『実践 自治体財政の経済分析』(連載5)

今回はテキストの「第5章 市町村財源<2>——交付税と補助金」について学びます。

学習のポイント:地方交付税の目的は地方公共団体の財源の偏在を調整し、全国どこに住んでいても、ほぼ同じ公共サービスを受けられることです。また一括して補助金と呼ばれるものにもさまざまな資金がり、この区別を学ぶことです。

1 地方交付税のしくみ

 ① 地方交付税の性格

  多額の税収が得られる地域においてその税収をその地域だけで使用してしまうと、税収のあまりない地域においては収入源が小さくなり、公共サービスの供給に不足する場合が発生する。これは国全体における公共サービスの偏りになり、不公平が生じる。この不公平をなくすために多額の税収が上がる地域から税収のあまりない地域に対して、国全体で税を再分配する手法が地方交付税である。

下に示したグラフは「総務省トップ > 政策 > 白書 > 平成28年版地方財政白書(表紙) > 第1部 > 2 地方財政の概況」からとってきたものです。

これをみるとわかるように地方交付税を除いた地方税のみの財源構成比はほぼ30%台半ばでしかないことがわかります。地区別でみると、東京都、大阪府、愛知県を除いた地方は財源の多くを地方交付金や地方債に依存している状況です。

地方交付税の原資は、国税のうちの下記のものとなっている。

  ● 所得税の32%

  ● 酒税の32%

  ● 法人税の32%

  ● 消費税の29.5%

  ● タバコ税の25%

なお平成13年度(2001年)から制度の見直しとして、臨時財政対策債制度が創設され、本来地方交付税として地方公共団体に交付される額の一部について、該当する地方公共団体自らに地方債を発行させて調達することも可能になった。臨時財政対策債の発行は、当初は3ヶ年(平成15年度)とされてきたが、その後、平成25年度(2013年)までとされ、さらに現在は平成28年度までとされている。

臨時財政対策債は、形式的には各地方公共団体の借入となるが、実質的には、元利償還金全額がこう年度の地方交付税に算入されるため、地方交付税の代替財源とみてよい。

「この臨時財政対策債制度は、国は1975年(昭和50年)度以降、地方財源の不足が予測される場合には、地方交付税特別会計で資金を借り入れ(すなわち国債を発行)して、地方交付税の交付総額が短期間に大きく変動しないようにする措置を講じてきた(これを指して補てんと称する)。しかし、この制度の下で交付税関連の国債残高は50兆円以上にも累増し、2001年(平成13年)度以降、根本的な見直しが行われることとなった。そこで、このような制度が生まれたのである。」(ウィキペディアを参照

 ② 地方交付税制度の概要

  地方交付税はこれまでみてきた通り財源の偏在を調整するための制度であり、国が地方公共団体に代わって、便宜的に一括徴収している地方税とみなされ、地方公共団体にとっては使途が限定されない一般財源とされている。地方交付税には以下のとおり普通交付税と特別交付税の2種類がある

  ⑴ 普通交付税

   交付税総額の94%が普通交付税として交付される。それぞれの地方公共団体の財源不足額の算定は、地方交付税法の規定に基づく一定の計算方法により行われるが、基準財政需要額に対して、基準財政収入額が超過しているとされた地方公共団体に対しては、地方交付税は交付されない。このような地方公共団体を「不交付団体」という。

平成28年度における不交付団体数は、都道府県で1、市町村で76となっており、道府県では東京都、市町村では主なところでは、北海道泊村、青森県六ケ所村、福島県広野町、大熊町、茨城県つくば市、東海村、栃木県上三川町、埼玉県和光市、千葉県市原市、君津市、東京都国立市、福井県高浜町、おおい町、静岡県御前崎市、愛知県豊田市、三重県四日市市、佐賀県玄海町などとなっている。

不交付団体となっている市町村の要因としては

原子力関連施設等が立地する町村(泊村、六ヶ所村、東海村、玄海町など)

大企業の事業所が立地する小規模自治体(豊田市、刈田町など)

観光地・保養地を擁する自治体(箱根町、軽井沢町など)

都心近郊の複合機能都市(立川市、武蔵野市など)

それらの複合要因によるもの

が考えられる。

  ⑵ 普通交付税の算定方法

  普通交付税額=基準財政需要額ー基準財政収入額

  基準財政需要額=単位費用×測定単位×補正係数

  ただし、単位費用=測定単位(例:市道1メートル)当たりの費用。

  測定単位=その地方公共団体における状況(例:市道総延長100キロメートル)

  補正係数=寒冷降雪の状況等に応じた係数

  いっぽう、

  基準財政収入額=標準的な税収入額+特例交付金の一定割合

  ただし、標準的な税収入額=標準税率によって算定された地方公共団体の法定普通税収等の見込み額に、基準税率(75%)を乗じた額。

  ⑶ 特別交付税

  交付税総額の6%が特別交付税として交付される。普通交付税で措置されない個別、緊急の財政需要(地震、台風等自然災害による被害など)に対する財源不足に見合いの額として算定され交付される。

  なお平成29年度の市町村別普通交付税決定額はインターネット上で見ることができますが、ダントツトップは北海道の7,420億円で、2位は福岡県の3,117億円、3位は兵庫県の2,720億円でした。

2 補助金

 補助金にも2種類あって、一つは国庫支出金、もう一つは都道府県支出金です。

これらの交付金は使い道がすべて決められており特定財源と呼ばれています。地方公共団体は国へ、使い道を説明して依頼し、許可されないと地方公共団体へは歳入されません。

 ① 国庫負担金

  地方公共団体が法令により実施しなければならないとされている「児童措置費」や「災害救助事業費国庫負担金」などに対して国が支出するものです。

 ② 国庫補助金

  国が特定の事務事業の実施を奨励するための

 「奨励的補助金」

  と、「埋蔵文化財発掘調査補助金」などのように地方に特別な理由がある時に交付される

 「財政援助補助金」

  があります。

 ③ 国庫委託金

  本来、国が直接実施すべき事務事業を、執行の便宜上地方公共団体に委託するなど目的で支出されるものです。たとえば、

  国民年金事務

  国会議員の選挙

  国勢調査

  生活保護費負担金

  児童手当及び子ども手当交付金

  普通建設事業費

  義務教育費負担金

  などです。

 ④ 都道府県支出金

以下は総務省トップ > 政策 > 白書 > 平成28年版地方財政白書(表紙) > 第1部 > 3 地方財源の状況からの引用です。

「都道府県支出金の決算額は3兆7,152億円で、前年度と比べると5.7%増(前年度2.3%増)となっている。

都道府県支出金の内訳をみると、国庫財源を伴うものが64.4%(前年度63.5%)、都道府県費のみのものが35.6%(同36.5%)となっている。

都道府県支出金の主な内訳を前年度と比べると、国庫財源を伴うものについては、障害者自立支援給付費等負担金が6.8%増(前年度8.5%増)、普通建設事業費支出金が12.1%増(同31.2%増)、子どものための金銭の給付交付金が1.2%減(同0.7%増)、児童保護費等負担金が9.4%増(同13.0%増)等となっており、また、都道府県費のみのものについては、普通建設事業費支出金が6.6%増(同1.3%減)、災害復旧事業費支出金が18.5%減(同38.5%増)となっている。」(引用おわり)

以上で「第5章 市町村財源<2>——交付税と補助金」は終わりです。

次回は、「第6章 市町村財源<3>——地方債」について勉強します。