貨幣は公共財ではないの?(連載5)

第5回目の今回は、「日銀とはどういう組織か?」という話題です。

今回も教科書は

NPO法人日本未来研究センター理事長山口薫さんの著作

『公共貨幣』第3章からです。

まず、「日本銀行」というと日本の中央銀行、政府の機関?などと誤解されている方が多いかと思いますが、はっきり言って、日銀は純然たる民間の銀行法人です。ただほかの一般法人と違う点は、前回も見たように、日本の法律によって「日本銀行券を法貨として無制限に発行できる権限が与えられている」というところに最大の違いがあります。

法人といえば株主や出資者がいるはずですが、この辺のところはどうなっているのでしょうか?

「日本銀行法」第8条、第9条によれば、日本銀行の資本金は1億円でそのうち日本政府は「5,500万円を下回ってはならない」と定められています。実際に日本政府が出資している額は5,500万円プラス8千円(55,008千円)(平成27年3月末現在)となっています。

一般の株式会社であれば、株主にはその対価として所有権や株主総会での議決権、利益の配当金を受け取る権利等が与えられますが、日銀の出資証券にはそのような経営参加権も株主総会での議決権も一切与えられておらず、日銀は出資者からまったく干渉を受けない法人です。理想的な企業組織体といえます。

しかし、そうなると、日銀に出資するメリットとは何なのか?ということになります。日銀の剰余利益の配当率は年5%を越えてはならないと定められています。日銀の出資金は1億円ですから、その配当金は1億円×5%=500万円となります。

発行済株式数は100万株(口)なので、額面価格は1株百円ですが、それに対する配当金は年五円です。現在の1株の売買価格は36,100円ですので、仮にわたしが日銀の株の45%の45万株を買ったとします。すると、45万×36,100円=162億4,500万円の資金を用意しなければなりません。まぁ、それだけの資金を借りに用意して買ったとしましょう。しかし、1年の配当金は45万株×5円=225万円にしかならないのです。

こんな割りに合わない株に出資するメリットは一体何なのでしょうか?これは現在のところ謎です。

誰が日銀を所有しているのか?日銀出資証券保有者の構成割合は日銀がホームページで公表している業務概況書で明らかになっています。それは下記のとおりです。

政府    55%

個人    40%

金融機関  2.2%

公共団体等 0.2%

証券会社  0.0%

その他法人 2.5%

上にある、日銀の出資証券を保有している40%の個人とは誰なのか、大変気になるところですが、これも謎です。

それでは日銀のビジネスモデル、つまりどうやって稼いでいるのでしょうか?

一つは、貨幣発行益(シニョレッジ)

二つ目は、利息です。

最初の貨幣発行益とは「連載2」でもお話ししましたが、 1万円札の原価は20円です。ですから日銀は1万円札を一枚印刷するたびに、10,000円ー20円=9,980円の発行益が得られます。

さらに、この1万円を利息1%で政府に貸し付ければ、日銀は毎年1万円の貸付に対して100円の利息が労せずに得られることになります(初年度のみ印刷原価20円をマイナスするので利益は80円)。

いっぽう政府はこの利息を支払うために、税金を徴収して日銀に支払います。これが単純化した日銀のビジネルモデルです。ただ実際には、貨幣発行益は日本政府にのみ与えられます。なぜなら、日銀は日本銀行券を発行した場合、「銀行発行券」としてバランスシートの負債の部に載せなければならないからです。銀行が預金を預かった場合と同じ扱いになるのです。日銀は日銀券の発行を法律で認可されてはいても、闇雲に発行するわけではなく、誰かが日銀にお金を借りに来た場合のみ発行できる仕組みとなっています。以上のことから、日銀のビジネスモデルとしての主な収入源は利息のみであるという結論になります。

では誰が日銀にお金を借りに来るのかというと、政府や民間銀行がお金を借りに来た場合にのみ、日銀はそれらを国債、貸し出し金資産としてバランスシートに計上して、日銀券を利付きで発行しているのです。

利付きで日銀券を発行しているという点がポイントで、政府が税金を徴収して払う利子が国債の利息であり、日銀が民間銀行に貸し出す時の金利が公定歩合です。要点は日銀のみ日銀券を発行して、主に政府に貸し出すことにより紙幣が発行されているということです。すなわち、政府が自ら保有する貨幣発行権をわざわざ放棄して、民間会社である日銀からお金を借り、その利息を国民から税金を徴収して民間会社の所有者に支払っていることになります。現行の債務貨幣システムは、このように日銀の所有者が国民から利息という不労所得を合法的に吸い上げるシステムとなっているのです。

日銀の利益(剰余金)は積立金と配当金を除いた全額を国庫(日本政府)に納入しなければならないことになっていますが、その利益(剰余金)を計算する上での経費の計上はすべてが明らかになっているわけではありません。何しろ民間の法人なので会計検査院による会計検査が実施されているわけではないのです。さらに、日本政府が発行する国債に対する利息計算もすべて日銀に丸投げしており、日銀から請求される国債利息が果たして正しいのかどうかも財務省は実際には把握していないのです。

また剰余金の出資者に対する配当金が出資金に対し年5%ということも、政府出資55%に対して4,813億円を納付しているということになれば、3,938億円が個人その他の出資者に支払われていた可能性は否定できない。これはあくまで仮説であり、これ以上の推論はできない。しかし、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度)は米国民から徴収した所得税を一切国に還元していません。こうしたことから推測すれば、日本の中央銀行である日銀でも、民間の出資者には同様のことが行われていても不思議ではないかもしれません。何しろ民間なので会計検査院も調査できないので、国民には一切明らかになりません。

以上のように日銀には、不明朗な会計が多くある。そこで、本章の結論として、「日本銀行は必要か」と問われれば、「現状のままではノー」ということになる。ではどうすればいいのか。あとで提案するように、日銀を解散して国の金庫である「公共貨幣庫」へと組織替えするのである。しかしそれだけでは、経済のクリアーな流れは確保されません。さらに学んでいきましょう。

今回は以上です。

次回は、「お金はなぜ無から創られるのか」ということについて勉強していこうと思っています。