貨幣は公共財ではないの?(連載11)

第11回目は、「国の借金はなぜ増え続けるのか」という話題です。

教科書はNPO法人日本未来研究センター理事長山口薫さんの著作

『公共貨幣』第6章です。

6・1 借金地獄の日本

 6・1・1 ジャパンアズナンバーワンの難破

ミルトン・フリードマン(1912年7月31日 - 2006年11月16日)という経済学者をご存知でしょうか。ウクライナ系移民の子としてニューヨークで生まれ、シカゴ大学の教授となり、1976年にはノーベル経済学賞を受賞。1971年のアメリカ大統領ニクソンによる金・ドル交換停止宣言の影の主役とも言われています。

ミルトン・フリードマンは、ナオミ・クラインの『ショックドクトリン』で痛烈に批判されたマネタリスト、新自由主義者と言われている経済学者です。

彼は1982-1986年まで日銀の顧問も務めていました。ちょうどその直後、皆様もご存知のとおり日本は激しいインフレ、不動産バブルに見舞われ、そのバブルも1991年には崩壊、その後「失われた10年」「失われた20年」といわれる長期不況を経験しているのです。その間、日本や金融危機に見舞われたアジアや中南米諸国、ロシアを除いて欧米諸国の経済はなんとか海図なき海を無難に公開してきた如くであったが、2008年9月15日のリーマンショックでついに座礁・難破してしまったのです。

この難破船からの経済学の処方箋は、ケインズ経済学による伝統的な財政・金融政策のみでした。

 6・1・2 消費増税8%でも借金は増大

政府は財政健全化という名目で2014年4月1日から消費税を5%から8%に引き上げた。大義名分は増税で税収を増やして政府の財政再建に当てるというものであった。それでは消費税率を8%に引き上げた結果、日本の財政状況は良くなっただろうか。下の表の財務省による「わが国財政事情」等のデータをご覧いただきたい。

     表6・1

政府の一般会計歳入のうち税収は47兆円、一般会計歳出のうち国債費を除く基礎的財政収支対象経費と呼ばれている歳出は70.4兆円で、この差額の23.4兆円は財政赤字となる。この差額のことを政府はプライマリーバランス(PB)と呼んでいるが、PBとは平たく言えば税収から政府支出(借金の返済分を除く)を引いた残りのことである。しかも歳出はこれ以外に国債費といわれる政府の借金の元利合計返済額が2013年度で22.2兆円、2014年度で23.3兆円あり、赤字はさらに膨れ上がる。この赤字を賄うために政府は国債の発行を余儀なくされ、その公債発行額は2013年度44.2兆円、2014年度38.5兆円となり、実に2013年度一般会計予算90.3兆円の49%、2014年度予算92.6兆円の46.3%にも達した。すなわち国の一般会計予算の約半分弱を借金に頼るという借金漬けになっているのである。その結果公債残高は2017年度末では898兆円にも達した。

それでは、消費税率を8%に引き上げた結果はどうなったであろうか。表6・1を再度ご覧いただきたい。消費税を8%に引き上げた2014年度平成26年度の税収決算額は54兆円となり、前年に比べて、7兆円の増収となっている。消費税3%分の増税効果である。プライマリーバランスの赤字額は4.8兆円も減り、財政は改善した。そうした増税効果の結果、公債発行額も38.5兆円と、前年より2.4兆円の減額ができた。このような結果を見ると、消費税増税による効果は確実に財政健全化に反映されたように見える。

しかるに、公債残高をみると、774兆円に膨れ上がり、実に30.1兆円もの借金が新たに積み上がっていることに気づく。さらに、2014年7−9月期の四半期別GDP速報によると、消費増税の結果、GDP(国民総生産)も年率換算で、名目で3.5%の減少、実質でも1.9%の減少である。実に16.9兆円の損失である。

確かに税収は7兆円増えたかもしれないが、国の借金は30.1兆円も余分に膨れ上がり、税収の2倍以上の16.9兆円もの国内総生産を失ったのである。国内総生産とは、国の豊かさをもたらす国富の源泉である。救国のつもりの消費税増税が、逆に国を貧しくし、滅ぼそうとしているのである。なぜこんなことになるのか。

 6・1・3 政府債務簡素SDモデル

このカラクリを見抜くためには、政府債務の変動を捉える簡単なモデルを、会計システムダイナミックスという手法を用いて構築して考えるしかない。

このモデルは簡素化した政府の複式簿記モデルで、現金と国・地方の長期債務残高の二つのストック(左右それぞれの真ん中にある四角)からなる。左側がバランスシート(貸借対照表)の資産の部にあたり、右の債務残高ストックは負債・資本の部に該当する。

さて、左側の現金ストックへのインフロー(ストックに流れ込む右向きの矢印:政府の歳入)は税収と公債発行額からなっており、そのアウトフロー(ストックから流れ出す右向きの矢印:政府の支出)は、歳出と国債費からなっている。国債費というのは、政府の国債返済額であり、公債利子(利払い費)と元金返済額とからなっている。そこで政府のキャッシュフローは

政府のキャッシュフロー=プライマリーバランス−国債費

この政府のキャッシュフローが赤字になれば(つまり、プライマリーバランスよりも国債費が大きくなれば)、政府はたちまちデフォルト(国家破産)となる。言い換えれば、収入と支出の差よりも借金の返済額が大きくなれば破産するということである。政府はそれを回避するために、以下のようにして、公債の発行(借金)を余儀なくされる。

公債発行額=−政府のキャッシュフロー

つまり、政府は税収と歳出の差額分、それがマイナスであれば借金をし、プラスであれば借金の返済に充てることができることになる。

図6・1の右側のストック、すなわち負債・資本の部の債務残高ストックへのインフロー(借金の増加)は、基本的には利子と公債発行額(新たな借金)とからなる。公債発行額は複式簿記による記帳方法に則って、上で求めた、−政府のキャッシュフロー=公債発行額になる。アウトフローは債務の返済額のみで、このモデルでは現金のアウトフローの国債額と同額となる。

 6・1・4 長期債務残高のシミュレーション

以上のことを前提として、1971年のニクソンショック直前の1970年から日本の債務がどのように増加してきたのかを見てみよう。

図6・2の曲線2は、1970年から2014年までの、国・地方の長期政府債務残高の実際の推移である。

曲線3は、同期間における名目GDPの実際の推移である。この両曲線から観察できることは、

第一に:1998年に長期債務残高がGDPを超えたということ

第二に:1990年代中頃から「失われた20年」となり名目GDPの成長が止まったにもかかわらず、長期債務残高はGDPのゼロ成長とは無関係に増加し続けているという点である。

なぜこんなことが生じるのか。それは第5章の「借金地獄の恐怖」で既に述べたように、一旦借金をすればそれが複利計算のために指数的に増大してゆくからである。

図6・2の中の表のように3つの期間に分けて利率を最適化すると実際のデータと曲線1のシミュレーションがうまくフィットする。

第1期は:1970年から1979年までの10年間で、1971年の金・ドルの交換停止といういわゆるニクソンショックによって金との交換リンクがなくなり、制約なしに財政出動で経済活動を支えていけるようになり、その結果、累積債務は32.5%もの急速な勢いで増加した。債務の倍増期間は、第5章の公式を当てはめて

69年÷32.5(%)=2.1年

と求められ、約2年ごとに2倍、4倍、8倍・・・・と債務が倍増したことになる。

第2期は:1980年から1999年までの20年間で、債務は8.3%で増大した。

69年÷8.3(%)=8.3年

第3期は:2000年から2014年現在(出版年)に至るまでで、3.3%で増大してきた。倍増時間は

69年÷3.3(%)=20.9年

となる。この期間はGDPがほぼゼロ成長であったにもかかわらず、国の借金は年率3.3%で増大していった。これは驚くべきことである。このままのペースで借金が膨れ上がると、2014年の国・地方の長期債務残高は1,010兆円であったので、単純計算で21年後の2035年には、2,020兆円になる。GDPが現状のままだとすれば、債務残高−GDP比は400%を超えることになる。収入の増加はないのにもかかわらず借金のみが膨れ上がっていくという、いわゆる「サラ金地獄」のようなものである。このまま政府が無策・愚策を続ければ、誰が考えても政府の財政は確実にデフォルト(債務不履行)に陥る。

そんな主張をすれば「そんなことはない。日本はギリシャとは違うのだ。国の借金はほぼ国内で賄っているから問題ない」といった反論が聞こえてくる。

現在(2017年)の日本の金融資産は1,809兆円で、債務残高は1,307兆円だからまだ約500兆円の余裕があり大丈夫であるというのがそうした反論の根拠のようであるが、それは大きな間違いだ。

資金循環表(2014年6月)でよく中身を調べてみると、1,645兆円の金融資産のうちで、定期預金が466兆円、保険が441兆円、証券・株式等が261兆円となっている。すなわち金融資産のうちで1,168兆円が定期預金とか保険とか証券であり、それらは金融機関を通うじて間接的に国債購入にまわされてすでに消化されている。残り477兆円のうち約400兆円は現金とか普通預金で、日々の取引に必要な資金であり、国債購入にはまわせない。そうなってくると自由に国債などを購入できる余裕のあるお金は80兆円にも満たなくなる。

さらなる反論として、日本の対外金融資産は321兆円もあるではないかといった声も聞こえてくる。しかしながら、たとえこれら海外金融資産をすべて国債の購入に充てたとしても、せいぜい8年しかもたない。

そこでこうした状況を見通してかどうかはわからないが、政府と日銀は最後の手段としての「禁じ手」を引っ張り出してきた。いわゆる日本銀行による量的緩和(QE)である。日銀が市場から大量に国債を購入し、こうして余裕のできた市場が政府の国債をさらに買い増すという政策である。

確かにこうすれば、債務返済はさらに延命できるように見える。しかしその結果はどうなるであろうか。日銀のマネタリーベースが急激に増加し、その結果、円は為替市場で1ドル130円、140円・・・と暴落して行き、石油等の輸入物価は急騰し、それに拍車をかけるように政府の債務急増がインフレを増強する。しかも円安にもかかわらず、企業の対外生産シフトで輸出は増えず、輸入額が外貨高で膨れ上がって貿易赤字となり、経常収支もやがて赤字に転落し、321兆円の対外金融資産も瞬く間に激減する。すなわち、日本経済が根底から崩壊しはじめる。量的緩和は末期患者さんへの劇薬のようなものである。したがって、後述するようにこうした対症療法では、もはや日本経済は救えない。

 6・1・5 消費増税で借金増大、なぜ?

すでに指摘したように、2014年4月からの消費税増税8%で、7兆円も税収が増え、4.8兆円のプライマリーバランスが向上し、借金も前年より2.4兆円も減らせた。すなわち政府の財政は一見より健全化したように見える。それならば、なぜ公債残高が約30.1兆円も膨れ上がったのか。このミステリーを解明するために図6・1のような簡単なモデルを構築した。そこでこのモデルの債務の部の長期債務残高のストックを再度眺めてほしい。

利子以外のインフローとアウトフローを整理し直すと、以下のようになる。

債務の返済−公債発行額=プライマリーバランス

すなわち、図6・3の政府の借金返済モデルとなる。

インフローとしての利息が複利計算で指数的に増加するが、一方、借金はアウトフローの返済額でしか減らせないという構造である。ここでの借金返済モデルでは、返済額はプライマリーバランスのみとなる。したがって、国の借金変動は、以下のように簡単に求められる。

長期債務変動=利息−プライマリーバランス

利息額だけ毎年借金が増え、プライマリーバランス額だけ毎年借金が減るという一般家計と同じような単純な構造が浮かび上がってくる。政府も家計も借金返済の構造は変わらないということである。そこでもしプライマリーバランスが赤字であれば、たとえその赤字額が減ったとしてもそのぶんだけ借金は増大し続けるのである。

この変動計算式を当てはめれば、2014年の利払い費は10.1兆円、プライマリーバランスは−18.6兆円であったので、2014年の公債残高の変動は

公債残高=10.1−(−18.6兆円)=28.7兆円

の債務増となる。プライマリーバランスが2013年の23.4兆円から、2014年の18.6兆円に、4.8兆円減少したとは言っても、赤字には変わりがないので公債残高は約30.1兆円強に膨れ上がったのである。

政府の債務を減少させるには、利息(利子率)を押さえ込んで、プライマリーバランスを黒字にする以外に方策はない。これが財政健全化を考える場合に必須となる知見である。

 6・1・6 借金返済でお金が消える!

それでは、現在の債務貨幣システムの下で、政府の債務は本当に完済できるのか。ここで、債務完済のための簡単な思考実験をしてみよう。

データの掲載場所は【日本銀行の資金循環データ】。この一覧から「四半期計数」項目で公開されている値を基に、現時点で最新値(2017年6月27日更新)に該当する2017年第1四半期(Q1)(暫定値)の日本国国債の保有者別内訳(長期国債・財融債合計967.6兆円)をグラフ化したのが次の図


資金循環表(2017年6月現在)より、

国債発行残高=967.6兆円

  主な国債保有者は

  日銀=387兆円

  銀行=447兆円

  保険・年金基金=50.3兆円

  海外=50.3兆円

である。そこでこれらの大口国債保有者から、政府が国債を買い戻すとしよう。国債買い戻しに利用できる国内資金は、連載6で見たように、2017年7月現在のマネーストックは合計723.7兆円しかない。その内訳は

政府貨幣(コイン)=4.7兆円(0.65%)

日本銀行券(紙幣)=100兆円(13.8%)

(要求払い)預金=619兆円(85.5%)

(参考)日銀当座預金=363兆円

である。それを政府が強制的に全額徴収して国債の買い戻しに当てるとしよう。

まず日銀保有の387兆円の国債の買い戻しであるが、363兆円の当座預金は銀行の要求払い預金(マネーストックの一部)であるのでそこから支払い、残りの24兆円(=387兆円−363兆円)は、現金で支払う。この結果、日銀の貸借対照表から資産の国債と負債の当座預金が消え、現金資産が24兆円増えるが、この分は日銀の現金104.7兆円分と相殺され、現金が80.7兆円(104.7兆円−24兆円)となる。同時に、銀行の貸借対照表からは当座預金がなくなり、負債の要求払い預金は256兆円(619兆円−363兆円)に減る。

次に銀行保有の447兆円分の国債の買い戻しであるが、これは全額要求払い預金から払う。その結果、銀行の貸借対照表から国債資産が191兆円に減り、負債の要求払い預金は0円(=256兆円−256兆円)となる。こうした国債の買い戻しによって、マネーストックは流通している現金80.7兆円のみとなる。すなわちマネーストックは723.7兆円から80.7兆円へと89%も減少する。実に643兆円(=723.7兆円−80.7兆円)のお金が消えるのである。

さらに政府はこの残りのマネーストック80.7兆円を全て使って、保険・年金基金、海外所有の国債100.6兆円分を買い戻すとしよう。この結果、現金80.7兆円全てが政府から保険会社、海外資産投資家のもとに流れ、この80.7兆円が新たなマネーストックとなり、お金として回りだして経済活動に用いられることになる。最初に政府に強制徴収された723.7兆円のうち80.7兆円分が現金や預金の保有者から保険・年金基金、海外投資資産家に最終的に強制移転したことになる。

このことから次のようなことが観察される。

非金融機関保有の国債を買い取ってもマネーストックは減少しないが、金融機関保有の国債を買い取れば、その分マネーストックが減少し、お金が消える。すなわち、現行の債務貨幣システムでは誰かが借金し続けないと経済活動に必要なお金は供給されないが、その誰かとは政府しかないということである。

経済にマネーストックを供給するために、政府は債務を継続しなければならない。しかるにもし政府が債務を完済しようとすれば、たちまちマネーストックは消滅し、同時に経済活動も消滅してしまう。かといって増大する債務を放置すれば、必ず上述したようにデフォルト(債務不履行)になり、政府が破綻し、国家が滅ぶ。現行の債務貨幣システムはこうした「行きも地獄、帰りも地獄」といったような矛盾を抱えている欠陥システムデザインなのである。ほとんどの経済学者はこのことに気づかないか、気づいていても指摘しない。

6・2 米国の債務危機

米国の債務状況はどうなっているのだろうか。図6・5の曲線2は1970年から2014年までの米国債務の実際の推移である。

1 ニクソンショック前年の1970年から1988年までは、債務増加率が10%で債務が急増した。倍増時間は約7年である。すなわち7年ごとに米国の債務が2倍、4倍と急増した。

2 1989年から2014年までは債務増大のスピードは少し鈍ったが、それでも増加率7.7%とかなり高い率で債務が増大した。倍増時間は約9年である。

曲線1はその債務増加率7.7%で予測した場合の2025年までの債務増加予測である。これによると、2014年の米国の債務残高は17.6兆ドルであったので、その約9年後の2023年には約35兆ドルと倍増になる。その時のべいこくのGDPを21兆ドルとすると、債務残高−GDP比率は129%となり、確実に100%を超える。

日本の2000年から2014年までの債務増加率が3.3%であるので、米国の債務増加率7.7%はその倍以上となる。したがって、米国は日本以上に深刻な「債務地獄」に陥っていると結論できる。

6・3 OECDの債務危機

債務残高の危機に直面しているのは、もちろん日本や米国だけではない。 EUのPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)やその他のOECD国も債務危機に直面している。図6・6は2016年現在における OECD諸国33カ国中で、債務残高−GDP比率が50%を超える8カ国の2001年から2016年までの状況である。

先進国と言われる国々が例外なく債務危機に陥っていることがよくわかる表である。これらのOECD加盟国は、日米同様に「借金地獄」に陥っていると結論できる。

この債務増大の流れは止めようがない。これは明らかに現在の債務貨幣システムが崩壊する直前である。現在の債務貨幣システムは、システム崩壊に向かってまっしぐらに進んでいる。ここら辺のところを私たちはどれだけ敏感に理解しているのだろうか。

図6・6

出典

6・4 3つの破局シナリオ

それでは現行の債務貨幣システムはどのような破局に向かっているのだろうか。経済理論的に以下の3つが考えられる。図6・7はそうした3つの破局シナリオをシステム思考図でお絵描きしたものである。読者の皆さんもこの図のループを辿りながら、一緒に思考していただきたい。原因と結果を矢印で結んであり、両者が同じ方向に増減するときには矢頭がプラス記号で、逆方向に増減するときには矢頭がマイナス記号となっている。

 金融メルトダウン

政府が借金を重ねてゆくとやがて資金需給が逼迫し、必ずやどこかの時点で金利が上昇する。その結果、国債価格や株価が暴落し、銀行や証券会社の金融資産が激減して債務超過となり、やがて体力の弱い銀行や証券会社から次々と倒産が続出し始める。金融メルトダウンというリーマンショックと同じような金融恐慌が再発する。

図6・7における金融危機の左回りのループがグルグルと回ってゆき、それが何回か循環するうちにやがて金融メルトダウンに引き込まれる。すなわち最終局面は次のようになる。

借り入れ増大→利子率上昇→国債価格暴落→債務超過・銀行倒産→金融メルトダウン

 ハイパーインフレ

次にこうした金融メルトダウンを回避するために、「大手銀行や企業の倒産はその影響が大きいので潰せない(Too Big To Fail)」といって、政府が介入して銀行や企業を救済(Bailout)する。その結果、政府の支出が増大し、財政赤字が累積してくるのでさらなる借金を繰り返す。そうすると金利が上がり、上述した金融メルトダウンの可能性が出てくる。それを回避するためには、「最後の禁じ手」として日銀と協調して金融の量的緩和を実施し、マネタリーベースを増やして金利上昇を抑え込む。銀行や証券会社はこうして得たジャブジャブのおカネを株式・不動産等の金融市場に流し込み、やがてそれが再び金融市場のバブルを引き起こし、ハイパーインフレという最終局面に引き込まれる。

銀行倒産→政府の景気対策・臨時予算→政府支出増大→財政赤字→借入増大→量的緩和→マネタリーベースの増大→ハイパーインフレ

 デフォルト 

借り入れが増大して債務残高が累積的に膨れ上がり、もはや元金の返済が追いつかなくなり政府は債務不履行に追い込まれる。さらに金利が上昇し税収でも利息が支払いきれないようになり、政府は債務の不履行に追い込まれる。

図6・7における債務危機の左回りのループがグルグルと回っていくが、これがすでに第5章の借金地獄の恐怖で述べて典型的な指数的成長のループとなり、やがてデフォルトの破局を迎えることになる。すなわち、最終局面は次のようになる。

借入増大→債務残高増大→デフォルト

借入増大→利子率増大→利息返済増大→デフォルト

現行の債務貨幣システムは、いずれ金融メルトダウン、ハイパーインフレ、及びデフォルトという3つの袋小路のいずれかに追い込まれるのは必至である。

経済学者としてできることは、こうした3つの破局を回避できる処方箋があるということを示して、読者の皆さんと一緒にその処方箋で日本経済を救済する、「経世済民」するということである。


今回は以上です。

次回は、「債務危機はどうしたら回避できるのか」ということについて勉強していこうと思います。