され、財政健全化判断比率が提示された。「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」「将来負担比率」の4つと公営企業会計の「資金不足比率」の合計5つの比率を、毎年度公表することを義務付けている。

 9 健全化判断比率の見方の説明

① 実質赤字比率

実質赤字比率=一般会計の実質赤字額/標準財政規模

② 連結実質赤字比率

連結実質赤字比率=連結実質赤字額/標準財政規模

③ 実質公債費比率

1年間の収入に対する借金返済の負担割合

④ 将来負担比率

地方公共団体の一般会計等の借入金(地方債)や、将来支払う可能性のある負担等の現時点での残高を指標化し、将来財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標です。

将来負担額=地方債現在高+債務負担行為に基づく支出予定額+公営企業債等繰入見込額+退職手当負担見込額+設立法人(公社・第三セクター)の負債額等負担見込額

将来負担比率=(将来負担額−充当可能基金額−特定財源見込額−地方債現在高等に係る基準財政需要額参入額)/(標準財政規模−元利償還金・純元利償還金に係る基準財政需要額算入額)

⑤ 資金不足比率

資金不足比率は、当該地方公共団体の公営企業会計ごとの資金の不足額の、事業の規模に対する比率です。公営企業は独立採算制をとっているため、公営企業の資金不足を、公営企業の事業規模である料金収入の規模と比較して指標化し、経営状態の度合いを示しています。公営企業会計の赤字が大きくなって一般会計に影響を及ぼさないよう、ここの公営企業会計を事前にチェックするのが、この指標です。

4 地方公共団体の財務書類

いかに説明する指標は、総務省が主導している、「地方公共団体も民間企業と同じように、発生主義の活用および複式簿記の考え方(企業会計的手法)の導入を図る」という公会計の整備に則ったものです。それを「新地方公会計制度」と言います。

総務省では平成20年度決算から、各地方公共団体の対して単体および関係する団体の決算を連結した財務書類4表(貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書)を整備し、公表することを求めました。

 1 貸借対照表

資産(土地・建物・現金等)と負債(財源)・純資産を対照表示した、いわゆるBS(バランスシート)である。

 2 行政コスト計算書

この1年間の行政活動のうち福祉活動やごみの収集といった、資産形成を伴わない経常的な行政サービスの費用(コスト)と、その行政サービスの直接の対価として得られた財源(受益者負担等)を対比させた財務書類である。従来の官公庁の会計では把握できなかった減価償却費など非現金コストについても計上しています。

 3 純資産変動計算書

純資産変動計算書は、貸借対照表の純資産、つまり資産から負債を差し引いたその差額が、この1年間でどのように増減したかを示す財務書類で、これまでの世代が負担してきた部分の増減に加え、それがどのような財源や要因で増減したのかを表しています。

 4 資金収支計算書

資金収支計算書は、この1年間の資金の流れを示す財務書類で、その性質に応じて収支を区分(経常的収支、公共資産整備収支、投資・財務的収支に大別)しているので、地方団体がどのような活動に対して資金が必要なのかを表しています。連結ベースでは、財政調整基金、減債基金及び歳計現金までが資金としての対象となっています。

 5 基準モデル・総務省方式改訂モデルの違い

基準モデルでは、作成部門の負担が大きいが正確な計算結果が期待できます。

その一方、総務省方式改訂モデルでは作成部門の作業量は基準モデルに比較して少ないが、詳細なコスト把握はできません。

いずれにしても、「新地方公会計制度」で要求されている連結決算財務書類4表は、整備が開始されたばかりのもで、これを見て地方公共団体の財政状況を直ちに判定することは困難です。今後のデータの蓄積を待ちたいところです。

「平成29年度当初予算(案)説明書」PDF

 以上で「第8章 実際に予算書、決算書を読む」は終わりです。

次回は、「第9章 財政診断の基礎的指標」を勉強します。