貨幣は公共財ではないの?(連載7)

第7回目は、「信用創造のメカニズム」という話題です。

教科書はこれまでと同じ

NPO法人日本未来研究センター理事長山口薫さんの著作

『公共貨幣』第4章の後半からです。

さて最初に、前回のまとめです。

わたしたちが銀行に「預けている」と錯覚している銀行預金(要求払預金)ですが、それは政府が定めた「法貨(お金)」ではありません。銀行は無から信用創造(お金として機能するものを生み出)しているのですが、それを可能としている制度が「部分準備銀行制度」といわれるものです。前回もお話ししましたが、こうしたお金みたいなものが全体の85.5%を占め、日本経済を回しているのです。さらに民間法人である日本銀行が発行している紙幣が13.8%ですから、85.5%+13.8%を合わせると実に99.3%は民間が発行しているもので日本経済が動いているということになります。そして、この民間発行である99.3%にはすべて利息がついて世に出回っていることになります。つまりこうした利付き債務としてお金が作り出される現行の貨幣システムのことを、「債務貨幣システム(Debt Money System デット・マネーシステム)」と呼びます。

わたしたちは、こうした債務貨幣システムに何の疑いも持たずに、どうしたら景気を回復できるか、不況を克服したり、失業を減らしたり、格差の是正をすることができるかを議論しています。もしこのシステムが欠陥システムならば、このシステムを変えなければならないということになるでしょう。

この負債貨幣システムは巧妙にこの世の中から隠されています。まず「部分準備銀行制度」というものの意味が当たり障りのないもののように教えられています。銀行は単に預金者から預かったお金を再び貸し出して流通させている資金の仲介業務をしているだけで、なにも無からお金を信用創造しているのではないといったような顔をしていますが、それは錯覚にすぎません。それをステップを追ってご説明します。

1 銀行は預かったお金(例えば100万円)を全て日銀に準備金として預けます。

2 日銀の準備率を2%とすると、銀行は100万円÷2%=5,000万円から日銀の当座預金へ預けた100万円を引いた残りの4,900万円の貸し出し枠を得ることができます。(この4900万円は、この世の中に全然存在していなかったことに注意してください)

3 ある企業が500万円の融資を求めて銀行窓口を訪れる。

4 銀行はその融資プロジェクトの収益性を査定し、担保、利息を取って貸し出します。

5 銀行のバランスシートを見れば、銀行の資産は貸付金として500万円増加、同時に500万円の要求払預金という負債が増加します。貸し出し金利が5%であれば銀行は毎年この融資から25万円の利子収入が経常収益として得られることになります。万一返済が滞れば、不動産等の融資担保を強制徴収できるので銀行にとっての貸し出しリスクはほとんどありません。

6 一方、融資を受けた企業のバランスシートを見ると、資産の部に当座預金として銀行から融資を受けた500万円が増加、負債の部には借入金としてやはり500万円が増えます。そして、企業は毎年25万円の利息を返済するために、他社と競争し、収益を得るべく頑張る、ということになります。

以上が銀行からこの世に存在しない無からお金(みたいなもの)を生み出すという「信用創造」のメカニズムです。信用創造の逆は「信用破壊」で、具体的にいうとそれは「借金の返済」ということです。つまり、お金を借りると「信用創造」され、返済すると「信用破壊」が起こるのです。理屈からいえば、世の中の全ての借金が返済されてみんながハッピー、と思った時、99.3%のマネーストックがこの世の中から消えることになるのです。

信用創造や信用破壊がマネーストックの増加や減少を引き起こし、インフレやデフレ、好況や不況といった経済変動をもたらす根本原因となっているのです。

そして、重要なことは、こうした信用創造の過程で、常に優位な立場に立っているのが銀行だということです。銀行にこうした支配的地位を与えるのが信用創造のメカニズムなのです。学校では決して教えられないことです。

今回は以上です。

次回は、「預金は誰のもの?」ということについて勉強していこうと思っています。