『実践 自治体財政の経済分析』(連載6)

今回はテキストの「第6章 市町村財源<3>——地方債」について学びます。

学習のポイント:近年、中央、地方とも財政状況が悪化するにつれて地方債の発行額が増加し、財政を圧迫するようになってきており、地方債に関する知識を持つことは重要になってきている。

1 地方債とは

 地方公共団体が発行する公債である。会計年度内において償還されるものは「一時借入金」と呼ばれ、地方債とは区別される。

2 起債の場合

地方債を募集する(起債する)場合は、予算で「地方債の起債の目的」「限度額」「起債の方法」「利率および償還の方法」を定めなければならない。

地方債の四つの機能

① 財政上の収入と支出との年度間調整

② 住民負担の世代間の公平を確保するための調整

③ 一般財源の補完

④ 国の経済政策との調整

以下に示すのは地方債依存度の推移を表すグラフである。

出典:総務省トップ > 政策 > 白書 > 平成28年版地方財政白書(表紙) > 第1部 > 3 地方財源の状況

3 残高

以下はテキストから離れて、総務省のホームページを参照する。

(参照始め)
実質公債費比率及び公債費負担比率

地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。

実質公債費比率=

(実質的な公債費相当額ー(基準財政需要額に算入された公債費))

          ÷

標準財政規模ー(基準財政需要額に算入された公債費)

なお、実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律第94号。以下「地方公共団体財政健全化法」という。)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。

平成26年度の実質公債費比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.5ポイント低下の10.4%となっている。

公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

平成26年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.3ポイント低下の18.2%となっている。

近年の実質公債費比率及び公債費負担比率の推移は、第19図のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

平成26年度末における地方債現在高は145兆9,841億円で、前年度末と比べると0.0%増(前年度末0.8%増)となっている。また、平成26年度末における臨時財政対策債を除いた地方債現在高は97兆5,001億円で、前年度末と比べると3.4%減(前年度末3.0%減)となっている。

地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

平成2年度(1990年)より急激に増加し、平成16年(2004年度)頃から一般財源総額に対して2.5倍強で推移していることがわかる。

(参照おわり)

総務省のホームページからは少し離れるが、これは1989年(平成元年)から1992年(平成4年)にかけて日米構造協議の中で大店法改正、公共投資増額で内需拡大しアメリカの貿易赤字解消、商慣習などの改革を求められてきた時期と重なっている。すなわち、地方債の急激な増加と日米構造協議または年次改革要望書に示されてアメリカの対日要求とはリンクしていると考えられる。またこの時期はバブル経済の崩壊と時を同じくし、景気刺激のための財政出動が行われた時期でもあった。地方債の急激な増加、国の原資が不足した分をさらに臨時財政対策債という仕組みで地方に起債を促したのだった。平成16年(2004年)頃より地方の債務残高はほぼ200兆円で推移している。

それではまた総務省のホームページの記述に戻る。

(参照始め)

地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補填、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、それぞれの割合は平成4年度末以降急増し、また、13年度からの臨時財政対策債の発行等があったことにより、依然として高い水準で推移している。平成26年度末では歳入総額の1.43倍、一般財源総額の2.55倍となっている。

近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。

地方債現在高の目的別構成比は、臨時財政対策債(33.2%)、一般単独事業債(26.4%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、一般単独事業債が1.0ポイント低下する一方、臨時財政対策債が2.4ポイント上昇しており、平成13年度以降、臨時財政対策債の構成比が上昇の傾向にある。地方債現在高の借入先別の構成比は、市場公募債(31.3%)、市中銀行資金(25.2%)、政府資金(23.4%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が0.5ポイント低下する一方、市場公募債は0.4ポイント上昇している。

地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては89兆5,849億円、市町村においては56兆3,992億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.2%減(前年度末1.0%増)、0.4%増(同0.5%増)となっている。また、臨時財政対策債を除いた地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては59兆8,431億円、市町村においては37兆6,570億円で、前年度末と比べるとそれぞれ4.0%減(前年度末3.2%減)、2.5%減(同2.8%減)となっている。

なお、地方財政状況調査においては、満期一括償還地方債の元金償還に充てるための減債基金への積立額は歳出の公債費に計上するとともに、地方債現在高から当該積立額相当分を控除する扱いとしているが、控除しない場合における地方債現在高は154兆7,904億円となっている。

(参照おわり)

4 発行の目的および特別な目的の地方債

地方債の発行には、当然ながら目的によって制限が加えられる。

① 交通事業、ガス事業、水道事業に要する経費の財源とする場合

② 出資金および貸付金の財源とする場合

③ 地方債の借換えのために要する財源とする場合

④ 災害応急事業費、災害復旧事業費、災害援助事業費の財源とする場合

⑤ 学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設、または公用施設の建設事業費、および公共用もしくは公用に供する土地、またはその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費の財源とする場合

以下は特例的な目的として

① 辺地債

② 過疎対策事業費

③ 減税補填費

④ 臨時財政対策債

⑤ 退職手当債

5 発行の方法

起債しようとする場合、地方公共団体は総務大臣または都道府県知事との「協議」が必要とされている。また当該地方公共団体の財政悪化を示す指標が基準値を超えた場合には「許可」を必要とするなどの起債制限が設けられている。

 ⑴ 地方債の協議等(地方財政法5条の⑶

地方公共団体は、地方債を起こし、または起債の方法、利率もしくは償還の方法を変更しようとする場合には、原則として総務大臣または都道府県知事に協議しなければならない。

 ⑵ 地方債についての関与の特例(地方財政法5条の4)

地方債の元利償還金の支払いを遅延している地方公共団体等は、地方債を起こし、または起債の方法、利率もしくは償還の方法を変更しようとする場合は、総務大臣または都道府県知事の許可を受けなければならない。

 ⑶ 民間等資金による地方債の発行方法

  A  公債地方債

       A-1 市場公募地方債 

    銀行や証券会社などの金融機関によって組織されたシンジケート団が引き受ける。利率は市場金利にほぼ連動している。市場公募債の比率は上昇傾向にあり、格付けや利回りの差が見られる。市場公募債(31.3%)、市中銀行資金(25.2%)、政府資金(23.4%)の順となっている。

       A-2 住民参加型公募地方債

    形態として、証券発行、満期一括償還を原則とし地元金融機関が一旦引き受け、その後応募者に販売されている。

      B 銀行等引受債

    地方公共団体の指定金融機関等の地元金融機関を通じて資金調達するものであり、「銀行等引受債」と呼ばれる。利率は発行時の市場長期レートに準じて決定されることが多く、金利入札形式をとることが多くなっている。なお、市場にはほとんど流通しない。

6 地方債の信用力と暗黙の政府保証

 ⑴ 地方公共団体間の信用力格差

 総務省は、3,000を超す地方公共団体が発行する地方債の信用力に、格差はないと繰り返し説明してきた。これは地方債を取り巻く諸制度によって、「暗黙の政府保証」が存在し、地方債にデフォルトがないからだと主張されている。

 しかし、(株)格付投資情報センター(R&I)は日本の地方債には信用力において格差があると判断しており、市場がこのように考える中で、団体間に信用力格差がないと考えている発行側と、格差が存在すると考えている投資家側との認識の差は、今後の地方債市場の育成に大きな障害となると考えられる。

 ⑵ 「暗黙の政府保証」

① 地方債の元利償還に対する国の財源保障

② 起債許可制度——国が一定の関与をしている

③ 地方財政再建制度——「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」制度は地方公共団体の債務を示した指標の公表と、財政全体のディスクロージャーを目途としている。あらかじめ決められた指標が悪化した地方団体は、財政の早期健全化が行われるとともに、財政再生基準以上となった地方公共団体は、地方債の償還を含めた国等の関与による確実な財政の再生が行われることになる。これも「暗黙の政府保証」の一つとされている。

 ⑶ 地方債に関する最近の金融界の考え方

 政府が地方公共団体の財政に関与していく基本線が確認されたことから、信用力は保証されたと言える。さらに、一定の起債の制限措置があり、むやみな拡大は防止できることから、発行残高の拡大が止まらない国債よりかえって信用できるとの意見もある。

しかし、最近以下を根拠として金融機関から地方公共団体の会計内容の開示について疑問が呈せられている。格付け会社が、地方債間に信用力格差が存在すると主張する根拠は以下の通りである。

① 地方債の元利償還は、外債以外に明示的な政府保証がないこと。

② 地方交付税制度の限界があること(国の借金が増えて「暗黙の政府保証」がいつまで続くか不明であること。

③ 「地方財政計画」の限界があること(地方財政計画の対象は普通会計であり、公営企業会計を含む連結ベースでは必ずしも資金手当てができていない)。

④ 許可(同意)制が廃止決定されたこと(起債許可制が平成18年に廃止され、事前協議制に移行した。許可および事前協議自身も、地方公共団体の将来の債務返済能力を保証するものではない。さらに、地方公共団体が償還に窮した場合、許可した側に道義的責任はあるにせよ、国の資金をつぎ込むかどうかは「国民感情」しだいという側面がある)。

⑤ 自主再建で財政が悪化する危険があること(再建団体は強制的に指定できるわけではない)。

⑥ 政府の管理能力が弱体化していること(国は税源移譲に消極的であること)。

⑦ 企業会計や外郭団体のリスクがあること(巨額の債務保障や損失補填をしている事例がある。土地開発公社など、一般会計で引き取らなければならない多くの債務が存在する)。

⑧ 民間資金への依存度が高いこと(評判、市場の信任が大事であり、仮に民間金融機関がお金を貸してくれなくなった場合、すべて財政投融資など政府系の資金で対応できるかは不透明)。 

以上で「第6章 市町村財源<3>——地方債」は終わりです。

次回は、「第7章 決算書を読むための基礎知識」について勉強します。