公共貨幣で輝く未来(連載16)

第16回目は、「公共貨幣で輝く未来」を学びます。

教科書はNPO法人日本未来研究センター理事長山口薫さんの著作

『公共貨幣』「第11章 公共貨幣で輝く未来」です。

11・1 公共貨幣システムの構築

公共貨幣システムを日本で構築するためには、米国貨幣法の3条件を以下のようにシステム設計し直さなければならない。

① 公共貨幣の発行の権能は国会に属すとして、その権限を独立の公共貨幣委員会に移譲する。政府が現在55%所有の日本銀行を100%政府所有の公共貨幣庫とし、新たに設立する公共貨幣省に統合する。公共貨幣省は公共貨幣の製造、発行及び管理、運営の実務を行う。

② 銀行の信用創造を禁止し、要求払預金の公共貨幣庫での預金準備率を100%とする。但し、準備率は日銀における現行の約1%から段階的に引き上げてゆく。この過程で必要となる資金は、公共貨幣省が無利子、無期限で貸与する。また銀行保有の国債で充当できるとする。

③ 経済成長や社会福祉等に新たに必要な公共貨幣は政府が財政政策を通じて流通に投入し、過剰な公共貨幣は同様に引き上げる。

これら3条件をさらに詳しく考察してゆこう。

①であるが、これを実現させるためには、現行の「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」及び「日本銀行法」を統廃合して新たに「日本国公共貨幣法」を制定することが必要となる。詳細な提案は第Ⅲ部で行う。近代国家の法体系は三権分立の思想に立脚しており、その組織は立法、行政、司法から構成されているが、貨幣発行権はこれら三権から独立した第4の権力と位置付けられるべき性格を有している。そこでこれを現在の三権の組織の中に組み入れようとするとかなりの工夫が必要となる。

ここでは、貨幣発行の権限は国権の最高機関である国会に属し、独立の公共貨幣委員会にその権限を委譲すると考える。すなわち公共貨幣の流通量、新規発行量は公共貨幣委員会が決定する。

次に、日本銀行を解散して国家の金庫となる公共貨幣庫と組織替えして、新たに行政府に設立される公共貨幣省(財務省とは別組織)に統合する。公共貨幣省は公共貨幣の製造、発行及び管理、運営の実務を行う。すなわち、公共貨幣の供給サイドを調整する役割を果たす。一方財務省は、政府予算を作成し、予算の過不足から生じる公共貨幣の需要サイドを調整する役割を果たす。こうすることにより、安定的でバランスのとれた公共貨幣の流通が確保できるようになる。公共貨幣の十分な供給とその円滑な循環は、日本の健全な経済活動を支えるために不可欠な根幹的条件である。

②であるが、銀行預金を要求払預金と貯蓄預金に大別し、公共貨幣庫での100%預金準備が義務付けられるのは要求払預金のみとする。その結果「民法の消費寄託」は要求払預金には適用されなくなり、要求払預金の法的な所有者は銀行でなく預金社となり、要求払預金はその所有者があくまでも銀行という貸金庫にお金を預けておくのと同格の扱いとなる。

次に、銀行はどのようにして要求払預金の100%準備を確保するのかであるが、前章で述べたように当面は保有している国債で賄うことができるとし、それでも不足する場合にはその差額のみ公共貨幣庫が無利子で貸し付けるとする。銀行は要求払預金を安全に保管することが義務付けられるので、預金者にその保管経費を保管領としてサービスチャージできるようにする。現行のATMサービスの利用料金と同じような考え方である。この保管料は銀行が各行独自に決定できることになり、銀行の安定収入源となる。

一方貯蓄預金の取り扱いであるが、銀行は基本的には預金者から預かった預金を企業等に貸し出すという銀行本来の仲介業者の役割を果たすことになる。よって貯蓄預金の所有者は銀行となり、預金者は単に銀行に貯蓄預金を信託するという形になる。銀行はこうして確保した手元資金を投資活動に融資することで収益を稼ぎ、その一部を利子として預金者に還元することとする。万一、この投資融資に失敗して損失を計上すれば、預金者もその損失の一部を負担しなければならないとする。すなわち、従来の定期預金のように元本や利子があらかじめ保証されるということがなくなる。預金者がこのリスクを取りたくなければ、投資家として自らの責任で貯蓄預金を金融証券投資や不動産投資することになる。

③であるが、経済成長や社会福祉に追加的に必要となる流通貨幣量の額は、政府(財務省)が政府予算の一部として要求できるが、その最終決定権は公共貨幣委員会にあるとする。公共貨幣委員会にはこのような強力な権限が与えられることになるので、公共貨幣に関する情報は常に100%無条件に公開する義務を負うことになる。特にこの流通貨幣量の決定をサポートするマクロ経済モデルを公開し、国民が同時にシミュレーション確認できるようにする。万一、物価安定等公共貨幣法で定める職務遂行に失敗すれば、公共貨幣委員長は即時に辞任しなければならないとする。

以上、公共貨幣システム構築の3条件を導入すれば、現行の貨幣・金融制度がどのように変更を受けるようになるのかについて概観した。

11・2 公共貨幣 vs. 債務貨幣システム

 11・2・1 システム構造の比較

システムの構造がシステムの振る舞い(パターン)を決める。これがシステムダイナミックスによるシステムの味方である。上述したような貨幣改革3条件を新たにシステムに組み込めば、日本の公共貨幣システムは、従来の債務貨幣システムに対してどのように変革されてくるのであろうか。ここで、両者の貨幣システムの構造を表11・1によって簡単に比較しておく。

ここまで本書を旅してこられた読者の皆さんには、この表の説明は不要であろう。一国の経済システムという大きなシステムの中で、貨幣に関する構造を一部改革しただけである。明治維新のような革命的なシステム構造の変革の必要は全くない。



 11・2・2 システムの振る舞い比較

それでは、貨幣システムをこのように構造改革すれば、その経済的な振る舞いがどのように変わってくるのであろうか。表11・2はこれまでの考察をもとに、その振る舞いの違いを6つの項目について比較したものである。

最初の3項目、すなわち貨幣、金融、及び雇用の安定は、フィッシャーらがシカゴプランで提案した主要弊害の除去で実現される振る舞いの比較である。

4番目の政府の債務は、副次的弊害の除去として実現される振る舞いの比較である。

5と6の項目、すなわち所得の格差と持続可能性は、公共貨幣システムで新たに出現が観察される振る舞いである。以下それらを順次簡単に見てゆく。システム思考図11・1も参照しながら読み進めていただくと、公共貨幣システムで日本の経済や社会が輝くようになってくることがより具体的にイメージされてくる。

1.貨幣の安定——公共貨幣システムでは、貨幣の供給が安定し、部分準備銀行制度のように信用が創造・破壊されてインフレやデフレに見舞われ、それが原因で好況(バブル)・不況の景気変動の波に曝されるということがなくなる。流通に投下された公共貨幣は、消滅することなく「金は天下の回り物」として回り続け、経済活動を支え続ける。常に一定量の貨幣が国内で流通することになり、大企業はもとより中小企業、零細企業にも等しく資金が循環し始め、物価水準が安定し、極端なインフレ・デフレが消滅する。企業も安定的な物価水準のもとで、安定的な経営や長期的投資が実践できる。

2.金融の安定——公共貨幣システムでは、債務貨幣システムのような信用創造によるバブル、信用収縮による不況、金融恐慌は発生せず、経済が安定するので銀行の取り付け騒ぎがなくなる。さらに銀行は286兆円の国債を保有(2014年8月現在)しているが、これらを全て100%準備の担保とすれば、国債価格暴落による債務超過で倒産するといった最悪のシナリオも回避できる。要求払預金は常に100%準備で安全に確保されているので、現行の1,000万円のペイオフ(預金保護)の必要もなくなる。

要求払預金いついては銀行は利息を支払う必要もなくなり、逆に預金保管料をサービスチャージできるので、公共や不況の景気変動に煩わされることなく常に一定の収入が確保でき、経営が安定する。銀行は信用創造で無からお金を創造できなくなるので、バブルを煽ることもなく、バランスシート不況(債務超過)で企業が債務返済を優先させても、安定収入源である要求払預金は破壊されることもない。

さらに、ローンの返済は要求払預金の消滅ではなく新たな貸出資金の原資となるので、銀行は新たな投資先を求めて融資競争をするようになる。そうしなければ、銀行は融資による利子収入が確保できなくなるからである。新たな融資先は必然的に実体経済へと向かう。何故ならば株式や証券等の金融投資や不動産投資は基本的にはゼロサムゲームで、銀行総体としては利益を生まないので、やがて銀行の投資先としては魅力がなくなるからである。逆に、実物投資はその投資リスクが貯蓄預金者と分担できるようになるので、より魅力的となる。この結果、銀行間の融資貸出競争が激化し、大企業のみではなく、中小・零細企業へも融資が増加してゆく。その結果、都市銀行はもとより地方の抽象銀行や信用金庫・信用組合等も活性化され、資金の効率的配分が達成される。

このようにして国内の実物投資が増大してゆき、それが内需を拡大、GDPを押し上げるようになる(勿論、GDPは経済成長や発展の一指標に過ぎず、これに過度に依存することは避けなければならない)。このように活性化された経済は、経済成長に見合った公共貨幣の流通への投入を惹起し、さらに貸出増加につながってゆくというシステム思考図11・1で示した貸出–投資の正の増強フィードバックループが形成されてくる。

3.雇用の安定——貨幣供給や金融が安定すれば、経済が安定し雇用も安定する。長期的な観点から日本経済が現在直面している一番の危機は、非正規雇用の増大である。雇用が安定してくれば、非正規社員から正規社員への移動も容易となるが、おそらくそれだけでは不十分であろう。非正規雇用問題は、公共貨幣システムで早急に対処すべき最優先課題である。この点は後で詳述する。

このようにして雇用が安定すれば、賃金も上昇し、労働者の消費も増大する。国内の消費が増大すれば、それが内需を拡大しGDPを押し上げるようになる。こうして活性化された経済は、さらなる民の活力を引き出し、雇用を安定させ、それが消費拡大につながり、システム思考図11・1で示した雇用–消費の正の増強フィードバックループが形成されてくる。

4.政府の債務——公共貨幣システムでは財政支出の赤字は公共貨幣で賄ってゆくのでこれ以上の債務は増大せず、これまでの国債も償還期間が来た者から順次償還してゆくので、政府債務はやがて完済する。この公共貨幣による債務返済は不況、失業、賃下げ、インフレそして世界同時不況も引き起こすことがない。よって公共貨幣システムによる政府債務完済から失うものは何もない。さらに不況を海外に伝染させないので、このシステムへの移行に関して海外から内政干渉を受ける理由もない。日本経済独自の活性化処方箋として堂々と実施できる。やがて政府は、フリーハンドで主要政策が実施できるようになる。といってもこれまでのようにムダに予算を浪費することは許されない。

政策の優先順位として、(1)民に活力を与える政策、(2)経済基盤に活力を与える政策の2つに絞るべきである。(1)の民に活力を与える政策として、現役世代の労働者には正規雇用の実現、退職世代には老後を豊かに過ごせる社会福祉の実現、将来を担う人的資源に思い切った投資をすべきである。(2)の経済基盤に活力を当てる政策については、福島原発事故の被害者救済と電力の発送電分離システムの構築を提案する。こうした政策は、政府債務からフリーにならなければ実施できないもので、豊かな社会、経済を実現するために不可欠な構造改革である。詳細は後述する。

このようにして政府債務からフリーハンドとなった政府は、積極的な財政出動で政府投資や消費を刺激し、それがさらなる内需拡大につながり、GDPをさらに引き上げる。システム思考図11・1にはこのループが省略されているが、ぜひこの増強ループをイメージしていただきたい。

5.所得の格差——現在世界中で資本主義(ここでの債務貨幣システム)における所得格差が大きな社会問題となっている。所得格差はもちろん個人的能力に起因する場合もあるが、それが問題となっているのではない。あくまでも階級間での所得格差である。階級とは所得をもたらす源泉に起因するグループである。利子所得を得る金融資本・銀行家、配当や地代所得を得る資本家(株主)、サラリー(俸給)を得る経営者及び賃金所得を得る労働者(従業員)がその主な階級である。

公共貨幣システムで解消できる所得格差は、金融資本・銀行家階級の利子所得とそれ以外の非金融所得の格差である。しかしながら第5章で分析したように、国際金融資本・銀行家は多国籍企業や大企業の株主でもあり、利子所得と配当所得を分離するのは現実的に困難である。金融資本・銀行家は得た金融所得をさらに株式、証券、不動産に投資することで、さらなる金融所得(不労所得)を指数的成長のメカニズムで驚異的に増大させるからである。それでも、概念的に両者を区別するのは難しくない。したがって、公共貨幣システムでは、第5章で見た外側の「利子・信用創造支配ループ」を消滅させることができ、金融資本・銀行家とそれ以外のグループの格差が解消できる。

しかしながら資本主義における伝統的な階級(資本家と労働者)からくる格差は、このシステムへの移行だけでは解消できない。そのためには「株式支配ループ」という内側のループも消滅させなければならない。すなわち、第1章で述べた「むらトピア経済」を誕生させるのである。この点は後述する。なお、システム思考図11・1では、この「利子・信用創造支配ループ」の消滅は明示的に描かれていない。

6.持続可能性——環境汚染や破壊は、債務貨幣システムにおけるお金の使われ方と深く関連している。企業が借金をすれば必ず利息の支払いを強制される。その支払いのためにはできるだけコストを削減して、売上利益を増やすしかない。コスト削減のためには、環境都市をできるだけ抑えて、それを社会的コストに転嫁させるのが最も手っ取り早い。汚染物質のダンピング等である。すなわち、環境汚染や環境破壊問題は現在の債務貨幣システムと不可分な関係となっている。公共貨幣システムではこうした環境破壊の連鎖が断ち切られることになるが、これはあくまでも持続可能な社会が構築される必要条件が達成させるだけであり、それだけでは十分ではない。環境保全のためには、私たちのさらなる積極的な関与が必要となる。

地球環境に優しい社会を願う心やさしき読者の皆さんには、是非とも環境汚染や環境破壊とお金の問題は不可分であるということを理解していただきたい。債務貨幣システムの撲滅なしに環境を保全するということは、傷口の膿を一時的に拭き取る対症療法に過ぎず、根本的な解決にはならない。なお、図11・1ではこの持続可能性のシステム思考ループは明示的に描かれていない。

以上、6つの項目に分けて、公共貨幣システムの振る舞いを、債務貨幣システムとの比較で概観してきた。公共貨幣システムでは常に一定量の公共貨幣が国内で流通しているので、大企業はもとより中小企業、零細企業にも等しく資金が循環し始める。あたかも、体内でくまなく循環し、健康が回復されるようになるが如しである。

システム思考図11・1における貸出−投資ループで、説明不十分な点があった。それは中小企業や零細企業へお金が回り始めると、同時に地方やコミュニティーが活性化されてくるという点である。このようにこのシステム思考図ではカバーしきれないような目に見えない効果が、相乗効果として至る所からタケノコのようにニョキニョキと出てくる。それらがやがて、1960年代の高度経済成長時代のようなエネルギーを日本中に再び醸成し、そのエネルギーが落日の太陽をまた昇らせ、日本の未来を輝かせるようになる。公共貨幣システムとは、そう、私たちにとって希望の星であり太陽なのである。そして光り輝く日本は、世界を照らす鏡となる。

11・3 政府債務完済の幸運を活かす

11・3・1 デット・エンドの終焉

2008年の第二次世界大恐慌(リーマンショック)に直面した経済学者の関心事は、金融恐慌からの脱出であったが、政府の財政出動や金融の量的緩和(QE)政策で金融恐慌は対症療法的に一時的に克服された。しかしながら地下では金融恐慌のマグマが沸騰したままであり、また地上ではこの金融恐慌の対症療法により新たに政府債務の危機が西欧諸国を襲っており、この債務危機の回避が現在の経済学者の最大の関心事となっている。

本章ではこれまで債務貨幣システムとの比較で、公共貨幣システムの振る舞いを総花的に論じてきたが、ここで債務貨幣システムのデット・エンドがどのように克服されるのかを、再度考察しておく必要がある。

まず金融のメルトダウンのシナリオから吟味する。これは金利が上昇して国債価格が暴落し、銀行のバランスシートが債務超過となることから発生する。上述した振る舞い分析の金融の安定項目で既に述べたが、公共貨幣システムでは銀行保有の国債は要求払預金の100%準備のための担保資産としてその振替が許される。その結果、銀行はその国債を償還期間まで保有し続ければ、その簿価が市場価値に振り回されることなく塩漬けにされて固定されるので、国債資産価値の暴落からくる債務超過のリスクがなくなる。このために銀行経営は安定し、国債暴落による金融メルトダウンの可能性はなくなる。

次にハイパーインフレのシナリオを吟味する。これは、金融の量的緩和(QE)によりマネタリーベースが急速に膨れ上がる結果、一旦景気が回復基調になると、このお金が信用創造で市場に溢れかえるようになり、インフレからやがてハイパーインフレになるというリスクである。公共貨幣システムでは、マネタリーベースはマネーストックと同量となり、このマネーストックの流通量は、公共貨幣委員会によって厳密にコントロールされることになる。よって上の振る舞い分析の貨幣の安定項目で既に述べたように、物価は安定し、(ハイパー)インフレの可能性はなくなる。

最後はデフォルトのシナリオであるが、公共貨幣システムでは国の借金が完済されることが第10章で示されたので、デフォルトの可能性もなくなる。このように債務貨幣システムのデット・エンドのシナリオは公共貨幣システムでは死んだも同然のシナリオとなり、もはや私たちはこうした過去の亡霊に悩まされる必要がなくなる。デット・エンドは終焉(dead)し、私たちは輝く未来を見つめながら進化してゆけるようになる。

11・3・2 民の活力を取り戻す

現役世代:非正規労働者を正規労働者にする

まず現役世代については、一番しわ寄せとなっている非正規労働者を正規労働者にすることが最優先される。公共貨幣システムで雇用が安定してくれば、非正規労働者から正規労働者への雇用変更も容易となるが、おそらくそれだけでは不十分であろう。非正規雇用問題を解決して、ジャパンアズナンバーワンと賞賛された終身雇用の日本的経営の状態を早急に取り戻すべきである。

日本経済が終身雇用制度を回復すれば、そのメリットは計り知れない。まず従業員にやる気が出てきて、社内が活気付き、企業の競争力が高まり、収益も増加する。それによって賃上げも可能となり、消費も拡大し、内需拡大でGDPも増大する。中間層も増大してきて、非正規と正規社員の所得格差も解消されてくる。若者が将来に夢を炊くせるようになり、結婚、出産も増える。子育てに専念できる母親も増えてきて、家庭における子供への愛情が将来世代の活力を生み、社会が安定し、持続可能な明日の日本経済、社会を創りあげてゆくようになる。家庭に余裕ができれば、食生活も改善し健康志向で医療費も激減する。社会が安定すれば、暴力も減り、社会的安全コストも激減する。こうした正のフィードバック効果は計り知れない。

これらを実現する政府の具体的政策であるが、政治家や官僚の皆さんが知恵を絞って出していただきたい。非正規労働を正規化する際に発生する企業の追加的費用を予算化し、これを対象企業に助成金として支給するのも一案である。

退職世代:豊かな老後のための社会福祉を充実する

現在、緊縮予算で政治的発言力の弱い立場にある弱者の社会福祉予算が優先的に削られている。退職世代は現在の日本を創り上げた世代であり、国が感謝の念を持って丁重に扱うべき世代である。彼らに約束した年金を減額するといった背信行為は絶対にすべきでない。生活に困窮している定年退職者は、最低限一律250〜300万円を保証すべきである。これは近年支持を得はじめているべーシックインカムの考え方とも合致する。ベーシックインカム論の最大の弱点は、財源確保の問題である。公共貨幣システムでこの問題はクリアできることになる。

おじいちゃんやおばあちゃんが元気になればどうなるか。可愛い孫との交流が増え、家族との絆も強まり、何よりも笑顔が戻ってくる。おじいちゃんやおばあちゃんの知恵も子供世代に継承されることになり、それだけでも地域が活性化されてくる。また、孫との交流の機会が増えれば、そのための出費も増え始め、消費や内需拡大にもなる。

子供世代:教育の無料化と奨学金を充実する

子供は誰のものか。この問い自体、子供を所有対象とみなしているので不謹慎かもしれない。それを承知であえてこう問えば、子供はまず家族のものであり、その一員である。家族の一員とは社会の一員でもある。すなわち子供は社会のものである。そして何よりも現在の現役世代の老後を支えてくれる未来の人的資源でもある。

したがって、その子供の教育は未来の人的資源を充実させるために欠かすことができない未来投資でもある。その投資が実を結ぶのは10年か20年先かもしれないが、そのための教育投資は当然社会が負担すべきではないのだろうか。もちろん、家族が率先して教育投資を負担すべきであるが、家族がそれをできないは場合は、当然社会がその教育投資を負担すべきである。

こうした原則を立てれば、初等・中等教育の無料化やまた高等教育の奨学金等による教育支援は必然的結果となる。そのための具体的政策は、政治家や官僚、国民の皆さんが知恵を絞って出していただきたい。その財源は、公共貨幣システムで政府が債務からフリーハンドとなれば、十分に確保できる。

以上、子供世代、現役世代、退職世代のすべての民がその活力を取り戻すために政府債務完済で得られる幸運をいかに有効活用すべきかについて論じた。

11・3・3 経済基盤に活力を与える

(a)福島原発事故の被害者救済

次に、経済基盤に活力を与える政策について考える。最優先されるべき経済基盤の整備として、(a)福島原発事故の被害者救済と (b)電力の発送電分離システムの構築の2つを提案したい。

まず、歴史上初めて経験する大規模福島原発事故の被害者をどう救済できるのかを考える。原発事故による加害者の責任は東京電力と政府にあり、両者がその責任を負うのは当然であり、事故加害者にはその罪を法律に則って償ってもらう必要がある。それはそれとして、事故からすでに4年が経過したが、被害者救済は遅々と進んでおらず、逆に放射能被害が関東地方に拡大しているとネット上では指摘されている。そこでここで議論したいことは、公共貨幣システムで被害者をどう救済できるのかについてである。被害を放射能汚染の直接被害者である地元住民と放射能汚染から間接的被害を受けている広域の被害者に分けて議論する。

まずこの原発事故による直接被害者の救済であるが、いまだに不安を抱えたままで汚染地域で生活している住民がたくさんいる。彼らの心は、生まれ育った愛着ある故郷に住み続けたいという郷土愛と、放射能汚染地域から離れて安心して住みたいという願望の狭間で揺れ動いていると言われている。第5章の指数的半減表で示したように、セシウムの減少率は−2.3%であり、それが1%に減少するまでには約200年もかかる。

そこでここで提案したいのは、放射能汚染地域の汚染レベルが1%に軽減されるまでの約200年間、政府がその汚染地域を賃借、管理し毎年賃借料を土地、家屋所有者に払い続けるということである。その間故郷を離れる住民は、数世代後の子孫が再び故郷に戻ってくれることを期待して、政府が準備した代替地等へ移住するか、または自ら新天地を求めて移住する。もちろん、こうした移住には費用が発生するが、それは移住者が自己負担する。その際、国はその費用を無利子で200年間貸与する。国から無利子で融資を受けた移住者は、毎年元金を賃貸料から返済してゆく。賃貸料は元金を支払ってなおかつ手元に生活費が一部残るように設定する。

例えば移住費として新築(マンション購入)費3,000万円と農地代2,000万円の合計5,000万円を国から借りて200年かけて返済するとすれば、年間の元金返済額は25万円で月額約2万円の返済となる。一方ふるさとの土地や家屋の国への賃貸料を年間50万円に設定すれば、元金を返済しても毎月約2万円が実費の手取り収入となる。そして移住先で仕事を見つければ、移住者はなんら実質自己負担の必要がなく、新天地で新しい人生を希望を持ってスタートさせることができる。

この希望とは、200年後には自分の子孫が古里に戻って、再び古里を受け継ぎ農地を耕し、先祖の墓守をしてくれるという希望であろう。こうすれば、被災者の揺れる心も穏やかになるであろう。200年とは気が遠くなるような年月ではあるが、こうした希望があれば、その間何世代にもわたって古里への愛情を育み続けることができる。親から子へ、子から孫へと原発事故の残酷さも風化させずに継承してゆける。未来の日本人への贈り物となる。

これが公共貨幣システムによる超長期の国土保全・維持の方法であり、誰もが幸せをつかめるビジネスモデルである。2011年3月11日の東日本大震災で数十兆円もの日本の実物資産が破壊された。政府が公共貨幣でまずその喪失した実物資産を公共貨幣資産として増やすのである。そうすればそれに見合う実物資産がやがて形成されてくる。このようにして公共貨幣システムは今後未来永劫に続く経済の基盤システムを支えることとなる。

  (b)電力の発送電分離システムの構築

経済基盤に活力を与える第2の政策として、電力の発送電分離システムの構築を提案したい。

電気エネルギーを経済活動の公共財と位置付けて、その国内での送電、分配の送配電システムを公共電気事業システムとして、公共貨幣を投入して基盤整備する。そのためには、まず現在のような発電から送電・配電を地域独占する非効率な電力の産業構造を変革することが必要である。電力会社の電力供給独占を廃して電力供給を自由化し、より効率的、競争的な電力供給市場を創造する。競争的な市場で電力が供給されるような市場の競争メカニズムを構築する。

次に公共貨幣を投入して、現在の送配電システムを電力会社から国が直接購入して、全国一律の効率的送配電システムを構築する。そして東西で発電量を融通しあえるようにする。電力会社は、送配電システムの売却料金で経営を立て直しをすればいい。売却で得た売却益をコスト削減に還元すれば、電気料金を上げる必要がなくなる。

こうして電力供給を自由化と全国一律の送配電網システムが整備されれば、電気料金が徐々に下がってくる。それが国内の製造業コストを下げる要因となり、より競争的な産業、製造業が再生される。企業の生産コストが下がれば、日本企業の海外競争力も高まってくる。このように海外とのコスト競争環境が整備されれば、これにより円安・ドル高に伴う電気代コストの高騰も抑えられるようになる。そのメリットは広く消費者にも及ぶ。

11・4 公共貨幣システムの応用

 11・4・1 寡占化は防げるのか

ここまでは、公共貨幣システムで経済システムの振る舞いがどのように変わり、経済がどう復活して日はまた昇り、日本が輝き始めるようになるのかについて外観してきた。公共貨幣システムになれば、これまでの閉塞状態が破られ、いろいろな分野で経済活動が活性化され、社会が生き生きとしてくる。ここからは、これまでの議論を踏まえて、読者自身の関心事についてそれがどのように変わってゆくのかを読者自身が自らの実践的応用例として考えていっていただきたい。

1980年頃から世界中でグローバリゼーションのうねりが起こり始め、その結果「寡占が世界の問題」となってきた。その経過を簡単に示せば次のようになる。

グローバリゼーション→民営(株式会社)化→(国内寡占)→多国籍企業による寡占→国際銀行家支配(1%)

政府や公共の組織は非効率だが、民営化すればより効率的になるというグローバリゼーションの掛け声(洗脳)のもとで徹底的な民営化が行われた。その民営化の波は、メインの金融と銀行サービスはもとより、水、食と農業、教育、医療、保険、郵便、自治体、軍隊等々ありとあらゆる分野に及ぶ。その結果、多くの分野で民営化による新たな株式会社が誕生した。(『ルポ 貧困大国アメリカ』堤未果、岩波新書、2013年を参照)すでに第5章で分析したように、「株式支配ループ」が作用し、株式会社は吸収・買収等でますます寡占化され、多国籍企業による寡占化が世界規模で凄まじい勢いで進行している。

その結果、多国籍企業は国家と対等、否、国家を超える存在に巨大化していった。多国籍企業は肥大化して、競争市場の原理を歪め、国家の公益法体系を自らの利益のためにねじ伏せることができるまでになった。まさにここで指摘した「寡占が世界の問題」となったのである。

第5章で既に紹介した最近の研究によると、OECD基準の多国籍企業43,060社のうち、146の企業(0.02%)がこれらの取引全体の40%を支配しており、737社(0.123%)が世界取引の80%を支配している。しかしながらこうした支配企業のうちで世界的によく知られている多国籍企業は上位50社には1社も入っていない。

では誰が世界の取引を支配しているのか。全て銀行や投資銀行等の金融資本である。彼ら徒党グループ(cabal)が、民間の中央銀行による貨幣発行権病むからお金を信用創造する詐欺的なメカニズムを用いて、利子・信用創造支配ループを創り、その中に株式支配ループを取り込んで役員相互乗り入れで多国籍企業を支配している。世界経済を金融寡占化、独占化して支配している。これが現在における世界の寡占問題であり、寡占問題は金融資本寡占問題である。その結果が、極端な富の集中による格差であり、「我々は99%である(We are 99%)」という庶民の怒りとなり、「1%対99%」の対立となってきている。

このように分析してくると、寡占問題は古典的なミクロ経済レベルの問題では決してありえないということが判明してくる。ここのところを押さえないと、寡占問題は解決しない。ところが多くの経済学者は、保身のためにこのことには触れない。

では、こうした金融寡占化やその下にぶら下がる多国籍企業寡占化を阻止し、市場競争の原理を働かせるにはどうすればいいのか。まず、公共貨幣システムの導入で、「利子・信用創造支配ループ」を断ち切る。すなわち、外堀(金融の寡占化)を埋めるのである。しかしながらこの作業は一国の貨幣改革では成就しない。世界中の国が貨幣改革を実践し、国(政府)が貨幣発行権を取り戻し、民間銀行による無からお金を創り出す信用創造をストップさせることが必要となる。それによって金融資本支配の外堀を埋めれば、「株式支配ループ」の内堀を埋めるのはそう困難ではない。この点は、以下の「新生むらトピア経済」の節で詳述する。

では公共貨幣システムを日本で実施すれば「国内の寡占問題」はどのように改善され、寡占が多占となり経済が活性化されるようになるのかについて考察する。

まず「利子・信用創造支配ループ」を公共貨幣システムで消滅させることができれば、やがて地方銀行や信用金庫・信用組合が活性化され、国内の資本市場が競争的になり、国内銀行の金融寡占化が崩されて地方銀行が多占化されてくる。さらに既に述べたように、貯蓄預金を投資資金として貸し出す場合、そこから派生するリスクは銀行と預金者が分担するようになり、銀行は思い切った融資ができるようになる。これに伴い、国内の中小・零細企業にも資金が潤沢に回るようになり、産業の寡占化が崩されて、産業の多占化が始まるようになる。

 11・4・2 女性にメリットはあるのか

「公共貨幣システムの実現のためには、人口の半数を占める女性の理解が非常に重要であると思いますが、公共貨幣システムで女性にどんなメリットがもたらされるのですか」

これは非常に的を射た質問である。実際に「失われた20年」の最大の被害者は日本の女性だったのかもしれない。突然の夫の解雇で、パートの仕事を余儀なくされた女性が沢山いる。彼女たちはそのために子育て、食事等家庭の主婦としての重要な任務を放棄せざるを得なくなった。若い女性の大半は男性に比べて非正規雇用の仕事に従事せざるを得ない状況に追い込まれた。

公共貨幣システムで雇用が安定し非正規雇用が正規雇用になれば夫の収入も安定し、女性は再び家庭に戻って主婦としての大切な育児等の家庭内任務に専念できるようになる。もちろん、このことは女性の職業選択の自由を阻害しない。能力を生かして社会で貢献したい女性には、雇用が安定すれば、逆にそれにふさわしい仕事の機会が増えてくる。特に若い女性にとっては、正規雇用の仕事の機会が増えれば、自分の実力を十分に発揮できる環境が広がる。

このように女性に余裕が出てくれば、子育てや子供の教育にも余裕が出てくる。さらに公共貨幣システムで社会福祉が充実し退職世代に経済的余裕が出てくれば、年老いた両親の老後のケアも従来のように必要ではなくなり、その分女性に時間的余裕が出てきて、豊かな人生が楽しめるようになる。

さらに家庭での食事にも気を配るようになり、遺伝子組み換えや健康に良くない食品が、やがて市場から淘汰されてゆき、ほんものの食材やそれを提供する農家が育ってくる。こうして市場からも多国籍企業による寡占化を追放できるようになる。

このように、女性が元気になれば、社会が健康を取り戻し、明るい社会、持続可能な社会が実現してくる。健全で明るい社会づくりへの正のフィードバックループが回り始める。女性の読者の皆さんには、子供のため、年老いた両親のため、夫のため、そして域外の持てる自分のために、公共貨幣システムが女性にもたらすこうしたメリットをぜひとも拡散していっていただきたい。

11・5 新生むらトピア経済

現在の資本主義に代わるのは「むらトピア経済」である。

そのむらトピア経済とは、以下の3つの雇用原則の上に構築されるシステムである。

1.労働者がむらトピア企業に、労働を共有する共働者として雇用される時、自動的にその会社の生産手段を共有し、民主的な方法で経営に参加する。共働者は自らの意志に反して解雇されない。

2.共働者が職場をさる場合には、その会社の生産手段は全て自動的に非保有となり、外部からコントロールできなくなる。死亡した場合も、同様である。

3.共働者の職場は生計を得る場となり、生産手段から得られる経済利益を共有する。

むらトピア企業とは日本の伝統的な家族社会の組織を企業組織に拡張した企業である。むらトピア経済とはこうした企業からなる経済システムである。

資本主義では株式所有を基本としているが、むらトピア経済では資本(生産手段)保有を基本としている。

情報化時代ではこうしたむらトピア企業が経営的に比較優位となり、競争市場で資本主義企業との競争に打ち勝ち、やがてむらトピア企業社会が出現する。

その第一の理由は、共働者の地位が終身雇用で安定し、自分の会社として生涯働けるようになるので、仕事に対するモチベーションが資本主義的な雇用労働者より高くなり、より生産的、効率的になるからである。

第二の理由は、自主経営のために経済の変動に応じて賃金を自ら弾力的に変化させて、価格をより競争的に維持できるからである。

このように推論することにより、情報化時代は日本的な終身雇用の経営をコアとするむらトピア経済が資本主義的経済を凌駕して出現してくると考えた。しかしながら、この推論過程において、現在の債務貨幣システムがもたらす支配構造のメカニズムを全く考察していなかった。第8章で述べたように1980年代当時、シカゴプランによる貨幣改革の議論は経済学のフレームワークからは全く隠されていた。このため第1章で批判的に分析したように、債務貨幣システムの上にこのむらトピア経済システムを構築することは、あたかも空中楼閣を建築するようなものであった。

したがって、資本主義経済の欠陥や弊害を除去するための優先順位は、むらトピア経済ではなく、まずそうした弊害をもたらす債務貨幣システムに代えて公共貨幣システムを構築することである。しかしながら、このことは第4章で分析した「利子・信用創造支配ループ」の外堀を埋めるだけで、すなわち、金融資本・銀行の支配を消滅させるだけで、現在直面している「世界の寡占問題」(産業の支配)を消滅させるのには十分ではない。もちろん、「利子・信用創造氏はループ」の外堀が埋まれば、「株式支配ループ」の内堀もやがては埋まるかもしれないが、これはあくまでも蓋然性である。ここが埋まらなければ、古典的な資本家(株主)と労働者との所得格差も解消しない。

そのためには、政府が積極的にむらトピアの企業経営を実践する企業に、公共貨幣で助成し、徐々に市場経済の内部からむらトピア経済に変革してゆくことが必要となる。しかし、これだけでは十分でない。十分条件は、現在の商法が規定している株主の議決権を、企業の経営に参加し、生計を共有している経営者や従業員に制限する法的なフレームワークを新たに構築することである。このためには、商法改正等の新たな作業が必要となるが、これは本書の使命を超えたものとなる。よってそうした作業は、将来世代に託することにした。

いずれにしろ、このようにして公共貨幣システムの上にむらトピア経済を建設すれば、21世紀の新しい理想の経済システムが創造されることになる。これまでの資本主義経済の「債務貨幣・株式保有システム」に代わる新しい「公共貨幣・資本保有システム」が創造される。公共貨幣システムの上に創造されるこのむらトピア経済を、新生むらトピア経済と呼ぶことにする。

このようにして、第1章で述べた「バークレーでの挑戦」が、30数年ぶりに今ようやく完結した。あとは若い世代の研究者にこのビジョンや志しを継承していただき、福島原発の被災地に被害者の子孫が帰還できる約200年後には、日本が理想のむらトピア経済社会に新生していることを念願するのみである。

11・6 レバレッジ・ポイントを誤るな!

新しい公共貨幣・資本保有システムが創造されれば、現在私たちが「債務貨幣・株式保有システム」で呻吟している諸問題がどのように解決できるのであろうか。第5章(図5・7)で提起した経済問題、社会問題、環境問題、政治問題(これらは全て現行のシステム構造が生み出す振る舞いパターン)がどのようにして解決されるのであろうか。残念ながら本書では、こうした論点を議論する時間的余裕も紙面の余裕もない。上の「公共貨幣システムの応用」で議論してきたように、この作業は読者自身で進めていっていただきたい。

ただ、システム構造を変えるためのレバレッジ・ポイントの優先順位を誤らないでいただきたい。公共貨幣システムの実現が優先順位第1で、これにより利子・信用創造支配ループを断ち切り、金融資本・銀行家支配からの解放を勝ち取る。次にむらトピア経済の実現が優先順位第2で、これにより株主支配ループを断ち切り、多国籍企業による寡占支配からの解放を勝ち取る。図11・2はこうして2つの支配ループが断ち切られ、お金が支配のために流れなくなり、やがて公共貨幣・資本保有システムが「新生むらトピア経済」として創造されるようになる状態をイメージしたものである。こうして外堀、内堀を埋めて経済システムの構造を変えてゆけば、第5章で提起した経済問題、社会問題、環境問題、政治問題はやがて解決されてくるであろう。すなわち図11・2は、こうしてシステム構造が変革されれば、元の古いシステム構造が造り出していた振る舞い(諸問題)も解決されるようになることをイメージしている。諸問題解決に注ぎ込んでいる変革のエネルギーを、公共貨幣システムの創造にレバレッジ・ポイントを当てて集中しよう。



今回は以上です。

次回は、いよいよ第Ⅲ部「公共貨幣システムへの移行 第12章 公共貨幣システムへの移行モデリング」という話題です。