『実践 自治体財政の経済分析』(連載2)

今回はテキストの「第2章 予算書を読むための基礎知識」について学びます。

学習のポイントを列挙してみます。

1 予算の仕組み

2 その種類

3 予算に盛り込むべき内容

以上のポイントを押さえた上で学習しましょう。

地方公共団体の予算書とは企業の予算書が利益の確保を前提としたものであるの対して、利益の追求というより政策の意思判断を示したものであり地方公共団体にとって拘束力が強いものであるという特徴があります。

本シリーズのテキストからちょっと離れてしまいますが、P.F.ドラッカーの有名な著書『マネジメント』の中に公的機関の予算について次のような記述を見つけることができます。

「公的機関は予算によって運営される。成果や業績に対して支払いを受ける のではない。」P F ドラッカー. マネジメント[エッセンシャル版] (Kindle の位置No.695-696). ダイヤモンド社. Kindle 版. 

地方公共団体の予算を考える場合に、企業と比較するとその特徴がより明確につかめる場合があります。利益や利潤を追求するためではない代わりに、その予算の執行による業績や成果が問われることが少なく、それに対する配慮があったとしても、それは次の予算の獲得のためであり、予算の獲得が目的とされてしまう場合が多いという、ドラッカーの指摘です。こうした特徴を持つ公的機関の予算に対する考え方にドラッカーは、公的機関に対しても単なる効率化や利益追求とは違った「起業家精神」「イノベーション」を求めているのです。

それでは本テキストに戻ります。

1 予算とはなにか

短いのでテキストより全文引用します。

「予算とは、一定期間における収入支出の見積りまたは計画である。予算の提案権は、首長に専属し、地方公共団体の議会の議員には認められていない。予算は議会の議決によって成立する。ただし、議会の議決を経ないで予算が成立する例外的取扱いとして、専決処分、原案執行、弾力条項がある。」(11ページ)

2 予算の仕組み

(1) 予算原則

   (予算の内容と形式に関する原則)

 ① 総計予算主義原則

一会計年度における一切の収入および支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。

(もしそうでなければ、住民も議会も監視することができなくなってしまうし、コントロールすることもできず、予算作成者の恣意的なお金の動きを許してしまうということにもなりかねませんね。)

 ② 単一予算主義原則

歳入と歳出を計上する予算は、一つでなければならないという原則で、予算を一覧的にチェックすることが容易になりますが、現実には「この原則は覆る」とテキストに書いてあります。うーむ、なんでしょうか?

(2) 予算の提案等

予算は年度開始前、都道府県および指定都市では30日前、その他の市および町村では20日前までに予算書と説明書を共に議会に提出し、議会の議決を経なければ成立しない。

地方公営企業については、公営企業の管理者が予算原案を作成し、地方公共団体の長がこれを調整して議会に提案する。

(3) 予算の編成と執行という予算過程に関する原則

 ① 予算事前議決の原則

予算は会計年度が始まるまでに、議会によって議決されなければならない。

 ② 会計年度独立の原則

それぞれの年度の歳出は、その年度の歳入でまかなわなければならない。これがいわゆる「単年度予算原則」といわれるものであり、誤解を恐れずに言えば、地方公共団体の長期計画の実現を阻害するものである。

 ③ 予算公開の原則

予算に関する情報は、住民に公開されなければならない。

 ④ 一般拒否権

議会において一般拒否権が行使されると、3分の2以上の多数を持って再議決しなければならない。

 ⑤ 特別拒否権

以下の場合に、首長は議会に再議に付さなければならない義務的再議である。

A 違法な議決

B 収入または支出が執行不可能な議決

C 義務費の削減または減額する議決

D 非常災害復旧費など削減または減額する議決が行われた場合

 ⑥ 首長は、原案執行権を持つ

上記Cの場合、再議決でもなお削減・議決した場合に、首長は義務費を原案通りに戻すことができる。

 ⑦ 首長は、専決処分権を持っている

議会が成立しなかったり、議会を招集する余裕がなかったり、議会が議決すべき事件を議決しなかったりという場合には、予算を専決処分とすることができる。

3 予算の種類

(1)当初予算:年度開始前に年間予算として編成し、成立した予算

(2)補正予算:当初予算成立後の事情により変更を加える予算

(3)暫定予算:当初予算が年度開始前に成立しない場合などの暫定的(つなぎの)予算

(4)骨格予算:人件費などの義務的経費を主体とする必要最小限のみを計上する予算。首長の改選直前に作成されることが多い。

(5)肉付予算:骨格予算の後に、政策的経費や新規事業を追加する補正予算

4 予算の内容

そもそも予算とは執行機関から決定機関への財政権限の許可要請書であり、ひとたび決定されれば、決定機関から執行機関への財政権限の付与書となる。

(1)歳入歳出予算:当該年度の収入予定と支出予定の総額を内容とともに示すもので、分類方法は、部・款・項・目・節・事項・細事項と分かれている。

(2)継続費:履行に数年度を要する事業について、経費総額および年度別の額をあらかじめ定め、議会の議決を得ておくものである。

(3)繰越明許費:年度内に支出の終わらない見込みの歳出予算について、あらかじめ、議会の議決を得て、翌年度に繰り越して使用するもの。たとえば公共土木事業などの経費で,天候その他の理由で工事が遅れ,年度内支出が不可能になるような場合である。

(4)債務負担行為:翌年度以降に地方公共団体の支出を義務付ける契約のように将来の支出を約束する行為。

(5)地方債:資金調達のための借り入れで、その返済期間が一年以上のもの。この場合、起債の目的、限度額、起債の方法、利率および償還の方法について定めておく必要がある。

(6)一時借入金:税収の確定時期と入金の時期がずれた際などに、当座の資金繰りのために金融機関から受ける短期の融資など、当該年度中に返済されるものをいう。

(7)歳出予算の各項の経費の金額の流用:予算分類のうち目・節・事項・細事項の間において予算の執行上必要がある場合に限り、予算で定めておくことで、流用することができる。

5 一般会計と特別会計

(1)一般会計:地方税、地方交付税、国庫支出金、地方債などを財源にして、総務費、民生費、衛生費、土木費、教育費などを支出している。こうした予算を言う。

(2)特別会計:公共団体が「特定の事業を行う場合」、あるいは「その他特定の歳入を持って特定の歳出にあて、一般の歳入歳出とは区分して経理する必要がある場合」に設置される会計。これは単一予算主義を放棄していることになり、公共団体における特別会計予算の設置のさいには、中央政府の介入がある。独立採算制とそうでないものがあり、独立採算制のものを次に挙げる公営企業会計と呼ぶ。

(3)公営企業会計:地方公営企業法のすべての適用を受けるものと、法一部適用企業と法非適用企業がある。地方公営企業法の適用される事業の特別会計にほ、企業会計方式が採用される。

(4)普通会計:公共団体間の比較を容易にするために、一般会計と下水道事業会計・市街地整備事業・母子福祉事業・住宅資金等貸付事業など一部の特別会計(公営事業会計以外の特別会計)を合算したもの。普通会計には独立採算制である公営事業会計は含まれない。一般的に地方財政をいう場合、この普通会計を基本としている。

6 予算の中身

(1)歳入歳出予算の区分:款・項・目・節・事項・細事項という分け方。

(2)予算の送付、報告および公表:首長は、予算の送付を受けた場合において、直ちにこれを都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に報告し、かつ、その要領を住民に公表しなければならない。

(3)地方債:地方債の起債の目的、限度額、起債の方法、利率および償還の方法は、予算でこれを定めなければならない。

(4)事故繰越し:異常気象、工事現場等での障害、住民・地権者等関係者との調整等、請負業者の倒産等、他事業・他機関との関係等により年度内に支出を終わらなかった経費で、翌年度に繰り越して使用するもの。 

(5)予算の執行:歳入予算の執行には、調定、納入の通知、収納の3段階がある。また、調定と納入の通知とを併せて、徴収ともいう。なお、歳入予算の執行は、予算に拘束されない(多く収入することが許される)点で、歳出予算と異なる。

(6)調定:納入すべき金額をその内容等について調査して決定すること。

(7)納入の通知:納入義務者に納入すべき金額等を通知すること。

(8)収納:地方公共団体の会計管理者が、納入義務者から金銭を受け取って、地方公共団体のものとすること。

7 予算の考え方

(1)支出負担行為:支出の原因となるべき契約その他の行為をいう。この行為が、法令に違反するようなもの、あるいは予算より多額のものであってはならない。

(2)支出命令:地方公共団体の長が、会計管理者に対し、支出を命令すること。会計管理者は当該支出負担行為について検査し確認した上でなければ、支出することができない。

(3)支出:会計管理者が、契約その他の行為の相手方に、金銭を手渡したり、小切手を交付したりすること。地方公共団体の長は、独立採算制の特別会計(公営企業会計)においては、増大した業務による増収益を当該業務の経費に充てることができる。しかも議会に対しては事後報告で良い。

国の予算編成は原則として各省庁では春から始まり、年末に終了する。都道府県と市町村の予算編成は秋から始まり、年度末近くに終了する。

市町村の財政において、歳出の分類は目的別歳出と性質的歳出がある。市町村内の予算編成過程においては目的別歳出として、その内容が決定される。この目的別歳出を、事後的に人件費その他にあらためて分類しなおしたものが性質別歳出である。最初から性質別歳出が決定されるわけではない。このことに注意する必要がある。

以上で「第2章 予算書を読むための基礎知識」は終わりです。

次回は、「第3章 市町村職員の給料」について勉強していこうと思っています。